今回は、ミミソラ取り扱いの2つの有線イヤホンの新製品を紹介する。今やイヤホンと言えば、ワイヤレスタイプが人気だが、本格的な音質の追求や個性豊かな音を楽しむならば、やはり有線式の方がバリエーションも豊富だ。ここでは、Kineraが日本のO2aidとコラボして作り上げた「Heimdall」と、注目のMEMSドライバーを用いた3ウェイ6ドライバー仕様のBinary acoustics「EP321」をピックアップ。価格帯は異なるものの、個性が際立った音の魅力を具えているのが特徴。その違いをたっぷりと紹介したい。

有線イヤホン
Kinera
「Heimdall」
オープン価(想定市場価格¥35,000前後)

画像1: 最新有線イヤホンレビュー。Kinera&O2aidのコラボモデル「Heimdall」と、Binary acousticsの新作「EP321」。異なる魅力を持つ2つのイヤホンを聴く

Heimdallの主な仕様
ドライバー:1DD+1Piezzo Electric
周波数応答性能:20Hz~20kHz
インピーダンス:22Ω
感度:108dB
ケーブル:OFCシルバーコーティング
ケーブル長:123cm
コネクター:0.78mm 2Pin
プラグ:3.5mm/4.4mmスイッチ式(Kinera ACE 2.0を採用)
付属品:イヤホン収納ケース、ユーザーマニュアル、イヤーチップ(Kinera製 S/M/L各1ペア、final製Type E S/M/L各1ペア)

KineraとO2aidがコラボ。2年をかけて開発したコラボモデル「Heimdall」

 北欧神話の光の神の名である「Heimdall」(ヘイムダル)と名付けられたこのイヤホンは、KineraとO2aidのコラボモデル。Kineraがシェル/ケーブル・デザインおよび音質チューニングを担当し、ドライバーユニットおよび生産はO2aidが、(日本国内で)行なっている(ということでMade in Japan)。

 ドライバーは、O2aid独自の圧電セラミックスを用いたVST(Vertical Support Tweeter)を採用。そして、ポリエステル系の高性能熱可塑性樹脂超薄膜フィルムを振動板に採用したダイナミックドライバーを組み合わせている。

画像: 「Heimdall」の分解図

「Heimdall」の分解図

 ケーブルはOFCシルバーコーティングで、コネクターは0.78mm 2Pinを採用。プレーヤーなどとの接続端子は、3.5mm/4.4mmスイッチ式のアップグレードケーブル・Kinera「Ace2.0」を採用している。

画像: 付属ケーブルはKineraの「Ace2.0」。コネクターは0.78㎜ 2Pin、プラグは3.5mmと4.4mmバランスの切り替え式

付属ケーブルはKineraの「Ace2.0」。コネクターは0.78㎜ 2Pin、プラグは3.5mmと4.4mmバランスの切り替え式

 ハウジングは合金製で、耳の窪みに収まりやすそうな立体的な形状で、フェイスプレート部分は丸みをおびた三角形となり、コンパクトで持ちやすいデザインになっている。また、フェイスプレート部にはカーボンが採用されているようで、独特なカーボン柄が印象的だ。

画像: KineraとO2aidがコラボ。2年をかけて開発したコラボモデル「Heimdall」

とにかく音数が多い! 鮮やかで解像度の高い音が楽しめる

 さっそく聴いてみよう。プレーヤーはAstell&Kernの「PD10」で、専用クレードルを使ってXLRバランス出力し、Benchmarkのヘッドホンアンプ「HPA4」に接続した。イヤホンとの接続はXLR/4.4mm変換プラグを使用して、4.4mmバランス端子で聴いている。

画像: とにかく音数が多い! 鮮やかで解像度の高い音が楽しめる

 ウラジーミル・フェドセーエフ指揮モスクワ放送響による『チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」』の第3楽章を聴くと、出だしの弦楽器の旋律から「音数が多い!」と感じた。弦楽器の数が分かるような解像感と、それらが奏でる音が空間に広がっていく様子が目に浮かぶような明るく鮮やかな音だ。この鮮明な高域は、超高域まで優れた応答性を持つVSTドライバーならではのもの。高域のエネルギーが強めな印象も受けるが、決して鋭くなりすぎず、いわゆる耳に刺さるようなキツい高域とはならないところが見事だ。

