ORTOFON(オルトフォン)は、新形状のスタイラス(レコード針の先端)を採用したMCカートリッジ「MC Vertex」(¥2,970,000、税込)を6月に発売する。
同社には、30年以上にわたり最高のスタイラスとして用いられてきた「Ortofon Replicant 100」があり、これを凌駕するのは容易なことではなかった。しかし今回は、これまでにない最高性能の新形状スタイラスをつくることを決め、その開発に多くの時間を費やしてきたそうだ。

開発陣は次世代型のスタイラスを考案するとともに、加工技術をよりシビアに構築するところからチャレンジを開始、ダイヤモンドを1ミクロン単位で精緻に加工することは大変な困難を伴うが、今回はダイヤモンドをより広く、薄く加工することに成功。こうして音溝をより正確、かつ忠実にトレースできるVertex Diamondスタイラスが誕生したという。
Vertex Diamondは、正面からみた接触半径を110ミクロン、レコード盤の信号面に接触させる側面の走査半径を4ミクロンとした。これはReplicant 100スタイラスの正面100ミクロン/側面5ミクロンを凌駕するものだ。スタイラス側面を薄くするとラインコンタクトの理想に近づくが、きわめて薄いスタイラス側面の先端を信号面にラインコンタクトさせた場合、その表面各部にかかる圧力についても考慮しなくてはならない。
Vertex Diamondスタイラスでは正面110ミクロン/側面4ミクロンという曲率半径を選んでおり、その結果、信号面の振幅に対する走査精度をきわめて高いままに保ちながらラインコンタクト面の接地圧を最適な状態で均質化することに成功している。
カンチレバーについても、信号の伝達速度が速いダイヤモンドを採用。そのダイヤモンドカンチレバー先端付近にスタイラスチップの取付穴を設けている。この加工には最先端のレーザー切削技術が用いられており、肉眼での視認が困難なほど小さく、高精度な取付穴を開けることに成功している。

またカンチレバーの表面全体に、レーザー照射による研磨を行うことで、高精度な平滑化加工も施した。カンチレバーに限らず、振動する部品の表面に細かな起伏が存在すると、微細なレベルの不要共振が発生したり、カンチレバー内部での正確な振動(信号)伝送が阻害されて歪みとして現れるなどの機械的な影響が生じる恐れがある。MC Vertexでは、これらの考えうるテーマについて徹底した対策を施している。
カートリッジ天面の幅はヘッドシェルと同程度、底面側は極力狭くしたT字形状を採用。これはレコード再生時にトーンアームとカートリッジのハウジング、カンチレバーやダンパーを含む振動系の動作を最適化させるためで、カートリッジ動作時の実効質量を小さくする狙いとのこと。
また、ハウジングの材料密度や肉厚、内部形状を最適化しただけでなく、再生時のダンピング効果向上と不要共振の吸収を目的とした特殊な空洞をハウジング内部に設けている。これにより、ハウジングに軟質素材を用いなくても共振をコントロール可能だそうだ。
コイル巻線には、「MC Jubilee」以来となる高純度銀線を採用。振動系の新規開発に伴い、WRD(Wide Range Damping)システムを採用したダンパーも本機専用に新規設計された。高音域と低音域用の2枚のダンパーにプラチナ製のディスクを挟んだシステムは、トレース能力の向上とともに周波数の高・低に応じて振動系を最適な状態で支持、制動することができる。

なお今回、「MC Vertex 針交換」(¥1,782,000、税込)も同時発表されている。MC Vertex針交換はデンマーク本社工場でのリペア(修理)となるので、本体を預かってから40日ほど納期がかかるそうだ。また、リペアにあたって同意書も必要となる。
「MC Vertex」の主なスペック
●適正針圧:2.5g
●出力電圧(1kHz、5cm/sec.):0.3mV
●チャンネルセパレーション(1kHz):30dB
●周波数特性(20Hz〜20kHz):±1dB
●スタイラスタイプ:Vertex Diamond
●スタイラスチップ半径:r/R 4/110μm
●カンチレバー素材:無垢単結晶ダイヤモンド
●トラッキング角度:23度
●内部インピーダンス:19Ω
●推奨負荷インピーダンス:100Ω以上
●コイル線材:高純度銀
●カートリッジボディ素材:SLMチタン/DLCコーティング
●自重:15g


