10月23日から25日の3日間、東京・有楽町の東京国際フォーラムで、恒例の「2026 東京インターナショナルオーディオショウ」が開催された。日本最大級のオーディオショーとして、国内外のハイエンドオーディオ製品が一堂に介する人気のイベントだ。
ここでは、10月23日(金)にディーアンドエムホールディングス(デノン)のブース(ガラス棟・G701)で行なわれた、オーディオビジュアル評論家の藤原陽祐さんとHiVi編集長の辻潔による、Bowers & Wilkinsの800 Series Diamond D5(以下、800 D5シリーズ)とマランツのセパレートAVセンターを用いた特別講演をリポートしよう。
HiVi視聴室のリファレンスとして、Bowers & Wilkinsが選ばれる理由
現在、HiVi視聴室のリファレンススピーカーには、Bowers & Wilkinsの 800 Series Diamond D4(以下、800 D4シリーズ)の製品群を使用しているが、イベントの前半では、HiVi視聴室ではなぜ800 D4シリーズを用いているか、その理由が解説された。

オーディオビジュアル評論家の藤原さん
HiVi視聴室では、フロントに「802 D4」2台、センターに「HTM81 D4」1台、サラウンドおよびサラウンドバックに「805 D4」4台を配置。さらに、サブウーファー「DB1D」を組み合わせた7.1chシステムを構築し、チャンネル間の音色の統一と、滑らかな音のつながりを実現している。こうした複数のモデルを組み合わせたシステムによって、2chステレオからマルチチャンネルの映画・音楽作品まで、幅広いコンテンツを評価するためのリファレンス環境を整えている。
オーディオビジュアル専門誌にとって、リファレンスシステムとは、製品の性能を評価するための基準、測定原器となる存在だ。日々、AVセンターやプレーヤー、プロジェクターなど多種多様な製品を試聴・検証しているが、組み合わせる製品によって評価が変わってしまっては、機器本来の実力を正確に判断することはできない。
そのため、リファレンス機器では、基本的な性能の高さに加え、それがいつでも安定して発揮できることが要求される。800 D4シリーズでは、そうした要件を高い次元で満たしていることに加えて、家庭用のみならず音楽/映画制作用向けスピーカーとして長年にわたって培われてきた信頼性、業界標準として用いられていることも、採用の理由として挙げられた。

HiVi編集長の辻。フロントの左右とセンターの音色をそろえることは、映画のセリフや人物の声を自然につなげるうえで重要と語る
▼「【HiVi視聴室の新リファレンスシステム】序論 リファレンス機器の3条件とは」も併せてお読みください
「803 D5」「804 D5」と「HTM81 D5」を中心に構築した5.2.4スピーカーシステム
今回のシステムでは、アンプにはマランツのコントロールAVセンター「AV 10」と16chパワーアンプ「AMP 10」を起用。ドルビーアトモスやDTS:Xに対応した本格的なホームシアター環境で、800 D5シリーズのサウンドを披露した。

今回のイベントでは、マランツの15.4ch対応コントロールAVセンター「AV 10」(写真左最上段)、16chパワーアンプ「AMP 10」(中央のラックの最上段)を用いた。ラックの中には、マランツおよびデノンのAVセンターやCDプレーヤー、プリメインアンプの数々が並ぶ

フロント左右には「803 D5」、センターに「HTM81 D5」、サブウーファーには「DB1D」を使用。センタースピーカーは高さ60cmのスタンドにセットされ、画面との音声のスムーズな融合を狙う
システム紹介では、スピーカーの配置にも注目が集まった。センタースピーカーは高さ60cmの市販スタンドを用いてスクリーンの直下に設置。スクリーンへの被りを抑えながら、フロントのLCR(左・センター・右)スピーカーの高さをできるだけ揃えるように設置されていた。

ハイトスピーカーには「706 S3」を4本配置。サブウーファー「DB1D」は後方にセットし、合計2台を組み合わせることで、5.2chスピーカーにオーバーヘッドスピーカー4本を組み合わせた「5.2.4」構成の再生環境を用意した

