試聴を終えて
出力管以上に出音を左右する整流管。整流後電圧も確認しながら差し替えを楽しむ。メーカー製アンプでは指定管種が原則だ

新 整流管の比較試聴は久しぶりでしたが、管種を5U4G/5U4GBに絞って差し替えても、これだけ音が変わることに驚きました。
杉井 私自身、アンプの修理などをしていて、出力管以上に整流管で音が変わると思っていました。整備後のアンプの音に納得できなくても、整流管を差し替えると一発で解消するという経験は何度もしています。整流管はただ直流電圧が出ているだけでどれでも一緒ということではまったくないですね。
岡田 注意が必要なのは、音が変わるからといって無闇に差し替えてよいわけではない点です。メーカー製アンプでは、指定されている管種以外の整流管を使うのは完全に自己責任になります。指定の管種を使うことが原則です。特に米国系の整流管ではフィラメント電流がかなり異なる球があって注意したいですね。整流後電圧が変わってしまいますので。
杉井 そうですね。274BのところにGZ32を挿したりすると出力電圧がまったく変わるし、アンプを壊しかねない。誤解につながらないよう、今回は同じ規格の5U4G/GBに限定してテストを行なったわけですね。フィラメント規格5V/3Aが多いですから、それより少ない容量で使うならば入力AC電圧の調整で大丈夫なんですが。
岡田 電源トランスの3A巻線に2Aの整流管をつなぐとフィラメント電圧が高くなってしまうこともありますから、動作中の確認も重要です。プッシュプル構成のアンプで音質差がこれだけ感じられた点も興味深かったです。ステレオ機で、モノーラル構成よりかえって音質に影響が出やすかった側面もあるかもしれません。
杉井 プッシュプル・ステレオの出力管4本に対して1本で対応できる整流管はあまりないんですよね。マグナボックスの同じアンプにも5U4GBが1本の仕様と5Y3が2本の仕様があります。そこそこのレベルの電流を流して負荷をかけた条件だから音質差が明確になったところもあるでしょう。軽い条件で使っていると違いが出にくいこともあり得ます。
新 シングルアンプでは、アルテック604Eを使って今日のような音量はなかなか出しにくかったということもあるでしょうね。
岡田 整流後回路がコンデンサーインプットとチョークインプットでも音は違うだろうし、入力コンデンサーの容量など、いろいろと研究のし甲斐があると思います。整流管は、出力管よりもどうしても寿命は短いんです。常に大きな電流が流れ、しかも逆電圧がかかる。厳しい状況で使用されますから、設計もものすごく難しい。ですから、品種は必ずしも多くない。その中でも5U4GBは、米国系では最後期に作られた最強の球です。ヴィンテージ管も相当流通していますから、自作アンプに使ったり、差し替えたりすることもまだまだ楽しめるのではないかと思います。
杉井 ステレオアンプで1本だとかなり負荷がかかりますが、モノーラルアンプでは5U4Gは負荷が少なく、格段に寿命が伸びるんですよね。
岡田 余裕がありますからね。
杉井 40年、50年前からそのまま差してある球をチェックしても、ほとんどエミ減にはなっていない。無理してガンガン使うと、すぐにダメになりますし、軽く使うとものすごく長持ちする。その辺りの差が大きいですね。出力管は規定の電流を流すのが正当ですが、整流管は軽く使うということができる。そういう意味では、長持ちさせる術があるんです。耐圧に注意することは重要ですね。
例えば、高圧の送信管を出力管に使ったアンプでは、使える整流管は高耐圧の5R4や高圧用の水銀整流管などに限られてくる。B電圧350V程度までならば、使える整流管はいろいろ考えられるわけですが。さらに低電圧なら、ダンパー管のようなものを半波整流で使うということも考えられます。アンプ以上に音質に違いが出るのが、励磁型スピーカー用電源の整流管だったりします。
新 そうですね。整流管で試すべきテーマはまだまだあると思います。今日はいいセッションでした。
