試聴編
現行2機種はペーパー/金属振動板。ヴィンテージは同軸2ウェイが1機種。多彩なユニットの個性を引き出す
1 │ フォステクス FE203ΣRE
サブコーンが明快な音を作り響きも豊か。輝きがあり、モニター的な鳴り方も魅力

【現行/20cm】
フォステクス FE203Σ-RE
¥46,000(ペア)
●型式:20cmコーン型フルレンジ●インピーダンス:8Ω●感度:96dB/W/m●最低共振周波数:54Hz●バッフル開口径:φ185mm●寸法/重量:φ220×111mm/4.1kg●備考:本機は数量限定品●問合せ先:フォステクス カンパニー☎042(545)6111
1979年に登場しバックロードホーン型のブームを作ったFE203Σの進化形となる20cmフルレンジ。振動板は針葉樹パルプを主材料に基層と表層で構成する2層抄紙技術で製作。ボイスコイル引き出し線を振動板上で中継しないハトメレス方式など近年の同社ユニットを特徴づける技術が投入される。磁気回路は大型フェライトマグネットを2枚重ねで採用し磁束密度向上を図る。(編集部)
土井 まずはフォステクスの20㎝口径フルレンジユニット、FE203Σ-REですね。基本的にはバックロード専用の設計ですが、メーカーからも「バスレフ箱でもよく鳴る」との説明があるということですね。全体の桟のボルトナットの締め具合は標準的な手締めよりも少しキツめ。脚部をバッフルに固定するボルトナットは手締め程度まで緩めました。
新 一聴してブリティッシュ系のサウンドだと感じました。子供の頃から様々なユニットを聴いてワーフェデールからグッドマンへと移ったことがあるんですが、その系譜にある音です。サブコーンのある構造を見ると、この音も頷けるように思いましたが、明快で気持ちのいいサウンドでした。
「サン゠サーンス」は、明快で、スタインウェイでも少し高域を抑えたようなピアノの音色が見事に出てきて好印象でした。オーケストラのスケール感もよかったですね。
「エリントン&ベイシー」はデューク・エリントンとカウント・ベイシーそれぞれのバンドが一堂に会した1961年の録音ですが、一人ひとりのソロの演奏が際立っていました。ステレオのよさを知らしめるために作られた、2つの超一流ビッグバンドが左右で演奏する、夢のようなレコードの華やかさがよく出ましたね。「ちあきなおみ」はイントロのギターも歌も立派です。ストリングスセクションは豪華で厚みのある再生でした。モニタースピーカーとしても使える音ではないでしょうか。感度は96dBもあるんですね。
杉井 フォステクスのユニットらしく、中高域に快活さの感じられる鳴り方でした。メーカーがバックロードを推奨するのも納得といいますか、平面バッフルで鳴らすと低域がやや控えめでしょうか。試しにトーンコントロールで低域を上昇させても、ほとんど変化がなかったので、箱に入れた方が本領を発揮できるユニットといえるのかもしれません。しかし中高域の音圧がしっかり稼げていて、平面バッフルで聴く良さも十分感じられました。
「サン゠サーンス」のピアノは芯があり、響きも良いですね。オーケストラはスケール感があり、これでもう少し低域が加わればさらに良くなると思いますが、バランス感も良好でした。「エリントン&ベイシー」は中高域のエネルギー感に対してベースの存在感が少し薄く、これはやはりバックロードが合うのかもしれないなと。「ちあきなおみ」も同様で、中高域のエネルギー感がよく出る感じです。この後いろいろなユニットを聴いていく中で平面バッフルに合うものと合いにくいものもよく見えてくるかもしれないですね。ひとつ目のユニットで、自然な木の響きが豊かに出る平面バッフルだなと思いました。
土井 「サン゠サーンス」を聴くと、響きがよく出る感じでしたね。低域が少し薄い分、自然と中高域に耳が向かうんですが、ピアノは美しい余韻が聴き取れます。このユニットを平面バッフルで使って低域の量感をさらに出そうとするならバッフル面積を増やすということになるかもしれないですね。ユニットを見ると磁気回路が2段です。磁力が強いと、制動力が増えても、低域の豊かさにはつながりにくいことがあるわけです。
杉井 音が締まりすぎてしまう、と。
土井 そうですね、弱い磁力と弱いフレームによる構造の方が、低域は量感が出やすいユニットになると思います。「エリントン&ベイシー」は低域再生の点でバッフルとの相性が気になるところが出てくるんですが、フルレンジユニットらしい良さが出ていました。ブラスにも非常にキレがありましたね。輝きが出てゴージャスなブラスセクションに聴こえます。
「ちあきなおみ」は日本的なギターの音色を聴いて、国産ユニットらしい音だと思いました。低域が幾分少ないかなと思えるところは、確かにバックロードホーンやバスレフ箱との組合せの方が、良さを出しやすいように思いましたね。



