2018年、ジョージア州ロスヴィルに最新鋭の製造ラインを備えたウェスタン・エレクトリック新工場が完成。そこから送り出される現代のWE300Bの取扱いが、2025年3月、新たに完実電気でスタートした。100年の歴史が視野に入る直熱3極管の雄、WE300Bの魅力を改めてひもとく。

「天上人」と称えられた輝かしい伝統

是枝重治

 ウェスタン・エレクトリック(WE)300Aの存在はごく一部の好事家の間では満州事変(昭和6年)の頃には知られていたようです。WEのトーキーシステムはすべてレンタル方式でしたから、寿命が尽きた真空管はすべて回収されていました。ですから中古球も出回ることはなかったはずですが、実際にWE555スピーカーや300A真空管を使っていた人はおられたようです。上海魔界由来だとも聞きます。しばらくしてAはより汎用性に優れたBに改められ、ともに当時から「天上人」と称えられていました。

 わずかでも市場に出回るようになったのは戦後です。これはアメリカでも同様で、1960年代の米国のアマチュア無線誌『73』や『QST』などの真空管販売店の広告欄にはときおり300Bの名前が散見されますが、これらはカウフマンかセトロンのもので、WEのものではありません。

 WE系列以外の300Bがいつからあったか知りませんが、高効率の陰極材料、高純度の部材品質、卓越した真空技術などが揃っているメーカーは、そうあるはずはありません。サンセイエンタープライズのジャン平賀さんがセトロンに300Bを発注したとき、5V 1.2Aではエミッション(カソードから放出される熱電子のこと)が足りないから1.4A程度に増やしたとのことでした。

画像: 是枝氏は1998年刊行の本誌7号「マイ・ハンディクラフト」企画で、上写真のWE300Bプッシュプル・モノーラルアンプを製作。3号(1996年)でのシングル・モノーラルに続けて、WE300Bの再生産に応えるアンプだった。1997年の本誌5号は、WE300Bの完実電気への入荷を速報している。是枝氏の7号プッシュプル機は、往年のWE86型が聴かせた明快にして熟成感のある音を目指した。整流管はWE274B。トランス類は電源がノグチ特注、チョークコイルがタムラ製作所製、出力トランスが平田電機特注とベストのパーツを惜しみなく選択した。発表記事には「300Bは必ずウェスタン・エレクトリック社製にしてください」と記されている。

是枝氏は1998年刊行の本誌7号「マイ・ハンディクラフト」企画で、上写真のWE300Bプッシュプル・モノーラルアンプを製作。3号(1996年)でのシングル・モノーラルに続けて、WE300Bの再生産に応えるアンプだった。1997年の本誌5号は、WE300Bの完実電気への入荷を速報している。是枝氏の7号プッシュプル機は、往年のWE86型が聴かせた明快にして熟成感のある音を目指した。整流管はWE274B。トランス類は電源がノグチ特注、チョークコイルがタムラ製作所製、出力トランスが平田電機特注とベストのパーツを惜しみなく選択した。発表記事には「300Bは必ずウェスタン・エレクトリック社製にしてください」と記されている。

下部マイカ板のショット処理など時代につれてWE300Bは変化する

 WEの300AやBは実にさまざまで、真の互換性はありません。フィラメントのターンごとの接続はパラレル、シリーズ、シリーズパラレルという順番で変わっていきました。300Bは刻印球といえどもシリーズパラレルフィラメントで、後期の300Aも同様です。

 ですから、300Bを使ったSAGEシステム用電源装置には、初期中期の300Aは使えないようです。あえていえば300Aは音声用で、300Bは軍事用です。SAGEシステムは1980年近くまで運用されていましたから、300Bもその辺りまでは必要とされていました。映画『2001年宇宙の旅」の宇宙船内部のベルマークは当時の300Bの箱にも付いています。

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