”音楽そのものの音"を成立させるのパラメーターをひとつずつクリア
感覚的、生理的な何かを持った総合力の高い2ウェイ
文=鈴木 裕
RS AUDIOは「音に一切のカラーレーションを与えることなく、音楽そのものの音を再現する」というポリシーだが、なるほどこのスピーカーを聴くと納得させられる。”音楽そのものの音"を成立させるためには何が必要か。そのひとつひとつのパラメーターをひとつずつクリアしているからだ。
まず音の密度が高く、左右のスピーカーの真ん中が薄くならない。ヴォーカルものだったら当然だが、クラシックのオーケストラなど、意外とこの項目が厳密にはクリアできていないものもある。低域のレンジは40Hzくらいまで確保されているが(メーカー発表では41Hz)、そこから高域までムラがなくきちんとワイドレンジ。2ウェイではひとつの課題となっているクロス付近も薄くなく、シームレスにつながっている。人によってはナロウレンジの濃厚さを良しとする人もいるが、このワイドレンジは薄い帯域がないのでデメリットを感じない。
音の色彩感はモノクロームではなく色彩があり、金属、木製、皮、粘膜といった振動する物体の質感表現の能力も高い。いや、高いだけでなく、ある意味ゴージャスな感じも持っている。濃いめの絵の具を細くない筆に付けて描いているような勢いとか太さもあるし,同時に儚い感じの表現や漂うような成分の聴かせ方も上手だ。演奏の温度感のホット/クールも描き分けるし、ヴォーカリストとかソロヴァイオリンといった記名性のある音も深みを持って楽しませてくれる。
サウンドステージとしては音像どうしは癒着せず、安定して定位。前後の描き分けもきちんと出てくる。つまり位相成分がきちんとしている。
理詰めのようでもあり、感覚的、生理的な何かを持っているのが優れたスピーカーだが、そういった総合力の高い2ウェイ。ミドルクラスながら正統派のドライバーユニットで、これを中心に新しいシステムを組みたくなってくる。
真面目な音の描き方はドイツブランドらしいスピーカー
上質な歌声は自然に身体に染みこんでくる
文=長谷川 圭
ドイツのアールエスオーディオがリリースするアッパーミドルグレードがダイヤモンドシリーズ、トップモデルたるマスターシリーズに次ぐラインナップの2ウェイスピーカーだ。
ジュエリーの名を冠したシリーズ名から、ブリリアントなイメージのサウンドを聴かせるかと思いきや、実際に音を出してみると落ち着きのある大人びたサウンドを奏でる。シンバルやブラスといった楽器の音には華やかさもあり、このあたりはダイヤモンドの名もうなずけそうという印象を受けた。だが、一貫して真面目な音の描き方は、ドイツブランドらしいところと言えよう。
本機の前作はレベレーションシリーズ、その構成ユニットをブラッシュアップしたものと説明されているが、音を聴く限り全くの別物を言っていい。低音から高音までの全帯域において情報量が格段に増えているのだ。特に人の声のしっとりとした質感表現などは耳に馴染みが良く、自然に身体の奥まで染みこんでくるように感じた。
アルミハウジングの26mmシルクドームトゥイーターは、振動板保護のためのグリルに開口率の高いヘキサゴナルタイプを採用しており、質感向上に寄与したのではないだろうか。ウーファーのカーボンファイバーコーンをドライブする磁気回路は、大型フェライトマグネットを搭載、32mmボイスコイルのモーターをパワフルに駆動する。パッシブネットワークには、同郷のムンドルフから、高品位な素子を採用しているというが、6dB/oct.でクロスする2ウェイがなめらかにつながるところから察するに、スピーカーユニットの性能はかなりなものだろう。
クラシックの荘厳さを上手く表現するし、凝った録音のポップスなどは重なり合う音の造りを綺麗に描き出すなど、取り扱うイース・コーポレーションで“ハイエンドブランド”の一角を担う製品だけのことはある。音の輪郭をメリハリの効いた形で聴かせるため、高い解像度を求めるドライバーに好適なスピーカーではないだろうか。
アールエスオーディオ RS Audio
Speaker
RS Diamond 165-2
¥279,400(セット/税込)
SPECFICATION
●型式:セパレート型2ウェイスピーカー
●使用ユニット:ウーファー・165mmコーン型、トゥイーター・26mmドーム型
●定格入力:90W
●出力音圧レベル:91dB
●インピーダンス:4Ω
●再生周波数帯域:41Hz〜25kHz