今回のような本格的なサラウンド再生では、フロント左右のスピーカーだけでなく、センタースピーカーの性能や設置方法も、作品への没入感を左右する重要な要素となる
800 D4からD5へ。外観の変化以上に注目したい内部構造の進化
イベントの中盤では、800 D4シリーズから800 D5シリーズへの進化についての解説が行われた。
800 D5シリーズでは、ユニットを固定する内部フレームなどの構造が強化されているほか、さらにウーファーユニットの磁気回路も改良が加えられた。つまり外観上の変化は大きくないが、内部構造やユニットなどの改良によって、音質面で明確に進化したのだという。
藤原さんが音の進化点として挙げられたのは、音離れのよさと、空間への自然な広がりだ。スピーカーが音を出しているという感覚が薄く、音がスピーカーの位置から解き放たれ、空間の中に自然に現れるような表現が印象的なのだという。
また、Bowers & Wilkinsのものづくりについては、基本的なデザインやコンセプトを大きく変えるのではなく、長年受け継いできた設計思想を維持しながら、細部を磨き上げて完成度を高めていく点も見逃せない美点として挙げられた。

Bowers & Wilkins 800 D4からD5への進化についての特集記事が掲載された「HiVi2026年秋号(9月17日発売)」
スピーカーの総合的な性能は、ユニット、キャビネット、ネットワークの3要素が組合せで決まる。800シリーズは、それぞれの要素を高い水準で進化させてきたことが、長年にわたって支持されている理由のひとつといえそうだと、藤原さんは指摘した。
▼「Bowers & Wilkins 800 Series Diamond D5 is Here !も併せてお読みください
多彩な映像・音楽ソースで確かめる、立体的な音場表現
イベントの後半では、オペラの公演映像や大規模な音楽イベントの映像を再生し、歌声の質感やオーケストラの響き、会場の空気感を確認。さらに、ストリーミング動画配信サービスを使って最新のコンサート映像を再生し、ステージのスケール感やパフォーマンスの躍動感を来場者と体験した。

同じ楽曲の映像作品とドルビーアトモス音源を聴き比べるデモも実施。ストリーミング機器を活用することで、ディスクメディアに限らず、配信される映画や音楽も本格的なマルチチャンネルシステムで楽しめることが紹介された
ライヴ感あふれる歌唱シーンや、迫力あるヴォーカルが印象的なミュージカル映画の場面を再生。歌声の明瞭さはもちろん、演奏や歓声、会場の空気感まで自然に再現できるかを確認した。登壇者は、こうした映画音響において、セリフや歌声を明瞭に描き出すセンタースピーカーが重要な役割を担うと解説した。
さらに、静寂から大きな音へと展開するアニメーション映画のシーンや、ドルビーアトモス収録の音楽作品も試聴。音の移動や環境音の広がり、ダイナミックレンジなどを通じて、サラウンド再生ならではの立体的な空間表現を体験した。映画音響の制作現場でもリファレンスとして活用される800 D5シリーズ。その実力を、多彩な映像・音楽ソースによって確かめる機会となった。
音の静けさと自然な広がり、そしてセンタースピーカーの重要性
イベントの最後には、800 D5シリーズのサラウンド再生を実際に聴いた印象が語られた。藤原さんは、800 D5シリーズは「余計な音が少なく、歪みっぽさを感じさせない点を高く評価しています。従来からのBowers & Wilkinsの魅力が、さらに磨き上げられた印象があります」と語った。

藤原さんは「音が自然で心地よく聴こえるため、ついボリュウムを上げたくなるほどだった」と800 D5シリーズを評価
もうひとつ、特に評価が高かったのがセンタースピーカーだ。今回のイベントでは歌声を含む作品が多く再生されたこともあり、人物の声をしっかりと支え、フロント左右のスピーカーと自然につながるセンタースピーカーの存在が、サラウンド再生の質を大きく高めていたようだった。
また、スピーカーの性能を高めるだけでなく、音楽を聴く人の感情に働きかける表現力も重要だと藤原さんから解説があった。800 D5シリーズは、高い解像度や優れた空間表現に加え、音楽や映像への没入感を生み出す力が非常に高いことが魅力だという。
今回のイベントは、非常に大きな話題となっている800 D5シリーズの進化を単にスペック面で紹介するだけでなく、多彩なコンテンツを実際に体験できる催しとなっていた。特に800 D5シリーズをサラウンド環境として構築できる場は非常に限られているとのことから、非常に貴重な機会だったと思われる。リファレンススピーカーとして求められる正確さと、作品の魅力を引き出す表現力を圧倒的に高めた800 D5シリーズ。その高い実力をサラウンド環境で実感できるものになったに違いない。









