[ヴィンテージ管]
●PART.1、PART.2、PART.4はこちらから。なお、PART.4の記事は、1月14日(PART.4)の12時に公開します。
4 │ マツダ 5U4GB
手に取るかのようにダイレクトな再生音。付帯音が少なく、スリリングな演奏に
マツダ 5U4GB
●TV7試験値(実測値) 59/59 ●B電圧(実測値) 287V
1950年代半ばの東京芝浦電気製マツダブランドの国産球。短期で廃止されたフランジ付きベースの最初期型。バルブ直径はT12バルブの最大規格に近い約39mm。最初期RCA製と同じ構造で、黒いカーボンスートされたニッケル製でカシメ止めされたプレート、フィラメントは上部テンションのない自立構造のため、タングステン系の硬い材質のリボンをU字型断面に成形し、機械的強度を増加させて変形を防止している。ボタンステム部のステムリード配線は合理的でフィラメントは短く、プレートはソケット過熱防止のため長めになっている。絶縁対策のため、ゲッターは管側面の2箇所に飛ばしている。(岡田)
新 「ブレイキー」と「展覧会の絵」の2曲は、マイクからダイレクトにコンソールに引っ張って、いま目の前にあるアルテックのスピーカーから鳴っていると錯覚するような再生でした。SP録音の「ペギー・リー」も、まさに当時のマイクロフォンで拾った音を直に聴いている感じです。生々しいなど、いろいろな表現はあると思いますが、そっくり生の音がリスニングルームで、プレーヤーやアンプを何も介さないで鳴っているような再生ですね。3枚ともそういう感じを受けました。これは褒め言葉で、もう整流管がどうこう、6V6がどうこうという話ではないという音です。
岡田 現行管の印象からがらりと変わりました。最初の「ペギー・リー」は、彼女の若い声やベニー・グッドマンのクラリネットのダイレクト感が増して、SP特有の音がはっきり表れていました。「ブレイキー」はシンバルの打ち方、ドラムの種類まではっきりわかって、まるで目の前で演奏している感じです。エネルギッシュさがよくわかると同時に、音が小さくなってもメリハリがしっかりと付いています。「展覧会の絵」になるとさらに明確で、大きい音がバッと入ったときの勢いや、スーッと音が小さくなっていったときの空間の感じがよくわかります。現行管でもそうですが、高音や低音がピンポイントで変わるというよりも、全体の印象が変わるところが整流管の面白さですね。
杉井 新さんがおっしゃるように、6V6を使っているという要素を意識させない音です。出てくる音がひじょうにダイレクト。全体的にダークな色調で、それが緊張感をもたらす音なんですが、固苦しくなく、不思議と心地がいいんです。楽器の音の隈取りが一音一音しっかりと手に取るようにわかります。「ペギー・リー」でベニー・グッドマンの演奏を聴いて、SP盤音源なのに各部があまりに手に取るようにわかって驚きでしたが、SP盤特有の音の芯を伝える感じがよく表れていたのではないかと。 「ブレイキー」も、ピアノの音が美しく、ドラムの音も緊張感があってダイナミック。余計な付帯音が一切なく、リアルです。筋肉質な人たち、身体能力に優れた演奏家が奏でる演奏に聴こえました。
「展覧会の絵」も、すべてにおいてリアル。音の強弱、コントラストが克明に出ていました。オーケストラの醍醐味を聴くことができたと思います。フィラデルフィア管の本来の音とはちょっと違うのかもしれないけれど、聴いていて演奏自体がすごくスリリングでした。マツダ5U4GBは、見た目が独特の逞しいプロポーションですが、まさに見た目通りの音がしましたね。システム全体の音を整流管がコントロールしていることがよくわかりました。
新 ベースは古いタイプですね。
岡田 はい。この形状は54年に登録されて、61年のRCAのマニュアルからはもうないタイプです。
新 かなり短命なんですね。