試聴ディスク
『サン゠サーンス:ピアノ協奏曲第1番&第2番、他』アレクサンドル・カントロフ(p)、ジャン゠ジャック・カントロフ指揮、タピオラ・シンフォニエッタ
SACD/CDハイブリッド(BIS BIS-2400)
よりTr.1「サン゠サーンス:ピアノ協奏曲第2番 第1楽章」
文中:「サン゠サーンス」
『ファースト・タイム』デューク・エリントン・アンド・カウント・ベイシー
CD(CBS・ソニー 32DP 596)
よりTr.1「バトル・ロイヤル」
文中:「エリントン&ベイシー」
『男の郷愁』ちなきなおみ
CD(テイチクTECE-25713)
よりTr.7「男の友情」
文中:「ちあきなおみ」



試聴に使用した機器
[プリアンプ]
アルテック1567A
[パワーアンプ]
アルテック1520T
[CDプレーヤー]
スチューダーA730
2 │ マークオーディオ MA200M
金属振動板で木質の響きが広がった。甘やかな味わいと温かみのある再生

【現行/20cm】
マークオーディオ MA200M
¥45,200(ペア)
●型式:20cmコーン型フルレンジ●ボイスコイルインピーダンス:6.8Ω●感度:90dB/2.83V/m●最低共振周波数:33Hz●バッフル開口径:φ189±0.3mm●備考:振動板カラーはゴールドとガングレーあり●問合せ先:(株)フィディリティムサウンド info@fidelitatem-sound.jp
同社ユニットでは最大となる20cm口径のフルレンジで、振動板素材はアルミニウムマグネシウム合金。磁気回路はXmax:9.0mmのロングストロークを持ち、適切なエンクロージュアとの組合せによる30Hzから16kHz以上の広帯域再生が謳われる。新規開発されたアルミダイキャストフレームは支柱に丸みを持たせて音波放射の性能向上が図られている。(編集部)
土井 2機種目のマークオーディオMA200Mも20㎝口径フルレンジユニットです。最初に鳴らしたときは低音・中音・高音それぞれがバラついていたんですが、バッフル同士を接合するボルトを少し緩めて調整してみました。
新 シングルユニットを聴いているとは思えない充実感がありました。「サン゠サーンス」はピアノの音色もオーケストラのスケール感も見事でした。「エリントン&ベイシー」は次々と現れるソリストの個性の描き分けが巧みで、フルレンジユニット1基から出ている音とは思えない鳴り方です。「ちあきなおみ」も、マルチウェイシステムを思わせるようなサウンドで、声の充実感も魅力的です。よくできたユニットで、平面バッフルとの相性も良かったのではないかと思います。
杉井 このユニットの源流的な存在とも思えるジョーダン・ワッツのモジュール・ユニットはフラゴンなどのシステムで頻繁に聴いているんですが、このユニットもジョーダン・ワッツと同じく金属振動板なのに金属的な音がしないのが面白いですね。どちらかといえば木質的とさえ感じる響きです。この面積の平面バッフルに取り付けた効果もよく出ていたと思います。重心がグッと下がり、低域までよく伸びていました。
「サン゠サーンス」は、オーケストラのウェルバランスなスケール感、木質的な楽器の響きが気持ちよかったですね。「エリントン&ベイシー」に関しては響きがいささか優しすぎる感じがして、サックスの音が同じ木管楽器でもバスクラリネットの音のように聴こえる瞬間がありました。優しい大人の響きという感じで、クラシックはかなり魅力的に聴けそうな音でしたね。「ちあきなおみ」は全体に優しい温かみがあり、低域のベースの出方もよく分かりました。ちあきなおみの情念のようなものの表現は控えめでしたが、帯域バランスがよく、心地よく聴けて、バッフルの効果が出ていると感じました。
土井 現行品ユニットの2機種目ですが、味わい深い音色ですね。「サン゠サーンス」はピアノの音色に高級感があり、艶と響きも豊かでした。低弦の響きもよく感じられました。空間表現も巧みで、全体として優雅な鳴り方です。「エリントン&ベイシー」は全体のバランスが良好で、演奏も優雅。ブラスにキレがありながら温かみのある音でした。平面バッフルとの組合せで、ユニットの特徴がよく表れたのではないでしょうか。「ちあきなおみ」はギターに艶があり、甘やかな音色です。日本的、演歌的な再生ではありませんが、ちあきなおみの艶かしさがよく出ていました。この平面バッフルとは味わい深い組合せになったと思います。
