映画『いろは』の全国公開を記念して、5月23日(土)にヒューマントラストシネマ渋谷にて、キャストが登壇しての舞台挨拶が行なわれた(上映後)。登壇したのは、主演の川島鈴遥、共演の森田想、遠藤久美子、鶴田真由、そして横尾初喜監督の5名。

本作は長崎を舞台にしたロードムービーで、ある日突然「妊娠したが、父親が誰か分からない」と言って、5年ぶりに帰ってきた姉(森田想)に、父親探しに連れ出される妹(川島鈴遥)。その2人の旅路を繊細に描いた注目の1作。
川島鈴遥は主人公・伊呂波を演じ、彼女は将来が見えず、今の自分に鬱屈としたものを抱えたまま長崎・佐世保の実家に暮らしている。そこに突然帰ってきたのが、自由奔放で恋愛体質な姉・花蓮(森田想)、そして、2人が訪れる民宿を営む姉妹の妹・カズエ(遠藤久美子)、伊呂波と花蓮の母親・和葉(鶴田真由)、という関係性。
すでにロケ地・長崎では先行公開されており、東京を含む全国では前日の5月22日(金)に公開初日を迎え、都内での舞台挨拶はこの日が初。上映後の舞台挨拶ということもあって、キャストらは、観客の大きな拍手に迎えられて登壇した。
まずは、全国公開を迎えた今の思いを聞かれた川島は、「昨日、このヒューマントラストシネマ渋谷さんで一人、『いろは』をこっそり観ました」と明かし、「素敵な映画が完成したとより感じたので、自信を持ってお届けできます。すごく嬉しい気持ちでいっぱいです」と笑顔を見せた。

川島を連れ回す(笑)姉役を演じた森田は、「私には兄がいるので、劇中の姉妹関係という設定がまずすごく新鮮だった」とコメント。周囲の姉妹がいる友人の顔を思い浮かべながら、「どういうふうにそうやって関係性を作っていったのか」を考えた、と語った。さらに「最初からとても仲が良い姉妹というわけではないので、実際に鈴遥ちゃんと一緒に映画の期間を過ごしていく中で(撮影はほぼ順撮りだったそう)、どうやって距離を近づけていくかということを、監督と相談しながら、実際の感情の通り構築できたかなという感覚です」と、撮影現場で大切にしていたことを振り返っていた。

次に伊呂波姉妹が立ち寄る民宿の女将を演じた遠藤がコメント。役作りで参考にしたことについて、「私も姉妹の役だったので、台本を読ませていただいた時に、私たちもお2人のようにここにたどり着いた姉妹なのかもしれないという目線でした」と語った。

そして、「民宿に入ってきた当初から2人のぎこちなさを感じていたので、とにかく2人にとって居心地のいい場所であってほしいというような思いで、2人を幼かった自分たちのこの年代ぐらいの時の姉妹像を浮かべながら、自分たちを投影しているような細い目で見ていてっていうところもありました」とコメント。
すると、横尾監督からすかさず「細い目って? どの目? 僕のことかな」とツッコミが。これに対し、遠藤は「その細い目は大好きなんですけど、そうじゃなくて、何か過去を思い出すような温かい目で見ていたいなという気持ちです」と笑顔で返し、夫婦ならではのやりとりに会場もほっこりとした空気に包まれていた。

一方、長崎という土地が持つ空気感が作品にどのような影響を与えたかと問われた鶴田は、「監督がやっぱり長崎出身なので、まずはもう監督を慕う人たちが現場にたくさん日々、差し入れくださったりとか、見に来てくださったりとかして、とにかく現場が温かい空気に包まれていたことが、一番この作品に影響を与えているのではないかなと思います」とコメント。

家族が住んでいる茶舗の近くに商店街があったそうで、「ちょっと空き時間をふらふらしているだけでも買い食いできたり、雰囲気のある場所だった」と長崎で過ごした時間を振り返っていた。
自身の出身地・長崎を舞台にした映画作りを行なってきた横尾監督は「今回は前作『こん、こん。』を作る過程で自分に自信がなかったりとか、悩んでいる若者からの相談を受けることがたくさんありまして。自分にもっと肯定的になれる作品を、という長崎の皆さんから頂いたテーマを軸に今回は作らせてもらいました。長崎の魅力というよりは、長崎の皆さんの優しさだったり温かさみたいなものを届けたいなという思いはありますね」と語り、長崎の人々や土地から本作のテーマを受け取ったことを明かしていた。
また、本作を通してひとりの人間として実生活に変化があったかを問われると、川島は「映画のテーマが自己肯定感ということで、人と比べられることだったり、自分が人と簡単に比べられる時代になってしまったなと思うんですけど、それでもそこに惑わされない自分軸みたいなものをしっかりと築き上げていきたいなというふうにより改めて感じました」と、作品を通して受け取った自身の心境の変化を語っていた。

