新潟市の中心部、信濃川の河口に位置する「新潟コンベンションセンター」。1万人収容の展示場を始め、13の会議室を擁する本格的なコンベンション施設である。今回改修されたのは、メインホール。「これまでのシステムでは、残響が多く声の明瞭度が低いため、様々な対策を重ねてきましたが、それにも限界がありました」と、管理を行ってきた笠原光治氏(管理会社の新潟万代島総合企画)は語る。そこで選ばれたのが、ビーム・シェーピングという新しい概念で音をコントロールするコラム・スピーカー「JBL PROFESSIONAL」の「Intellivox」。このスピーカーの導入によって明瞭度が激変したという。ここでは、笠原氏を始め、改修に携わった斎藤電設の阿部氏、ヨコセAVシステムの吉澤氏の他、ヒビノプロオーディオセールス Div.の大森氏、滝氏にお話を伺った。

画像: 信濃川の河口に位置する複合型コンベンション施設。この中で会議室、展示会場を擁するのが「新潟コンベンションセンター」

信濃川の河口に位置する複合型コンベンション施設。この中で会議室、展示会場を擁するのが「新潟コンベンションセンター」

画像: 1,000 人を収容するメインホールは、2 つに分割することが可能。パーテーションが2 重になっており、音がまったく漏れないほど完全に2 つの部屋に分けることができる

1,000 人を収容するメインホールは、2 つに分割することが可能。パーテーションが2 重になっており、音がまったく漏れないほど完全に2 つの部屋に分けることができる

PS 最初に「新潟コンベンションセンター」について教えてください。

笠原 新潟県の国際交流の拠点として、2003年にオープンしたコンベンション施設になります。竣工から15年が経ち、そろそろ機材刷新も含めた改修工事を行う時期になりましたので、まずは、稼働率77%と利用者が多いメインホールの改修からはじめました。

PS このメインホールの改修に当たって、音響設備の刷新も要望されたそうですね。

笠原 はい。お使いになっていたお客様から「メインホールの音が聴きづらい」、というお声をいただいていましたので、音響システムの改善も入札の項目に入れておりました。今回の改修に対して新潟県が競争入札を行い「斎藤電設」が改修の担当業者となりました。

画像: 「新潟コンベンションセンター」の管理を担当する「新潟万代島総合企画」の笠原光治氏

「新潟コンベンションセンター」の管理を担当する「新潟万代島総合企画」の笠原光治氏

阿部 弊社はどちらかというと強電設備工事を得意としています。今回の改修工事では、音響設備に詳しく、これまでも「新潟コンベンションセンター」のメンテナンスを担当していた「ヨコセAVシステム」に協力をお願いしました。

画像: 今回の改修工事を受け持った「斎藤電設」の阿部彰氏

今回の改修工事を受け持った「斎藤電設」の阿部彰氏

機材刷新時に合わせて求められた音質向上

笠原 このメインホールはセミナー、式典、展示会、パーティと、ありとあらゆる行事が行われます。その中でもスピーチが多いので、以前のシステムよりも、とにかく“声”を聴きとりやすくしてもらえるように吉澤さんにお願いしました。

吉澤 これまでのシステムは、まずはスクリーンのある面にフロント・スピーカーを置き、天井に設置された76基のシーリング・スピーカーに少しずつディレイをかけてエリア全体に音を届けるというものでした。しかし、運用をはじめてみると、会議でもっとも重要な“声”が聴き取りにくかったんです。
 メンテナンスの度に、少しでも聴き取りやすくなるよう、音を出すシーリング・スピーカーの数を減らしてみたり、EQやディレイで調整するなど手を尽くしても、かならずホールのどこかに気になる場所ができていました。また、スピーカーの数が多いので、保守点検をするだけでも一日掛かりの仕事でした。

画像: ホール音響設備の選定・導入を担当した「ヨコセAVシステム」の吉澤友樹氏

ホール音響設備の選定・導入を担当した「ヨコセAVシステム」の吉澤友樹氏

画像: かつては照明の左側にあるシーリング・スピーカーが使用されていた

かつては照明の左側にあるシーリング・スピーカーが使用されていた

笠原 吉澤さんには、たくさんの解決方法を提案していただいたのですが、最終的に「システムの刷新時に、改めてスピーカーから見直してみませんか」という話になったのです。

