『管球王国』117号「マイ・ハンディクラフト」企画で是枝重治氏は6V6類似のMT7ピン・ビーム管6005/6AQ5プッシュプル・パワーアンプを発表。往年のコーナーホーン型スピーカー、バイタボックスCN191から典雅で切れ込みのよい音を引き出すべく設計され、出力6W+6Wでまとめられた。

Fascination117を聴く

息遣いたっぷりな女性ヴォーカルの表情が多彩で、ウクレレのアルペジオは繊細さの極み。キレのいい鮮やかな音に満ちて激しいEDMも聴ける

傅 信幸

 いつもながら是枝先生の作品は美しい。赤いトランスケースがアクセントになっている。ステンレスの板はしなって回路を包み込むような柔らかな感触が優しい(実際のシャーシは硬く頑丈)。
 アンプ製作記事の本文に、以前に是枝先生が自ら書いていらっしゃたことがある。「……外観のバランスを欠くと、どんなにいい音のアンプもいけません……」。

 このチャーミングな6AQ5ppパワーアンプは、いちばん長い辺でも24㎝程度なので可愛い。スピーカー端子はバナナプラグの穴だけだ。スピーカーケーブルは先端に直線的にバナナプラグを半田付けした末端処理が望ましい。Yラグ端子をバナナプラグに変換するアダプターが太くて接触してしまうので絶縁体を挟んでセットし試聴した。

大型モニタースピーカーのB&W 801D4 Signatureで試聴した。プリアンプにウエスギU・BROS280Rを組み合わせ、デジタルディスクはSACD/CDトランスポート+D/AコンバーターのアキュフェーズDP1000+DC1000で聴いている。

 わたしが選曲/構成を担当したステレオサウンド『NOBU’S POPULAR SELECTION』SACDの11曲目ジェイク・シマブクロ&シンディ・ローパーは、全曲中もっとも新鮮な音源を使ったトラックで、ウクレレの繊細なアルペジオと息遣いたっぷりな女性ヴォーカルとで綴られる。その11曲目の表現が、このパワーアンプではとても克明だった。ウクレレのアルペジオは繊細さの極みであり、アタック音は爽快に立ち上がり、透明な音場空間へ音がヌケよく伸びていく。女性ヴォーカルの表情が多彩だ。

 オープンチューニングによるアクースティックギターの超絶技巧な演奏の12曲目マイケル・ヘッジスは、ザクザクとして小気味いいリズム感に満ちておりとてもハイスピードな音で、しかしオーバーシュート気味ではなく全帯域にハイスピードさが揃った、胸が空く鳴りっぷりのよさだ。

 映画音楽のスタジオ録音である14曲目は、ヨーヨー・マのチェロのハイポジションの倍音が艶々で色っぽい。広い音場空間に極彩色の倍音が舞った。 爽やかでかつ鮮やかな音がB&Wの大型スピーカーから飛び出してくる。けっして硬すぎたりギラついたり、暴れる音ではなく、鮮やかで色っぽい音なのだ。キレのいい鮮やかな音に満ちていて、瑞々しい。ヌケがよく開放感があって、キリリッとエッジが立つので、控えめの音量では、激しいリズムのEDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)もマーカス・ミラーのバチバチなエレキベースのアタックも、イケる。

本体シャーシとトランスケースともステンレス製で、瀟洒な縦長シェイプでまとめられている。スピーカー出力端子はバナナプラグに対応する。

PART.1はこちらから

『管球王国』117号(2025 SUMMER)より

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