株式会社小田急箱根とMMD株式会社、株式会社クープは、箱根ロープウェイにて4月13日(月)から、ドルビーアトモスを採用した世界初の立体音響システム搭載ゴンドラ「音箱(OTOBACO)」の運行を開始する。
音箱(OTOBACO)とは、ゴンドラの内部にドルビーアトモス用スピーカーシステムを設置し、このために作曲されたアトモスミックスの楽曲を聴きながら箱根の旅を楽しんでもらおうという企画だ。

音箱(OTOBACO)仕様のゴンドラは2台が運行予定。写真はそのひとつの103号

早雲山駅から大涌谷駅までの片道、約10分の時間で、箱根の絶景とドルビーアトモスの没入サウンドをのたしめる。尾根を超えた瞬間に広がるカルデラの眺望と音楽の一体感は最高です
ゴンドラからの素晴らしい眺望に、没入型の音楽をかけあわせた“音で体験する箱”をコンセプトとしている。視覚、聴覚一体的に箱根の自然や空間を体感できるだけでなく、心で感じる景色の創造や想像力をかきたてる、これまでにない観光体験が可能という。
運行日の天候にあわせて、晴れの日は車窓から見る雄大な眺望に寄り添い一体感を高めるピアノ協奏曲、雨の日には心の中にある箱根の景色を想像したデジタルミュージックが再生されるという具合で、まさに環境とサウンドが一体となった体験を目指している。
作曲者は、数多くのTVアニメ、映画、ドラマの劇伴を手掛けるKOSEN氏で、それぞれ以下のようなコンセプトで作られているそうだ。
●晴天時:景色と一体となる楽曲(楽曲名:Soundscapein Owakudani)
晴れた日には、ゴンドラから望む雄大な山々や谷、空の広がりに寄り添うよう設計された楽曲が流れます。音は景色を主役として引き立て、視覚体験への没入感をさらに深める役割を果たします。
●雨天時:景色を想像する楽曲(楽曲名:Searchlightin Owakudani)
雨や霧などにより、広大な景色を充分に見ることができない日に流れます。この楽曲は、あえて見えない景色を音で説明するのではなく、音から「本来そこにある景色」を想像してもらうことを目的に制作されています。視界が限られる状況でも、旅の価値を損なわず、雨の日ならではの静かで印象的な体験を提供します。

ゴンドラ内部から進行方向を見る。正面左右と天井に4基のスピーカーとサブウーファーが取り付けられている

天井の両端にトップスピーカーとサブウーファーがみえる。ゴンドラ自体には外部から給電する仕組みがないので、今回はプレーヤーやアンプはバッテリーで駆動している
運行区間は箱根ロープウェイの早雲山駅から大涌谷駅までの片道で、運行日は繁忙日を除く毎日。全ゴンドラのうち音箱(OTOBACO)仕様は2台で、約10分間隔での運行となる。専用チケットは当日窓口で販売されるので、音箱(OTOBACO)を体験したい場合は早雲山駅でその旨を伝えるといい。1台1組限定の貸切運行で、通常料金に加えて別途¥2500が必要とのこと。1台あたりの定員は最大16名。
「音箱(OTOBACO)」の運行概要
●区間: 早雲山駅から大涌谷駅までの片道乗車(距離約1.5km、所要約10分)
●時間:10分ごとに発車
●運行日:2026年4月13日(月)から通年 ※繁忙日を除く(詳しくは箱根ナビホームページを確認ください)
●専用チケット:¥2500/組 ※早雲山駅の箱根ロープウェイ駅窓口で販売。別途一人あたりの運賃が必要
●定員:1組最大16名
先日開催された音箱(OTOBACO)体験会に、麻倉怜士さんと一緒に参加してきた。当日は風もなく、絶好の観光日和。音箱(OTOBACO)は「103」「104」号の2台のゴンドラを改良したとかで、外見に違いはない。 そのひとつ104号に乗車すると、四隅の柱、座席に座った際の頭上位置に4基のスピーカーが取り付けられていた。進行方向がフロント、反対側がリアということになる。さらに天井のフロント/リア側にそれぞれ2基のトップスピーカーとサブウーファーが設置されている。スピーカーは業務用モデルで、サイズも手頃で音も癖がなく、自然な環境音としても楽しめる。
今回のコンテンツや機材のインストールを手掛けたクープの伊藤氏によると、スピーカーの取り付け位置については、お客さんの邪魔にならない高さなどにも配慮しているそうだ。さらにゴンドラ自体は外部から電力を供給する仕組みがなかったので、信頼性の高いバッテリーを内部に設置し、プレーヤーやアンプを駆動している。

