3 │ マグナボックス AO21075
歴史の積み重ねと厚みを感じさせる音。血が通った天然の味わいがスッと表れる

【Vintage/25cm】
マグナボックス AO21075
10インチ径フルレンジユニット、マグナボックスAO21075は本体フレーム部に記されている番号「P232・914」から製造メーカーはマグナボックス社で、製造年代は「914」から1949年か1959年のいずれかだと推測される。用途はオルガン、電蓄、ラジオなどと考えられる。ボイスコイル径1.5インチ、コーン紙はフィックスドエッジのストレートコーン、ボイスコイルインピーダンスDCR6.2Ωとなっている。それ以外の詳細は不明である。(土井)
土井 3機種目はマグナボックスの25㎝口径フルレンジユニットAO21075です。バッフルの連結部は手締めよりも少し強めに締めた程度に調整し直しました。かなり緩めです。低域の音離れがあまり良くなかったので、音を聴きながら調整しました。ユニットの詳細はまったく不明ですが、おそらく1950年代にラジオや電蓄、オルガンに使われていたものでしょう。AO21075というのは製品番号ではなく、部品番号だと思います。
新 再生音に歴史を感じます。古くさい音という意味ではなく、歴史の積み重ねや厚みを感じる音という意味です。あまり知られていないユニットではあるけれども、好感を持ちました。最近私はWE540AW“陣笠”ばかり聴いているんですが、重量感のある音という点で、このユニットにも共通するものを感じました。もちろん陣笠よりも新しい時代のユニットで音に新しさもあるんですが、こういうユニットもあるんだなという新しい発見がありましたね。
「サン゠サーンス」のピアノの音には、ここまでの現行ユニット2機種にはない渋みと奥行きを感じました。「エリントン&ベイシー」は、次々と登場するソリストの演奏にジャズの奥深さが感じられて、熱気がそのまま現代に甦ったようでした。「ちあきなおみ」はイントロから歌、間奏のストリングスまで、どこにも薄っぺらなところがなく、実に音楽的な響きを持った再生だったと思います。とても良いユニットで平面バッフルとの相性も良かったですね。
杉井 現物を見ると、明らかに電蓄やラジオに使われていたユニットでしょう。モノーラルシステムとしてSPレコードを聴くような用途にすごく合いそうで、ワイドレンジなステレオ再生には高域が足りないかなと思って聴き始めました。センターに防塵用のフェルトが貼られていて、剥がせば高域が伸びるかもしれません。マグナボックスにはボイスコイルの先にアルミのリングが付いて高域がかなり伸びるユニットもあるんです。
トーンコントロールで高域を上げて聴きましたが、平面バッフルで中低域はかなりのスケールで出ていて、トゥイーターを加えるともっとバランスの良い、スケール感に富んだワイドレンジサウンドに仕上がるかもしれません。でも、このユニット単体で聴く音も、どのソースでも血の通った人間が演奏している音楽であることが伝わってくる感じです。
「サン゠サーンス」では、ピアニストをはじめ演奏者たちが演奏に込める情感がたっぷりと届きます。「エリントン&ベイシー」は高域が控えめなために野太くなる印象で、低域がブーミーに聴こえるところもありますが、熱気とエネルギー感が出ていてよかったですね。「ちあきなおみ」では声がやはり血の通った感じで、ギターも細かな演奏のニュアンスがよく伝わるんです。弦を爪弾く様子まで見えてくるようで、ヴィンテージ・ギターアンプのスピーカーとして使っても最高だろうなと思いました。中音が充実して、音がひとつひとつ生々しい。「ちあきなおみ」は情感のこもった演歌という雰囲気が出ました。
土井 昔、箱に入れて聴いたときには野太い音で高域が薄めと感じられて、その印象は今回も同様でした。アルテック1567Aのトーンコントロールの高域は「ちあきなおみ」ではマックスまで上げ、他は4時くらいの位置で聴いています。でも、高域の不足を十分にカバーできる旨味が聴けました。
「サン゠サーンス」は骨格がしっかりとした再生で、先の現行製品2機種はよく整ってうまく音作りされた音という感じでしたが、これは限りなく天然の音がスッと出てくる感じです。「エリントン&ベイシー」も快活なブラス。聴き馴染みのある音になったという印象で、それぞれの楽器の音がリアルです。質のいいコーン・トゥイーターでも足したら完成だなという感じです。「ちあきなおみ」のバランスも良好。いつものストリングスが聴けて安心しましたね。足りない部分はもちろんあるとしても、「これでいいんじゃない?」と思える鳴り方でした。
4 │ グッドマン AXIOM80