森田は「あまり感情面じゃないエピソードになっちゃうんですけど」と前置きし、作中でのドライブシーンについて言及。「最近、運転免許を取りまして、どうやってハンドルに手を置くのかとか、あんまりよそ見しないで伊呂波のほうを向いて喋りたいけど、どこまで向いたらリアルなのかとか、分からないままやっていたなと思ったので、実際免許を取ってからこんなに前しか向けないんだとびっくりしました」と、免許取得後に気づいた新たな発見を明かし、観客の笑いを誘っていた。
最後に、登壇者からメッセージが送られて舞台挨拶は終了となった。
遠藤は、「ロードムービーって自分の心は止まってるのに、車体は動いていて……。ロードムービーの魅力って、あ、こういうこともあるんだって。2人でいるんだけれど1人で外を眺めているシーンとかが、『2人なんだけど、1人』という孤独がそこに存在していたりして、不思議なロードムービー独特の面白さがあるなって今回思いました。今日のみなさんのお話を聞いて、また映画館で見たいなって思いましたので、みなさんも2度3度と本当に足を運んでいただいたり、お友達に面白かったよとか言っていただけるとすごく嬉しいです。この映画をお宝物にして帰っていただけることを願います」と、本作への思いを口にしていた。
そんな遠藤のコメントを聞いた鶴田は、「もう言うことないですね」とおどけつつも、「もう一度見たくなりました。なのでみなさまもこのコメントを胸に秘めて、もう一度見ていただけたら嬉しいです」と、作品の魅力を改めて伝えていた。
森田は、「本当に宝物のような映画になってほしいなって。映画の中でポイント、ポイントで出会っていく人々がいて、その間 、2人で過ごしていく感情の流れをより丁寧に作れた映画だったなと思います。遠藤さんがおっしゃっていたように、何かこう自分の中に居場所がちゃんとあるような、宝物のような映画になったなと思うので、それを一緒に感じていただけたらと思いますし、すごく大きな目的を届けたいだとか壮大な物語というよりかは、少し近くに感じられるような内容にもなっていたと思うので、近い方に広げていただけたら幸いです」と笑顔を見せまていた。
川島は、「最近、人生って本当に競争じゃないなと思いながら自分に言い聞かせて頑張っているんですけど、ゆっくりと歩いて生活したい人もいれば、早く走っていきたい人もいるし、ちょっと休憩したい人もいるし、本当に人それぞれ。タイミング、タイミングで自分軸を大切に生きていきたいと思いますし、それを温かく優しく教えてくれるような始まりの映画になっていると思うので、胸に少しの光が皆さんの心に差していったら嬉しいなというふうに思っております」と、改めて作品に込めた思いを語った。
最後に横尾監督は、「今回の映画のもう一つの趣旨で、長崎を映画でつなぎたいという思いがあってロードムービーを選んだということもあります。佐世保市から長崎市、それから諫早市と雲仙市を作品としてつなげられたかなと思っています。なので、この映画でまた皆さんとつながれたらいいなと思いますので今後ともよろしくお願いします」と話し、イベントを締めくくった。
映画『いろは』
5月22日(金)より ヒューマントラストシネマ渋谷 ほか全国順次公開
監督:横尾初喜 脚本:藤井香織 プロデューサー:加藤毅 福田済
出演:川島鈴遥 森田想
遠藤健慎 山口森広 田川隼嗣 石本愛 長崎亭キヨちゃんぽん 田中明日実 石長由紀子 明石純美玲 吉田ひかる 小宮みどり 宮崎裕子 加々良宗澄 井上真緒 中山祐太 若杉康平 金子大地(声の出演) 遠藤久美子 鶴田真由
配給:BLUE.MOUNTAIN/LUDIQUE
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