米国ヴィンテージ管
中域が充実して温度感や骨太感が高まる。黒プレート7025は持ち帰りたいくらい
──最後に米国製ヴィンテージ管を5本聴いていただきました。印象はいかがでしたか。
鈴木 うん。流石はRCAという感じで、RCAの3本がとても好印象でした。特にブラックプレートの7025は良かったですね。「すごく良い音だな」と思いながら聴いていました。RCAが好きなのは、中域がしっかり出てくるところです。バランスが整っていてダイナミックレンジが豊かな球は、探せばいろいろあるんですよ。たとえばアンペレックスの球とか。
杉井 アンペレックスは「笛吹童子」と呼ばれるキャラクターが描かれている球ですね。
鈴木 そうそう。でも、バランスが良くてなおかつ音楽的なプリ管という意味では、僕はRCAの7025ブラックプレートがいちばんだと思う。RCAの3本はどれも良くて甲乙つけ難いけれども、特に強いインパクトが残りました。どんな球でもギターアンプのプリ管として使うと、振動などの影響で劣化しやすいんです。10年も使うとだいぶくたびれてしまう。でも最近はネットなんかを見ても値段がずいぶん高くなってしまっていて、なかなか手に入れるのが難しくなっています。だからこのブラックプレートの7025はそのままもらって帰りたいぐらいです(笑)。
高橋 最初に聴いたGEは、音圧がこれまでよりも下がるかと思ったらそれほど下がりませんでした。ベースもよく出ていたし、ヴォーカルやギターも聴きどころできっちり前に出てくる。僕は好印象でした。今日はスピーカーが銀箱だからなのか、どの組合せでも音が凝縮された感じがあるのですが、フィリップスECGはちゃんと空間が描き出されているように聴こえました。そういう意味で、他の球とはけっこう印象が違いましたね。
GE 5751(グレープレート)
フィリップスECG(シルバニア) 12AX7WA
RCA 7025(ブラックプレート)
RCA 12AX7(ブラックプレート)
RCA 12AX7A(グレープレート)
高橋 RCAの3本の個性の違いも面白かったです。7025ブラックプレートは、中域がすごく充実していると感じました。さっき杉井さんから「ギターにフェイズシフターっぽさを感じた」というお話がありましたが、そういう感じもこの球はよく表していると思います。
12AX7のブラックプレートはラウドで迫力があって、「なるほど、こういうことか」と。厚みや押し出し感がある反面、やや荒々しいところもあるので、やはりこれはギターアンプ向けの球なのかなと思いました。12AX7のグレープレートはもう少しバランスが良くて、ドラムはよく出ているし、ベースも強くはないけれどしっかりラインが聴こえる。程よく荒さが抑えられているので、十分に迫力がありながらとても聴きやすい音に感じました。
杉井 先ほどのヨーロッパ球から打って変わって、いかにもアメリカンなサウンドになりましたね。どの球でも「細かいことはいいから、とりあえずエネルギーで勝負」という感じが伝わってきた。温度感や骨太感がこれまでよりグッと高まりつつ、でもリラックスして聴ける楽しさもある。それは5本すべてに共通する印象です。2本目のフィリップスECG/シルバニアは個人的に昔から好きな球で、パワーの足りないアンプにこれを差すと一気に元気な音になるという印象があります。そういう意味で音質のコントロールやエネルギー感の増幅に使いやすい球です。
RCAの3本は鈴木さんがおっしゃった通り、流石だなと思いました。これら3本は、オーディオのNFアンプなどで後段に使うと本来の良さがそれほど発揮されないことがあります。今回はフォノイコで使ったわけですが、本来の良さがしっかり発揮されていると感じました。3本とも音楽そのものがヴィヴィッドに輝き、ひじょうに聴き応えのある鳴り方です。
高橋さんとは少し異なる意見ですが、私の耳ではフィリップスECGよりもRCAの3本の方がモニター的な性格が備わっていて、オーディオ用途にも向くのかなと思いました。しかし、いずれにしてもRCAはフェンダーのギターアンプなどに重宝されていて、それがフェンダー独特の音色にも寄与しているわけですから、懐の深い球であることを改めて認識することができました。