反応が速く、演奏者の動きや指使いが克明。しっかりと出る低音と音の旨味に驚いた

【Vintage/25cm】
グッドマン AXIOM80
1984年の2度目の再生産を含めると40年以上にわたり同一基本設計で大量に生産された製品のため、ユーズド市場でも頻繁に目にするヴィンテージ品では類稀なユニットである。E.J.Jordan氏がGoodmans社在籍時に開発した「ARU」機構を装備したエンクロージュアで使用するのが定石であるのはユニット自体が独特な構造であることも含めて周知の通りだが、ジョーダン氏が入社する1952年以前から存在していたこのユニットが、それまでにどのように誕生し使われていたかという情報は極度に乏しい。(杉井)
土井 マグナボックスAO21075と同じく25㎝口径で、バッフルの締め付け具合は結果的にAO21075とまったく同じでした。
新 AXIOM80は社会人になってから2〜3年ほど、ARU(Acoustic Resistance Unit)の付いた指定箱に入れて使っていました。そのとき聴いていた音とはずいぶん違いましたね。当時は鳴らし方が難しかったんです。高域がシャーッと強く出る感じで。しかし今日の音は、充実感があって聴き応えがありました。現在もこのユニットに特別な思い入れを持っている方は少なくありませんが、そういう方の気持ちもよく理解できる再生でした。
杉井 AXIOM80を平面バッフルに取り付けて聴くのは初めてで、こういう聴き方は考えたことすらなく、アンプがアルテックということも含めて、どんな音が聴けるのかまったく想像できなかった。低音がしっかり出るか心配でしたが、ちゃんと出ていましたね。それこそ、「これでいいじゃないか」と思える音でした。音に瞬発力があり、オンとオフがはっきりしている。イギリスとアメリカの折衷みたいな音ではなく、AXIOM80の音が遺憾なく鳴っていました。サブコーン部は艶があり硬度を高めるコーティングがされている最初期の個体ですが、後期のものより圧倒的に音がいいんです、そういう良さも出ていました。
「サン゠サーンス」のピアノは、倍音もしっかりと出てこれが本来の音かなと思える再生でしたね。ピアノのボディ感も下までしっかりと出て、平面バッフルでもここまで低音が出るのかという感じです。「エリントン&ベイシー」は、演奏者の動きや指使いが克明に描写されました。楽器の音が正確で、演奏そのものもアグレッシヴです。楽曲の魅力を存分に引き出していたと思います。
「ちあきなおみ」はこまやかな情感溢れる音で、思わず聴き込ませる感じ。それで気付くのが、あちらから向かってくるのでなく、こちらから聴き入ってしまうという音ですね。リラックスして聴くタイプの音ではないかもしれませんが、音を迎えにいけばいくほど、多彩な音がやってくる。反応が速く、すごく魅力のある音で、平面バッフルでAXIOM80からこういう音が出せるとは驚きでした。
土井 AXIOM80は618タイプの箱に入れて音作りをしたことがあり、ARU付きの指定箱で鳴らすより良かった記憶があるんですが、そのときは音量がある程度までしか上げられない弱みがありました。低域の量感が少なく、618タイプの裏蓋を緩めてドロンコーンの役割を果たすような鳴らし方も試しましたが、裏蓋の板厚からも限界があったんです。しかし、今日の再生は限界点がまるで感じられなかった。バランスもとても良いですね。もしかしたら、エンクロージュアよりも平面バッフルに向いているユニットではないかと思いました。こんな音が聴けるとは思っていなかったので、正直なところ驚いています。
「サン゠サーンス」は、マグナボックスAO21075で聴けた自然な音はそのままに、旨味成分がさらに加わる感じです。高域に輝きがあって、低域もしっかり出ている。ひじょうにバランスの良い再生でした。「エリントン&ベイシー」は、アメリカのジャズというよりイギリスのジャズ。クラシックだったらこの音はいいなあという感じで鳴りましたね。「ちあきなおみ」も良いんだけど、ちょっと良すぎるかな(笑)。もう少し演歌くささがあってもいいですね。
しかし、平面バッフルとの相性は抜群ですね。オリジナルユニットも再生産ユニットも箱に入れていろいろ工夫して作った自信のあった音を、あっさり上回りました(笑)。オリジナルのエンクロージュアを探すのはたいへんなことですし、これは平面バッフルでぜひ試していただきたいなと思いますね。
杉井 思った以上にハマりましたね。確かに「エリントン&ベイシー」はアメリカのジャズという感じではなかったかもしれないですが(笑)。
土井 でも、それでいいんですよ。このユニットが好きな人は、その音が欲しくて買うんですから。