 そして、低域もなかなかパワフルで、エネルギッシュな高域に決して負けていない。量感たっぷりの力強い音だが、不明瞭にふくらんでしまわず、想像以上に解像度が高い。大太鼓を強く叩いたときの膜面を打つ感じや膜面の震える感じ、大太鼓自身が震える様子まできめ細かく再現する。バランスとしてはメリハリの効いた元気のいい鳴り方をするのだが、細かな音まではっきりと聴こえるので、パワフルなのに実は繊細という面白い鳴り方をする。

 米津玄師の「JANE DOE」を聴くと、宇多田ヒカルの歌声は透明でよく伸びる。米津玄師はややハスキーな高い声が印象的だが、男性特有の芯の通った厚みを再現してくれる。中域のエネルギー感や音の厚みも充分だ。高域の伸びが綺麗なので、やや細身な印象になるが、ひ弱な感じはなく、情感たっぷりの声を楽しめた。

 サラ・オレインの『one』から「ボヘミアン・ラプソディ」を聴くと、コーラスの分離もよく、ボーカルも存在感たっぷりだ。鮮明な再現ということもあって、音が間近に迫ってくる印象があり、ボーカル曲などは目の前で歌っているような感じになる。音が近いのでステージ全体を俯瞰するような音場感ではないが、自然な広がり感があり、コーラスの配置やステージの様子はよく伝わる。

 高域も低域もなかなか主張が強いと感じたが、入念にマッチングをさせているようで、高域と低域は滑らかにつながり、中域が薄くなる感じはない。かなり個性的な音に仕上がっているが、この溌剌とした元気の良さは聴いていて気持ちが良い。高域の再現性に留意した製品というと、バランスの良さや性能的な優秀さが印象的な優等生な音が多いが、そのイメージを覆すようなパワフルで勢いのある音だ。ライブ演奏を生で聴いているようなエネルギーや臨場感を味わいたい人に向いている。

有線イヤホン
Binary Acoustics
「EP321」
¥56,500(税込)

画像2: 最新有線イヤホンレビュー。Kinera&O2aidのコラボモデル「Heimdall」と、Binary acousticsの新作「EP321」。異なる魅力を持つ2つのイヤホンを聴く

EP321の主な仕様
ドライバー構成:1DD+1パッシブドライバー+3BA+1MEMS(10mm低域用ダイナミックドライバー+6mmパッシブダイアフラム+3基バランスド・アーマチュア+MEMSドライバー)
周波数特性:8Hz~40kHz(1/4インチ・フリーフィールド、-3dB)
インピーダンス:13Ω(@1kHz)
感度:122dB/Vrms(@1kHz)
全高調波歪率(THD):1%未満(@1kHz)
ケーブル:OFCシルバーコート仕様
ケーブル長:120cm
コネクター:0.78mm 2Pin
プラグ:4.4mmバランス
筐体:3Dプリント樹脂シェル+CNC加工ステンレス製フェイスプレート
付属品:高純度純正ケーブル(0.78mm 2Pin)、キャリングケース、イヤーピース(S/M/L 各2ペア)、取扱説明書

ダイレクトドライブMEMSドライバー搭載。マルチドライバーを駆使した「EP321」

 続いてBinary Acousticsの「EP321」を紹介したい。一番の特徴はMEMSドライバーの採用。しかも、一般的なMEMSドライバーは駆動のための専用アンプがセットになっているが、本機ではアンプを使わないダイレクトドライブMEMSユニットを採用している。直接駆動により、クリアで音場感豊かな再現を可能にしたという。

 また、その他のドライバーとして、10mmダイナミック型ドライバーと6mmウールペーパーコーンのパッシブドライバー、フルレンジ型1基と高域用2基から成るBAドライバーを使った3ウェイ5ドライバー(+パッシブドライバー)という構成になっている。

画像: 「EP321」の分解図。パッシブ型を含め、4種類6ドライバーを搭載

「EP321」の分解図。パッシブ型を含め、4種類6ドライバーを搭載

 樹脂製のシェルは3Dプリンターで製造されたもので、CNC加工されたステンレス製フェイスプレートを組み合わせている。ケーブルのコネクターは0.78mm 2Pinタイプ。プレーヤーなどとの接続端子は4.4mmバランス。

