2025年春に50周年記念盤が登場した、ギタリスト鈴木茂氏の『BAND WAGON』。シュアーM65ヴィンテージフォノイコライザーで新旧の12AX7を差し替えながらLPを再生。ソロデビューアルバムの音作りと、愛好する12AX7の銘柄、現行/ヴィンテージ管の音質差を音楽評論家の高橋健太郎氏、ヴィンテージオーディオ専門家の杉井真人氏と語り合った。

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鈴木 茂/高橋健太郎/杉井真人

全編アメリカ西海岸録音で、1975年リリース。12AX7×2本のシュアーM65フォノイコライザーを軸に米国製ヴィンテージシステムで聴く『BAND WAGON』。アルバムの音、プリ管の銘柄の音を味わう

画像: 全編アメリカ西海岸録音で、1975年リリース。12AX7×2本のシュアーM65フォノイコライザーを軸に米国製ヴィンテージシステムで聴く『BAND WAGON』。アルバムの音、プリ管の銘柄の音を味わう
画像1: 鈴木 茂 LP『BAND WAGON』でプリ管12AX7を聴き比べる
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鈴木 茂

1951年東京都生まれ。1968年に小原礼、林立夫とSKYEを結成。翌年はっぴいえんどに加入。はっぴいえんど解散後の1974年に単身渡米し、ファーストソロアルバムである『BAND WAGON』を制作。その後、鈴木茂とハックルバック、ティン・パン・アレーでのバンド時代を経て、スタジオミュージシャンとしても活動。7枚のソロアルバムを発表し、作・編曲、プロデュースの面でも活躍する。近年は自身が理想とするギターサウンドを追求して、エフェクターの製作・販売も行なっている。

鈴木 茂オフィシャルサイト
https://suzuki-shigeru.jp

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高橋健太郎

1956年東京都生まれ。音楽評論家、音楽プロデューサー、録音エンジニアとして活躍。大学在学中に『YOUNG GUITAR』などの音楽誌で執筆を始める。2000年にはインディーズレーベル「MEMORY LAB」を設立。音楽配信サイト「OTOTOY」の立ち上げにも携わっている。著書に「スタジオの音が聴こえる」(DU BOOKS)、「ポップ・ミュージックのゆくえ」(アルテスパブリッシング)、小説「ヘッドフォンガール」(同)など。

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杉井真人

1964年静岡県生まれ。学生時代から映像制作現場などにも出入りし、楽器も含め機材メインテナンスの長いキャリアを積む。アナログ再生システムまでオールジャンルをカバーし、ウェスタン・エレクトリックやアルテック、JBLなど米国製を軸にヴィンテージ・オーディオ機器に精通する。愛好する音楽はアメリカ南部ロックなど。本記事で試聴したヴィンテージ管はすべて杉井氏が所有するコンディションの良い個体である。

「歪みかけ」が気持ちいい真空管の音がアナログLPの再生でどう引き出せるか。アルテック・メインのシステムで聴く

──今回は、真空管フォノイコライザーのシュアーM65で新旧様々な12AX7を差し替えて、鈴木茂さんの『バンド・ワゴン』のLPを聴いていきたいと思います。カートリッジもシュアー製。再生システムはすべてヴィンテージ機です。

鈴木 12AX7はギターアンプのプリ管によく使いますが、オーディオアンプで聴き比べるのは初めてなので楽しみです。

高橋 茂さんは普段どういうシステムで音楽を聴かれているんですか?

鈴木 型番までは覚えていないけれど、スピーカーはジェンセンのフルレンジユニットをアルテックA7の箱に入れたものを使っています。プリアンプとパワーアンプもアルテック。だから、今日のシステムにわりと近いですね。

杉井 いつ頃からヴィンテージ系のシステムをお使いになられているのでしょうか。

鈴木 90年代にヴィンテージ機器に詳しい方と知り合う機会があって、そこから自分でもいろいろ買い集めるようになったんです。以前、埼玉のオーディオショップでウェスタン・エレクトリックの大がかりなシステムを聴いたことがあって、それは本当に良い音でした。これまでアメリカや日本のいろんなレコーディングスタジオの音を聴いてきたけれども、どのスタジオよりも良い音だったね。

高橋 うちはATCの3ウェイにスーパートゥイーターをのせたマスタリングスタジオみたいなシステムですが、フォノイコライザーだけは12AX7を差したジョリダJD9を使っています。アルテックの銀箱をちゃんと聴くのは今日が初めてです。ウーレイのようなアルテック系同軸ユニットのシステムは以前ニューヨークのスタジオで聴いたことがあるけれど、銀箱は世代的に間に合わなかった。

杉井 『バンド・ワゴン』の制作時期も、銀箱はもう少なくなっていましたよね。

鈴木 そうですね。銀箱は僕もあまり体験したことがないです。70年代に目黒のモウリスタジオで聴いたぐらいかな。同じアルテックだと、A7は映画スタジオなどでよく使われていましたよね。僕が音楽の世界に入ったのは、スタジオモニターの主流がアルテックからJBLに変わりつつある時期でした。

 『バンド・ワゴン』の録音にはサンフランシスコのディファレント・ファー・スタジオとハリウッドのクローヴァー・スタジオを使いましたが、トラックダウンを行なったクローヴァー・スタジオは確かJBLでした。僕の印象からすると、JBLはいわゆるドンシャリ傾向で、高域も低域もよく出るんだけどスタジオモニターとしてはクセが強い。JBLに比べると、アルテックは中域重視のナチュラル傾向ですね。

杉井 私は映画の制作現場で仕事をしていたことがあるのですが、そうした場所では80年代や90年代まで銀箱が使われていました。人の声ぐらいの帯域の明瞭度は、アルテックが圧倒的に優れていたので。

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