岡田 よく見るとボタンステムとバルブの融着部を絞っていないんです。この作りをそのまま踏襲したのが東芝の5G-K18なんですが、これは最初期のフランジ型を簡略化した、もっと広めのRCA 3B2と同じ独特なベースを付けていました。
杉井 6G-B8もベースは太いですよね。
岡田 5G-K22も同じです。このベースもRCAが開発したもので、54年のHB3規格表に載っています。
5 │ RCA 5U4GB
電源の存在を忘れさせる別格の音。リッチな響きで音楽の深みを再現する
RCA 5U4GB
●TV7試験値(実測値) 61/61 ●B電圧(実測値) 292V
1950年代半ばの銀文字RCA製で、非常に短期に終わった5U4GA構造の最初期型。電極構造は最後期型RCA 5U4Gと全く同じで、旧式のつまみステムに、5Z3型黒化ニッケルプレートである。フィラメントは5U4GBと同じU字型成形の自立型。上部マイカは5U4G型でフィラメント開口部が小さく、プレート電極に近い下部マイカなしの自動製造になる前の製品。バルブは直径がT12バルブの最大規格に近い約39mmでかなり背が高く、下部は深く絞ってある。べースは5U4GBと同じ高耐圧化のためのバリア付きだ。(岡田)
新 ここまでは電源がアンプを動かしていたという感触がありましたが、この音の出方は、もう電源が関係ないですね。ちょっとこの表現がいいのかはわからないけれど、電源を超越した深々とした音が出ていたと思います。「ペギー・リー」の冒頭から次元が違う鳴り方で、それは「ブレイキー」でも同様です。特に「展覧会の絵」のフィラデルフィア管は、前の4本はフィラデルフィア管本来の音ではなかったのではなどと考えたくらいです。音楽自体が鳴っている深さ、音楽そのものが持っている深さが見事に再現できていたように思います。
岡田 マツダ以上に凄い音でした。必要なところに応じてよりダイレクトな音がしますし、だからといって全体的に元気すぎるわけでもない。必要な部分はきちんと出て、要らない部分は出さないという描き分けができていました。「ペギー・リー」はヴォーカルとクラリネット、各々の音色がいいですし、「ブレイキー」は低音の音階や熱気などが上滑りせず、重心の安定した音ですね。「展覧会の絵」は高音も低音も明確で、ハイファイな感じがしっかり出ていますし、ムーティ自身の音楽性まで感じられました。かつて、アメリカのトップブランドRCAの球は国産真空管に比べて別格だな、という感覚を抱いたことを思い出しました。
杉井 マツダもよかったんですが、このRCAで、アンプやスピーカーの本来の能力が遺憾なく発揮された感覚になりました。ひじょうに満足できるレベルでアメリカンサウンドが出ています。ベースの音に注目するならば、「ペギー・リー」では先のマツダのほうが明瞭で、音階もはっきりとして見通しがいい。RCAは腰が柔らかいといいますか、とにかくヴォーカルが主役なのであって、細かいことはどうでもよくなるような絶妙なバランスのよさが出ています。曲名の「サニー・サイド」らしさがよく出て、聴いていてパッと鳴った瞬間に「これは楽しいな」と感じさせる音です。
「ブレイキー」では、アーティスティックな要素がしっかり加わって、技巧と芸術性の両面の優れたバランスを感じました。響きもリッチで、華麗ですし、文句ないジャズの演奏です。「展覧会の絵」は細密画のようなマツダに比べて、より自然に音楽が流れていく心地よさを感じました。今日聴いているソースは3曲とも米国系ですが、何の違和感もなく、最上の音で鳴っているとしか言いようがないと感じました。
岡田 5U4GBは1954年にRCAが中心になって、各セットメーカーがテレビ用に作り始めた整流管です。試聴した5U4GBは5U4GAに近いつまみステムの古い構造で大変珍しいタイプです。かなり数が少なく、製造期間も短いと思われます。