吉澤 この音響設備は15年前に導入したものですからね。その間、音響機器はどんどん進歩していますので、改修ではどんなスピーカーを導入するのが良いか探していました。その中で、「Intellivox」を見つけたんです。しかし、いくら機能が優れていても、どんな音質かは聴いてみなければわかりません。そこで、このメインホールで、デモンストレーションをお願いしました。他社のスピーカーもいくつか試しましたが、「Intellivox」は“声”の明瞭度がまったく違っていました。音が遠くまでほとんど減衰することがなくすんなりと耳に入ってくる。メインホールに使用するスピーカーはこれしかないと決断しました。

画像: スピーカーは図のように配置されている。A室とB室をつなげて使う場合はSP①の「Ivx-DSX380 HD」を、A室とB室を分割して使う場合はSP②の「Ivx-DSX280 HD」を使用する

スピーカーは図のように配置されている。A室とB室をつなげて使う場合はSP①の「Ivx-DSX380 HD」を、A室とB室を分割して使う場合はSP②の「Ivx-DSX280 HD」を使用する

画像: 「Intellivox」は、到達距離によって、モデルの大きさが決まる。ひとつの大きな会場として使用する時に使う「Ivx-DSX380 HD」は到達距離45m。2つに分割した時に使う「Ivx-DSX280 HD」は35m。「Ivx-DSX Series」は、トゥイーターを搭載して高域の再生能力を強化したモデル。この他、屋外でも活躍する高い耐候性を備えたハイパワーモデル「Ivx-HP-DS Series」がある

「Intellivox」は、到達距離によって、モデルの大きさが決まる。ひとつの大きな会場として使用する時に使う「Ivx-DSX380 HD」は到達距離45m。2つに分割した時に使う「Ivx-DSX280 HD」は35m。「Ivx-DSX Series」は、トゥイーターを搭載して高域の再生能力を強化したモデル。この他、屋外でも活躍する高い耐候性を備えたハイパワーモデル「Ivx-HP-DS Series」がある

画像: 会場の使用状況によって、使用するスピーカーをスイッチで切り替えられるようになっている

会場の使用状況によって、使用するスピーカーをスイッチで切り替えられるようになっている

Intellivoxに搭載するビーム・シェーピングのポテンシャル

PS そうして「Intellivox」を導入したわけですが、ホール全体の音量が2~3dB内に収まっているということには驚きました。

大森 「Intellivox」には、天井や壁などで不要な反射が起きないようにする「DDS(Digital Directivity Synthesis)」というビーム・シェーピング機能が搭載されています。求められる場所に向けて多くの直接音を届ける技術で、対向する壁のギリギリまで反射音が少ない状態で音を届けられます。これは、他社のコラム・スピーカーにはない特長です。

画像: 「ヒビノプロオーディオセールス Div.」テクニカルサポートチームの大森健市氏

「ヒビノプロオーディオセールス Div.」テクニカルサポートチームの大森健市氏

 コラム・スピーカーは、様々なメーカーでもラインナップされていますが、どれもビーム・ステアリングという発音方向を変化させる技術が搭載されています。しかし、それでは部屋の反射音を取り除くことは難しいんですね。対して、Intellivoxのビーム・シェーピング技術は、音の反射を起こす床、天井、壁など、不要な場所への音の放射を抑えることができます。今回もそうですが、反射が多い場所など音響調整が難しい場所ほどその真価を発揮します。

画像: 「ヒビノプロオーディオセールス Div.」設備営業チームの滝司氏

「ヒビノプロオーディオセールス Div.」設備営業チームの滝司氏

大森 「Intellivox」は、専用ソフトウェア「DDA(Digital Directivity Analysis)」で、シミュレーションしたデータそのものをスピーカーに流し込みます。ですから、スピーカー自体は、想定した場所に置くだけで、シミュレーション通りの音を出すことができます。今回のメインホールでは、床や天井に当たらないように平行に、対向する壁の直前まで均一な音量で音を飛ばして、反射を起こさないように音をコントロールしています。

PS シミュレーションでは、スピーカーの振り角度も出せるんですか?

