画像: Auto Sound Web Grand Prix 2022:【特別座談会】2022年のカーオーディオ市場を振り返る

これまでになく受賞製品が少なかった2022年、市場全体の動向にともなう新製品の少なさに起因するのだが、この状況について選考メンバーはどのような思いを抱いたのだろうか、カーオーディオ市場の今とともに語ってもらった、[編集部]

画像: オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー。左から脇森宏氏、黛健司氏、長谷川圭氏、藤原陽祐氏、石田功氏。

オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー。左から脇森宏氏、黛健司氏、長谷川圭氏、藤原陽祐氏、石田功氏。

パネラー・オートサウンドウェブグランプリ選考メンバー
[石田功、藤原陽祐、黛健司、脇森宏、長谷川圭]
(まとめ=ASW編集部/写真=嶋津彰夫)

ASW:今年の市場ですが、新製品の数がとても少ない年でした。国内メーカーのナビやディスプレイオーディオといったところでは2022年モデルが登場しましたが、海外メーカーでは、まったくないわけでははないものの、グランプリの選考対象として検討できそうなモデルは少なかったですね。

石田 功(以下、石田):少ないですね。ナビは少し前から半導体不足の影響を受けてますね。

長谷川 圭(以下、長谷川):一昨年前の半導体不足が相変わらず尾を引いてます。DSP関連のモデルは相当なダメージを受けている。ナビはもちろん、デジタル系の製品は流通量が相当にダメージを受けてますね。

ASW:コロナ禍でサプライチェーンに影響が出て、デジタル機器以外でも生産ラインが止まるといった事態が発生してます。

藤原陽祐(以下、藤原):スピーカーのパーツが造れないと、ラインを止めざるを得ないですね。

ASW:メーカーによっては、市場に送り出そうと新製品の開発が終わっていても発売できるほどの在庫が確保できていないということもあるようです。

画像: 藤原陽祐氏。

藤原陽祐氏。

藤原:なかなか造れないところにもってきて、量の多いところに取られるので、高級オーディオのように数を売る市場じゃないと、パーツ供給も絞られがちなんですよね。需要数が多い純正装着用スピーカーとか、純正ナビ、ディスプレイオーディオというところ、自動車メーカーやディーラーに取られますよね。ホーム用のオーディオメーカーに聞くと、パーツの供給にとんでもない価格を提示してくるということがあったといいます。まともにそんな価格で仕入れたら、売価がありえないものになってしまって、そんなもの造れないと話してました。カーオーディオ市場でも同様でしょう。どこかにしわ寄せって来るものですけれど、いまのところ高級カーオーディオ市場は直撃を受けてますね。

石田:ショップでも、お客さんが希望する商品をすぐに提供したいけれど、待たせてしまうケースが少なくないようです。

ASW:グランプリのノミネートからははずれていますが、オーディソンのB-CONという製品があります。ブルートゥースレシーバーで、ハイレゾワイヤレス認証も受けているモデルです。この製品は2022年春に発売されていますが、即完売してそのあとに入荷したのが10月でした。

長谷川:AVナビやディスプレイオーディオがBTオーディオ対応といっても通信グレードがさまざまで、BTで高音質をというのはなかなか望めませんでしたから、このモデルの登場を喜んでいたドライバーは少なくなかったんでしょうね。

黛 健司(以下、黛):国内メーカーは何とか頑張って新製品を出してきていて頑張ってますよね。海外メーカー、特にスピーカーはどうしてこんなに少ないんだろうと……サプライチェーンの事情などは知らなかったので、今年のノミネートを見て思いました。それと、スピーカーのサイズが160mmクラスがスタンダートになっていますけれど、最近の新車を見るとそれをつけるのも大変だよなと思うんです。マーケットの変遷を感じていて、供給するメーカーの苦労はかなりあるだろうと思います。

画像: 石田 功氏。

石田 功氏。

石田:そうですね。特にトヨタ車などは「ドアのスピーカーを変えてくれるな」としてますしね。

長谷川:輸入車でみると160mmクラスを純正スピーカーで採用しているモデルも少なくなってきてますね。

脇森 宏(以下、脇森):そうそう。80mmクラスが増えているし、フロアに大口径ユニットを載せるケースも増えてますね。

石田:僕が今乗っているスバルR2などはドアにスピーカーついてないですから(笑)。

脇森:ダッシュボードでしたっけ?