画像: ダイレクトドライブMEMSドライバー搭載。マルチドライバーを駆使した「EP321」

 フェイスプレートにMEMSと刻まれたデザインはなかなかハイテクをアピールするイメージだが、モザイク模様のような仕上がりで、モノトーンの色調と合わせ、落ち着いた雰囲気を醸成している。見る角度(光の当たり方)で色味が変わるのも面白い。加えて、他のイヤホンではあまり見かけないステンレスの質感もなかなか個性的だ。

画像: 背面(耳に触れる面)はスケルトン仕様

背面(耳に触れる面)はスケルトン仕様

バランスが良く、MEMSのイメージを塗り替える厚みのある音色も好感触

 試聴は「Heimdall」と同じく、PD10をプレーヤーとし、XLRバランス接続したHPA4を使い、変換プラグを介して4.4mmバランス接続で聴いている。

 本機の音の特徴はバランスの良さ。マルチドライバーではあるが音のまとまりはよく、ちょっと大げさに言えばフルレンジに近い音色の統一感がある。そして、MEMSドライバーを使ったイヤホンは、高域は綺麗だが少し細身というか繊細さ寄りの傾向があるのに対し、なかなかに芯の通った厚みがあることも印象的だ。これは、MEMSのダイレクトドライブ仕様のお陰なのか、チューニングの効果なのかは不明だが、上手に仕上げた音だと感じた。

画像: バランスが良く、MEMSのイメージを塗り替える厚みのある音色も好感触

 グスターボ・ドゥダメル指揮ウィーン・フィルによる『ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」』、『同/交響詩「はげ山の一夜」』を聴いた。「展覧会の絵」では「鶏の足の上に立つバーバ・ヤーガの小屋」を聴いたが、スピード感は抜群。演奏のキレ味もしっかりと描く反応の良い音だ。低域は量感を豊かに備えながら、膨らみすぎずに響きの余韻もスムーズに再現する。高域も低歪みで綺麗に伸び、楽器の質感も豊かだ。音場としてもホールの響きに包まれるような感覚で、パワフルな演奏を体感できるスケールの大きな鳴り方だ。

 「はげ山の一夜」を聴いても、夏至祭の前夜に魔物や精霊たちが大騒ぎをするというロシアの民話の情景が浮かぶようなスリリングな演奏を映画でも見るような臨場感をもって聴かせてくれる。魔物たちを象徴する各楽器の音もより質感が豊かで、リアルな音色を粒立ちよく再現する。音楽の要素を細かく聴いていっても、苦手とするような部分を感じず、素直に再現する。それでいて、スピードとキレ味の良さ、雄大なスケールもしっかりと味わえる。褒めっぱなしになってしまうが、実によく出来た音だ。

 米津玄師の「JANE DOE」を聴いても、ボーカルは浮かぶように目の前に定位し、声の厚みもしっかりと出る。ニュアンスも豊かだし、高域の伸びも綺麗だ。声など中音域の密度感も高く、高域から低域までひじょうにバランスがいい。解像感の高い音に分類されるタイプだが、それでいて細身になったりせず、しっかりと厚みのある声が楽しめるのも好ましい。

 ダイレクトドライブMEMSの採用など、ハイテクな印象もあるモデルだが、一番の魅力はそれらをしっかりとまとめ上げた仕上がりの良さだ。総合的な実力から言っても5万円台の価格としてはかなり優秀なモデルと言えるだろう。

異なる個性をじっくり楽しめ、イヤホンの面白を存分に味わえる2モデル

 メーカーや音作りの違いだけでなく、異なる魅力を持つモデルで試聴が楽しかった。どちらも決して高すぎない価格で実力的には充分に優秀だ。「Heimdall」の鮮明で陽性の音は楽しく音楽を聴きたい人にはぴったりだし、好きな音楽に合わせてコレクションに加えるのもおすすめ。「EP321」はダイレクトドライブMEMSユニット採用という点でも注目してほしいし、さまざまな楽曲をオールラウンドに楽しめるバランスの良いモデルとして愛用できるだろう。こうした異なる個性を楽しむのが、オーディオの面白さでもある。興味がある人はぜひとも試聴してみてほしい。

画像1: 異なる個性をじっくり楽しめ、イヤホンの面白を存分に味わえる2モデル
画像2: 異なる個性をじっくり楽しめ、イヤホンの面白を存分に味わえる2モデル

This article is a sponsored article by
''.