大森 角度については現場で合わせましたが、ほんのわずかでした。「DDA」によるシミュレーション時に、スピーカー同士の影響も考慮して計算されるので、水平面の特性も向上します。

吉澤 角度調整は、弊社で製作した取付け金具で行っています。後面にケーブル等を這わせるための隙間や落下防止のワイヤーを壁面内にある鉄骨とつなぐ孔も設けています。

画像: スピーカーを設置している金具は、「ヨコセAVシステム」製

スピーカーを設置している金具は、「ヨコセAVシステム」製

画像: 「Intellivox」のメンテナンスに使用するD-sub9ピン。会場内にある壁埋めのボックス内に設置

「Intellivox」のメンテナンスに使用するD-sub9ピン。会場内にある壁埋めのボックス内に設置

誰にでもわかるような劇的なサウンド変化

阿部 このメインホールは、静けさを表す数値がNC20と十分な静粛性を持っています。また、遮音性も高く、パーテーションを使って2つの部屋にしても、隣の音はまったく聴こえません。このメインホールのすぐ側の展示場でコンサートを行っていても、まったく影響はありませんでした。

PS とてもしっかりと防音工事が成されたホールなんですね。先程、滝様にワイヤレスマイクで声を出していただきましたが、とても聞き取りやすい音になっていました。ホールの素性は良かったけれど、15年前の設備用スピーカーでは、その良さを活かせなかったと言うことですね。
 「Intellivox」導入から約3ヶ月経ちましたが、どのような変化がありましたか?

笠原 とにかく、ディレイやEQで音を作る必要がなくなったので運営が楽になったことです。また、これまで声の小さいお客様やマイクから離れて話す方がいらっしゃっても、ハウリングが起きるので音量が上げられず苦労していました。それが今は、ほとんどフェーダーを上げるだけでよくなり、オペレーターがつかない案件でも、音響に対するお問い合わせは一切なくなりました。そこも楽になった点です。
 ただ、正直に言って、私以外に音の違いがわかるかどうか、心配だったのです。ところが、音響以外のスタッフや、去年入社したばかりのスタッフが“すごく音が良くなった”“全然音が違います”と言うんです。

吉澤 たった2本で、このホール全体に均等に音が通るようになりました。

笠原 それに加えて、あのデザインですから目立ちません。

PS 滝様がデモしてくださった際に、スピーカーの下まで聴きにいきましたが、そこでもきれいに聴こえるのには驚きました。

 そうなんです。遠い場所まで届くことはもちろん、ごく近いところまでしっかりカバーできているのも「Intellivox」の大きな特長だと思います。

PS ありがとうございました。

画像: 調整室のラック。以前のシステムでは、ブランクパネルの部分にシーリング・スピーカーのアンプが入っていた。「Intellivox」はパワード・スピーカーなのでアンプが必要なく、スペースが節約できる

調整室のラック。以前のシステムでは、ブランクパネルの部分にシーリング・スピーカーのアンプが入っていた。「Intellivox」はパワード・スピーカーなのでアンプが必要なく、スペースが節約できる

 

Intellivoxの独自技術ビーム・シェーピングとは

 独自技術のビーム・シェーピングについて、もう少し詳しくご紹介したい。他社のコラム・スピーカーでは、発音する際に音線軸の角度を変化させるだけのビーム・ステアリング方式が多い。「Intellivox」は、見た目には違いはないが、それとはまったく異なる「ビーム・シェーピング」と呼ばれる方式が採用されている。ビーム・ステアリングは、フィルターとディレイ等で実行可能だが、ビーム・シェーピングは、ディレイのほかFIRフィルターやIIRフィルターなどで構成されたより高度な独自アルゴリズムなのだ。これにより、垂直方向のビーム自体の形状を変化させる事ができ、近距離から遠距離まで均一な音量にすることができる。また、床や天井、壁などへの音の反射を避ける事で、邪魔になる反射音をなるべく減らして、聞き取りやすい直接音のみを届ける。これも「Intellivox」の特徴のひとつだ。

 こういった優れた機能を持つ「Intellivox」だが、扱いはシンプル。まず、専用ソフトウェア「DDA(Digital Directivity Analysis)」に設置する場所の形状を入力。その後、「ウェイト」(1~10の数値で設定)と「音圧」の2つを設定する。「ウェイト」とは、その面の重要度で、例えば後ろの壁の「ウェイト」を10として、音圧を0とすれば後ろの壁に音が届かないようにして反射音を抑えることができる。この計算結果をスピーカーに読み込ませれば、ほぼ完了。後は現場で微調整するだけで良い。

画像: 「Intellivox」のビーム・シェーピングの例

「Intellivox」のビーム・シェーピングの例

画像: 「Intellivox」を1本手前の角に置いた際の音圧分布

「Intellivox」を1本手前の角に置いた際の音圧分布

 

Intellivoxに関するお問合せ
ヒビノ株式会社
ヒビノプロオーディオセールス Div.
Tel:03-5783-3110
https://proaudiosales.hibino.co.jp/

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