石田:そうですダッシュボードです。

脇森:ダッシュ100mmですね。

ASW:カーナビの市場供給数も減ってますよね、そもそもつかないクルマも増えてますし。

長谷川:新車に搭載されるのがディスプレイオーディオが増えてきたこともあって、AVナビ減が進んでいるかもしれないですね。それに、ある年齢層から下の若いドライバーはCD持ってなかったりして、そもそもプレーヤーが不要だったりしますよね。いずれAVナビから円盤メディアが消えるのかもしれません。メーカーでもそのあたりは数年前から検討しているようですし。

藤原:一般的に言えば、スポティファイやアップルミュージックが再生できたらいいものね。音質云々ではなくて、音楽再生出来たらいいレベルの話で。

石田:そうそう、一般的にはその状態。

藤原:そうなるとブルートゥースでいいよね。

画像: 黛 健司氏。

黛 健司氏。

:ユーザーのマインドとしては、『クルマの中でいい音で聴きたい、いい音を聴くためだったら何でもやるぞ』という人が、数は少なくなったと思うけれどいるとは思うんです。ただ、今言っていたように社会環境がそれを許さないという側面が出てきたじゃないですか。クルマが昔と違って好き勝手に改造するわけにはいかなくなった。スピーカー付け替えたら保障外になるとか、パワーアンプにしてもトランクルームに搭載したりしていたけれどなかなかそういうこともやりにくくなってきたとか。

藤原:音出すか止まるかみたいなね(笑)。

:どんなに意欲的で志が高い人でも、趣味としてやりにくくなってきたのかなと感じてしまうところはありますね。

藤原:成り立ちにくくなってきたかもしれないね。

石田:コンテストで、電気自動車で参加した人がいたんですが、帰れなくなった人がいましたね。

:コンテスト会場で電力を使い果たしてしまったんですね。

石田:そうです。

藤原:SDG'Sという話題になったら、大きなアンプなど『こういう仕様にするのって、どうなの?』ということも起きそうですね。

:でも純正装着されるオーディオとしては、ブランドオーディオを入れているところもあるじゃないですか。クルマの中でいい音で聴きたいという要望や欲求がなくなったわけではないんですよね。

石田:自動車メーカー側が、そういった意欲を削ぐようなことをやってきますね。エアバッグがちゃんと動作しなくなる恐れがあるからドアスピーカーを変えるなとか。

藤原:輸入車も、あれをいじるとなればそれなりのノウハウが必要になるしね。

石田:以前なら、DINの規格があって、そのスペースに合わせたコンポーネントを開発すればよかったけれど。

画像: 脇森 宏氏。

脇森 宏氏。

脇森:スピーカーも簡単に変えられない。最近ではクルマが純正スピーカーが接続されているかどうかチェックしてるんです。

:ダミーロードなどを入れてやらないと、車両側が異常と感知してしまうんですね。

脇森:そうです。

長谷川:実際にダミーロードを入れてスピーカー交換するというケースがあるんですね?

脇森:あるんです。実際にやろうとすると、なかなか手間のかかる作業になりますね。

:そのクルマのシステムに合わせたダミーロードを適切に組まないといけない。これは今までにはなかったスキルが要求されそうですね。

石田:とりあえず新車が出たら、まず解析ってなってますよね。

藤原:制約が多くなっていくと、やりづらいですよね。まあでも、クルマで音楽を聴くことがなくなるわけじゃない。

長谷川:2022年公開の映画「すずめの戸締り」の中で、クルマで音楽聴くシーンがあるんです。世間的にはそこで再生されている曲が懐メロで逆に新鮮というところで話題になってますが、個人的には、『クルマ走らせたら音楽流すよな』って思いました。今時らしくスマホをクルマにつないで聴いているんですけど、映画のシーンでカーオーディオってほとんど描写に使われないので、印象的でしたね。

藤原:そういうのってありますね。走る、当然のように音楽も流す、っていうの。だから、いろんな制約はあるんだけれど、その中で“いい音で聴きたい”はあるから、どうできるかを考えていくということになるよね。

:制約ありきばかりになるのは寂しいけれど、そこをちゃんと考えていかないと、スピーカー変えたらアラートが出るような世の中では何もできなくなるわけですから。

石田:いまちょうど用意されているパイオニアのデモカーにトヨタ・ラブ4があるんですが、あのクルマもドアスピーカーの交換ができないでしょう。そこでカロッツェリアではトゥイーターだけでなんとかしようと提案してるんですよね。

画像: 長谷川 圭氏。

長谷川 圭氏。

長谷川:アドオンスピーカーの提案ですよね? 考え方としてはだいぶ以前からありましたけれど、手軽に実践できるキット商品はあまりなかった気がしますね。クルマは聴かれたんですか?

石田:トゥイーターとサブウーファーを足して、ドアスピーカーはそのまま活かすやり方のクルマです。

藤原:賢いアプローチですね。

石田:それはなかなか良かったですよ。

長谷川:昔ながらの、ガッツリ系カーオーディオは減ってきているかもですけど、新しいアプローチ提案されてきているのはいいことですね。

ASW:最近のカーオーディオ事情について、ざっくばらんにお話いただきました。クルマを取り囲む環境や再生メディアの変化など、いろいろ変化してきている中で、コロナ禍も手伝って稀に見る製品数の少なさだったわけですが、それにもかかわらずグランプリとして選出すべき製品が存在したというのは大きな収穫だったと思います。

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