6 │ フィリップスECG JAN 5U4GB

パワフルかつ豪快、骨太な音。音楽そのものが聴き手に飛んでくる

フィリップスECG JAN 5U4GB
●TV7試験値(実測値) 59/59 ●B電圧(実測値) 289V

1980年代半ばに製造された最後期型の軍用規格球。基本構造は定評があった米国シルバニア製の5U4GBで、黒くカーボンスートされカシメ止めされたリブなし角型ニッケル製プレート、フィラメントはタングステン系のやや硬い材質の平面リボンで上部テンション機構はなく自立式。マイカはしっかりと白くアルミナ処理され、打ち抜き穴とプレート固定法はRCA系と異なる。バルブは平均的な後期型RCA製に比べ、2cm近く背が高い。ゲッターは管頭部とプレート間の管側面の2箇所に飛ばしている。(岡田)

 RCAがアンプを通した再生音の極致だったとすれば、フィリップスECGはアンプを通り越してしまった感じの音がそこにあるといいたいですね。楽器の音が本当に生に近い。驚くべき変化で、こんなことがあっていいのかと思うリアル感です。試聴ソース3枚とも同じです。ディスクを再生しているという感じがなくなり、生の演奏の場に放り込まれたようです。あり得ないことですが、驚きました。

岡田 ヴィンテージ管を3本続けて聴いてみると、やはりどこかが変わるというよりも、全体の印象が変わるんですね。「ペギー・リー」はSP盤音源で、現行管ではスクラッチノイズが音楽と少し混ざった感じに聴こえました。それがヴィンテージ管では混ざっている部分がなくなって、普段、実際にSP盤で聴いている音に近くなってきている。ペギー・リーとベニー・グッドマンの演奏がより伝わってきます。「ブレイキー」は熱気が強調される感覚もありますが、現代的なジャズのクールな部分も含めてハイファイ的な要素がすごくよく出ています。「展覧会の絵」は録音された音がすべて出ているという感じがしました。

杉井 フィリップスECGブランドですが、実際の製造はシルバニアが行なっています。80年代前半~半ばの頃に数多く流通したもので、私も気にせずに使ってきた球なんですが、改めて聴き直してみるとなかなかいい音でした。出音も、シルバニアの真空管に抱いているイメージがそのまま出てきたといいますか、パワフルかつ豪快、骨太な音です。あまり元気な音がしないアンプにシルバニアの出力管を挿すと、俄然、元気になるという経験もあります。それが整流管で起こるとはまったく思いもよらなかった。

 「ペギー・リー」は、岡田さんがおっしゃる通り、スクラッチノイズの存在を忘れるというか、音楽だけがこちらに届いてくる感じです。「ブレイキー」は、エネルギー感、力強さが遺憾なく発揮されています。「展覧会の絵」に至っては、あまりに豪快なオーケストラサウンドで、人によってはどぎつくて受け入れられないとなるかもしれませんが、とにかく熱気があって、パワフルです。シルバニアのキャラクター全開で、その魅力を再確認できてよかったと思いました。

岡田 JANの印字があって軍用管かと思いますが、RCAは整流管の製造を先行して止めてしまって、軍に供給するものは最後期にはシルバニア製フィリップスECGになるんです。GEが製造を終えた後も製造を続けていて、整流管では最後期まで作られたしっかりした球でしょう。数があるし、サープラス(放出品)で使われなかったものが沢山出てきて、おかげで安くなっていますが、品質は素晴らしく、高性能な整流管です。

杉井 RCAが製造を止めてからはシルバニアがR
CAに供給もしていました。ですから、フィリップスECGと同じタイプの5U4GBがRCAブランドで売られていたこともありましたね。

7 │ NEC 5U4GB

シルバニアに通じる豪快な表現で、オーケストラに独特の輝きが加わる

NEC 5U4GB
●TV7試験値(実測値) 58/56 ●B電圧(実測値) 290V

おそらく1970年代に製造されたNEC製の国産球。基本構造は、真空管・蛍光灯等で技術提携していた米国シルバニア製の5U4GBに近い。カシメ止めされたリブなし角型黒化ニッケル製プレート、フィラメントは平面リボンで上部の成形はやや山形で自立式。マイカは白くアルミナ処理され、打ち抜き穴形状とプレート固定法はシルバニア系と少し異なる。バルブは平均的な後期型RCA製に比べて2cm近く背が高い。ゲッターは管頭部のみ。ベースはバリア付きで、3、5、7ピンを省略していない。(岡田)

 直前にRCAとシルバニア製フィリップスECGを聴きましたが、その延長線上にある音だと思います。同格の音でしょうけど、ごくわずかに違うかなと。先の2本は音楽そのもののリアリティが横溢していましたが、これは最上の再生音というか、再生音をどこか意識させるところがあった。とはいえ、どの盤も、シルバニア製フィリップスECGと同じレベルの音だといわれても、全く問題ないと思います。素晴らしかったですね。

岡田 私も凄いなと思いました。先入観かもしれませんが、NECはシルバニアと技術提携していましたから、まさしく延長線上にある音で、ごくわずかスケールが小さくなるぐらいかなと。

 そうですね。なかなかよい球でした。

岡田 シルバニア製フィリップスECGとの違いはほとんど感じられないくらいで、とてもよい整流管だと思います。国産球はダメという人がいますが、これは見直されていいんじゃないでしょうか。NE
Cのマークが2つ付いているものは大体、通信用か工業用なんですが、プレートもしっかりとカーボンスートされているので、一般用ではない特殊用途の整流管だと思います。「ペギー・リー」はごくわずかに、スクラッチが中域の方にシフトしている。そのおかげで、活気のある演奏に聴こえます。「ブレイキー」はほんの少しシンバルの響きが変わりましたね。「展覧会の絵」は、全体として少しソフトな傾向になったというところでしょうか。

杉井 マツダ、RCA、フィリップスECGとヴィンテージ管を聴いてきましたが、この音にいちばん近いのはフィリップスECGです。その中で、フィリップスECGで聴けた全編にわたってエネルギッシュで豪快な感じが程よく抑えられています。「ペギー・リー」では少し重心が上がったようで、音色的にやや甲高さを感じました。ただ音楽そのものの雰囲気は、ひじょうに熱気があります。「ブレイキー」でもっとも違いを感じたのはピアノの音で、ピアノが鳴ると、その帯域の音を強く出て、叩かれた金属の弦が強調されるというか、少しピーキーな感じも受けました。

 「展覧会の絵」はフィリップスECGと違って全体にオーケストラの響きがメタリックという感じです。アルテック604Eはドライバーが金属振動板で、ホーンがベークライト製ですが、弦楽器からも金属的な印象を受けました。それは快感でもあるんですが、よく響く金属振動板のドライバー+金属ホーンという感じの音に聴こえて、独特の輝き、派手さがあります。少しピークで喧しくなるようなところがありますが、根本的にはフィリップスECGと音は似ています。

This article is a sponsored article by
''.