ベルガモ国際映画祭グランプリ、ベルギー映画祭批評家協会賞、フィンランド映画祭批評家協会賞、ブリュッセル国際映画祭技術大会・三葉虫賞などに輝く、「60年代チェコ・ヌーヴェルヴァーグの傑作」であるというが、私はまったくの初見。いくら歴史的な映画と評価されていようと、初めて見る者にとっては「新作」なので、個人的にはこの新作にとても興味深く見入った。製作は1966年、つまり「プラハの春」の2年前にあたる。
監督はヴェラ・ヒティロヴァー。チェコ・ライオン芸術貢献賞を得たり、チェコ映画のファースト・レディと呼ばれるのはずっとずっと後のことで、この映画が出た66年の当時は「突拍子もない映画を作る危険分子」的な評価だったのではなかろうか。実際、監督はこの後、7年間の活動禁止を言い渡されている。ようするに、一見わけのわからないものや、第三者にあれこれ考えさせるような内容のものは、権力者にとって都合が悪いのだろう。
登場人物はざっくりいうと、マリエ1とマリエ2。監督はただ彼女たちの動きを撮るだけではなく、もっとメタ的に迫っている。だから見ている側としては突如、別の世界に連れていかれるような気分になることもしばしばだ。映画の中に映画があり、その映画の中にもうひとつの映画があるという感じか。衣装がおしゃれなので、ファッション面を目当てに見に行っても楽しいだろうし、逆に「当時のチェコの社会的状況」を事前にたっぷりと仕入れて、それと照らし合わせながら見るのも一興だろう。監督はきっと映画を作っている時は自由を味わっていたはずで、ならばこちらも自由に映画を見れば良いのである。私には特に、ラストに登場する、ある語句が染みた。人間の本質に迫っているような気がした。
60周年を記念しての、4Kレストア版による上映は3月14日より東京シアター・イメージフォーラムで開始。以後、全国順次上映される。
映画『ひなぎく 4Kレストア版』
2026年3月14日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて公開
以後、シネ・ヌーヴォ、元町映画館、ナゴヤキネマ・ノイ、アップリンク京都 ほか全国順次公開
監督:ヴェラ・ヒティロヴァー
原案:ヴェラ・ヒティロヴァー+パヴェル・ユラーチェク
脚本:ヴェラ・ヒティロヴァー+エステル・クルンバホヴァー
撮影:ヤロスラフ・クチェラ
美術:エステル・クルンバホヴァー+ヤロスラフ・クチェラ
衣装:エステル・クルンバホヴァー
音楽:イジー・シュスト+イジー・シュリトゥル
出演:イトカ・ツェルホヴァー(マリエ1役)/イヴァナ・カルバノヴァー(マリエ2役)/他
配給:チェスキー・ケー
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