音楽配信サイトmoraは、6月6日よりマイルス・デイヴィスのアルバム8タイトルのハイレゾ配信を開始した。フォーマットはFLACの96kHz/24bitだ。ラインナップされるのは下記の通り。ここでは、ジャズ評論家・原田和典さんに、マイルスの紹介を含め、8作品の中から特に注目の3枚(★印のタイトル)を選んで、インプレッションをまとめてもらった。

【マイルス・デイヴィス ハイレゾ配信開始タイトル】

画像: 『'Round About Midnight (Mono Version)』★ mora.jp

『'Round About Midnight (Mono Version)』★

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画像: 『Live - Evil』★ mora.jp

『Live - Evil』★

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画像: 『Miles at The Fillmore: Miles Davis 1970: The Bootleg Series, Vol. 3』 mora.jp

『Miles at The Fillmore: Miles Davis 1970: The Bootleg Series, Vol. 3』

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画像: 『Miles Smiles』 mora.jp

『Miles Smiles』

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画像: 『Filles De Kilimanjaro』 mora.jp

『Filles De Kilimanjaro』

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画像: 『Sketches of Spain (Mono Version)』★ mora.jp

『Sketches of Spain (Mono Version)』★

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画像: 『Porgy and Bess (Mono Version)』 mora.jp

『Porgy and Bess (Mono Version)』

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画像: 『Miles Ahead (Mono Version)』 mora.jp

『Miles Ahead (Mono Version)』

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ジャズ界に大きな足跡を残したマイルス・デイヴィス

 Miles Davis(マイルス・デイヴィス)とは、米国セントルイス出身のトランペット奏者(1926~1991)である。18歳からニューヨークのジャズ界で活動し、29歳で当時世界最大のレコード会社のひとつ「CBSコロンビア」とレコーディング契約を締結。「ジャズはもともと黒人差別の用語だ。俺の音楽をジャズと呼ぶな」と言いながら教会旋法、スペイン音楽、ブラジル音楽、ロック、ファンク等を調合した独自のサウンドで“脱ジャズ”に向かうも、それがことごとくジャズの次なるトレンドとなり、結果的にジャズという音楽の幅を大きく広げることに貢献した。

 逸材を育成する達人でもあり、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンス、ハービー・ハンコック、キース・ジャレットなど数多くの“新人”が彼のバンドから巣立っている。2016年、波乱万丈の生涯を描いた劇映画『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』(音楽担当:ロバート・グラスパー)が日本公開。今回の8作品は、CBSコロンビア時代(55~85年)の前・中期から選ばれた。

60年以上前の録音がこんなにクリアーに聴ける!
スタジオの風景が目前に迫ってくるかのようなサウンドだ

画像: 『'Round About Midnight (Mono Version)』 (モノラル、アコースティック、小編成、スタジオ) mora.jp

『'Round About Midnight (Mono Version)』
(モノラル、アコースティック、小編成、スタジオ)

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1955~56年のモノラル吹き込み。個人的には自分の聴いたことのある全ジャズ・アルバム中でも屈指の好録音だと思っており、LPの時代からオーディオ・チェックに使っていた。とくに柔らかさと力強さを兼ね備えたトランペットの音色、エッジの立ったベースの響きは絶品。ハイレゾ化でも音質の気持ち良さは健在なばかりか、より鮮明度を増し、マイルスが吹く主旋律を引き立てるべく、無名時代のジョン・コルトレーンが控えめに奏でる副旋律のひとつひとつまでもが勢いよく耳に飛び込んでくる。60年以上も前のレコーディングがこんなにクリアーでいいのか? いいのだ!!

画像: 『Live - Evil』 (ステレオ、エレクトリック、中編成、ライヴ+スタジオ) mora.jp

『Live - Evil』
(ステレオ、エレクトリック、中編成、ライヴ+スタジオ)

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先ごろ来日したブラジルの鬼才エルメート・パスコアールを加えたスタジオ録音もいいけれど、目玉はやはり全体の8割を占めるライヴ・テイクだろう。ベースはコントラバスから(いわゆる)ベース・ギターになり、マイルスは曲によってエフェクターもかけながら“ジミ・ヘンドリックスがトランペットを吹いたらかくや”的なプレイを展開。LPでは迫力と濁りが混じりあうすさまじい世界が楽しめたが、ハイレゾは音場整理が進み、奏者の動きがクリアーに。おかげで、若きキース・ジャレットがエレクトリック・ピアノを弾きながら、あえぎまくっていたことも明らかになった。ドラムや打楽器のマイクに声がまわりこんでいたのであろう。

画像: 『Sketches of Spain (Mono Version)』 (モノラル、アコースティック、大編成、スタジオ) mora.jp

『Sketches of Spain (Mono Version)』
(モノラル、アコースティック、大編成、スタジオ)

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ぼくはずっとステレオ盤LPに親しんできた。カスタネット、バスーン、ハープ、ティンパニなど通常のジャズではほぼ使われない楽器を導入したオーケストラ(1940年代からの盟友、ギル・エヴァンス編曲指揮)のトーンがフワッと左右に拡がり、マイルスが歌うように、訴えるようにトランペットを鳴らす。今回はモノラルによるハイレゾ化。「なんでわざわざモノで?」というのが第一印象だったが、これがまたいい。むしろ各楽器の奥行き、遠近感を味わうのなら、こちらのほうが適しているのではないか。木管楽器の幻想的な響き、空間に音をぽつりぽつりと置いていくようなベース音のおいしさといったら、ない。

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