音箱(OTOBACO)について紹介していただいた皆さん。左から株式会社小田急箱根 運輸本部 索道部長 相川貴之さん、株式会社クープ 事業開発本部 伊藤幸一さん、MMD株式会社 清水晶子さん
ちなみに箱根ロープウェイにドルビーアトモス音源を搭載するというアイデアはクープとMMDが合同で提案し、そのアイデアを元に小田急箱根とどうやったら搭載可能かなどを探っていったとのことだ。
ドルビーアトモスの音源は、ゴンドラのスピードに応じて合計4種類(晴天用と雨天用がそれぞれ2種類)が準備されているが、これは現場の担当者の判断で切り替えるとのこと。そのため、天候によって午前中は晴天用、午後は雨天用のの楽曲が使われる可能性もあるとのことだ。
今回は特別に晴天時と雨天時の両方の音楽を体験させてもらったので、以下で麻倉さんによるそれぞれのインプレッションを紹介する。
「音箱(OTOBACO)」は、目と耳から脳を刺激する、唯一無二のコンテンツです。
この体験には、予想以上に感動しました
今回「音箱(OTOBACO)」に試乗してきましたが、予想以上に感動したな、というのが率直な感想です。
ドルビーアトモスについては、劇場やホームシアターで昔から親しんでいるわけです。でもその場合は、プロジェクターとかディスプレイとの組み合わせで、電子映像を見ながら音を聴いているという形です。つまり、絵も音も設計された世界観の中にいるわけで、その中に入って体験する受け身の文化でのドルビーアトモスでした。

音箱(OTOBACO)の終点、大涌谷駅にて
でも、音箱(OTOBACO)でのドルビーアトモスは違います。風景がリアルで常に動く、時々刻々変わっていくんです。箱根の山並みやカルデラ、吹き出す硫黄といった大自然の絶景のスペクタクルを見ながら、それに即した音響、オリジナル曲を聴くというのはまさに初めての体験でした。
何と言っても、これがカメラを通した映像ではなく、目の前に本物の風景、絶景が広がっているという体験こそ、凄く感動するのですね。その意味では、音箱(OTOBACO)は単なる移動手段ではなく、ビジュアル体験としても素晴らしいし、ドルビーアトモスが加わったことによって、そのビジュアル体験が2倍、3倍になってくるように感じました。
エモーションという言葉がありますが、絶景から映像の魅力を感じ、さらにそれに相応しい音楽が流れてきて、自然と音楽の相乗効果と言うか、魅力の2乗みたいな感じがありました。

音箱(OTOBACO)から富士山を眺める
映画のような制作物を熟知したクープと、自然の中に溶け込むような魅力をプロモートする小田急箱根、MMDが一緒になった時の、シナジー、融合が、この感動を生み出したのですね。
楽曲も工夫されていて、晴天用は景色に相応しく、天晴れで雄大なシンフォニー。フルオーケストラによるクラシックというか、弦楽器があって、木管があってという音楽展開が聴くだけでもワクワクさせてくれます。それを聴きながら絶景を見ると、よりワクワクするし、逆もありで景色と音楽がお互いを補完している気がしました。
雨天用については、霧に包まれると風景がまったく見えなくなることもあるとかで、見えない中に何かありそうだなといった期待感をうまく演出しています。風景が見えないんだったら、音楽も静かにまったり行くのかと思ったら、案外ポップなんです。そういう意味では演出のうまさを感じました。

芦ノ湖遊覧船にも乗船し、麻倉さんも久々に箱根を満喫
試聴スタイルとしては、シートに座って聴きがちだとは思いますが、立ってみるのもお薦めです。もちろん安全に配慮してからですが、そうすると上半身が文字通り音に包まれて、音を浴びます。まさにドルビーアトモスのイマーシブ効果ですね。
箱根ロープウェイの音箱(OTOBACO)は、目と耳からの心地いい刺激が脳を刺激してくれます。これは本当に唯一無二の体験ですから、是非多くの方に体験してみることをお勧めしたいですね。(麻倉怜士)


