去る1月24日、東京・テアトル新宿にて映画『終点のあの子』の公開記念舞台挨拶が開催された。柚月麻子の鮮烈なデビュー作を映画化した本作は、女子高生の切実な心情を残酷かつリアルに描く青春群像劇。イベントには主演の當真あみ(希代子役)、中島セナ(朱里役)、平澤宏々路(奈津子役)、南琴奈(恭子役)、吉田浩太監督が登壇した。上映直後の熱気が冷めやらぬ中、満員の観客から拍手で迎えられたキャスト陣は、撮影当時の心境や自身の青春時代の後悔、そして役柄に込めた思いを語り尽くした。
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冒頭、主人公の希代子を演じた當真あみは、舞台裏で観客の拍手を聞き「それだけでグッときていました」と感極まった様子を見せた。本作では高校生特有の揺れ動く自意識が生々しく描かれているが、自身と役の近さについて問われると、當真は劇中で同級生からの呼び名が急に“さん”づけに変わるシーンを挙げ、学生特有の人間関係の流動性や残酷さについて「鳥肌が立ちました」と振り返った。
これに対し吉田浩太監督は「親密な関係から一気に距離ができる残酷さは演出上、特に意識しました」と語った。クラスのリーダー格・恭子を演じた南琴奈もこのシーンに共感し、仲良くなった直後に敵対関係に変わる心理描写や、呼び方の変化がリアルで印象的だったと述べた。また、自由奔放な朱里を演じた中島セナは、「マイペースで自由を求め、縛られずに何かやりたいという自分の性格が朱里という役柄と重なりました」と分析。希代子の親友・奈津子を演じた平澤宏々路は、撮影現場の教室に漂っていた「和気あいあいとしつつも何とも言えない緊張感」について触れ、自身が役と近い年齢だったからこそ、そのリアルな空気感を肌で感じられたと明かした。
イベント中盤では、それぞれが演じた登場人物に今ならどんな言葉をかけるかという質問が投げかけられた。當真は、周囲に流されがちだった希代子に対し「その時感じて思ったものをとにかく信じていたらいいと思うんです。振り返って『あ、こうだったな』と思えるのも人生経験と捉えられるくらい大人になれば成長できている。だから希代子には、焦らずに自分の心のままに動いていてほしい」とエールを送った。中島は「朱里に助言をして素直に受け取るかというと、あまり助言が響かないタイプだと思っていて」としつつ、「独自の道を進むには責任が伴うもの。だから、自分の行動に責任を持つということは言ってあげたい」」と冷静に語った。一方、平澤は撮影終了時にプロデューサーから「大変だったでしょう」と声をかけられて涙したエピソードを披露。「その言葉こそが孤独を感じていた奈津子の救いになったと思う。だから私は“大変だったね、苦しかったよね”と声をかけたい」と語った。南さんは、強がって弱さを見せない恭子に対し、自身の学生時代と重ね合わせながら「もう少し肩の力を抜いて素直になってもいいよ」と伝え、抱きしめてあげたいと優しさを見せた。
この日、キャスト4人は、當真=赤、中島=青、平澤=オレンジ、南=ピンクと、それぞれのキャラクターのイメージカラーをワンポイントにあしらった衣装やアクセサリーを身につけ登壇。吉田監督は、朱里の「青」は自由の象徴であり、希代子が着る「赤」は朱里への憧れと愛憎の反転を表現していると解説。さらに恭子の「ピンク」の世界に入っていくことや、大学生になって森ちゃん(奈津子)が「オレンジ」を着ているのは、自身の色を見つけていることや、希代子に対しての「自分の色をみつけなさい」といったメッセージが含まれていることなど、色が物語の心情変化を表していることが明かされた。
これに対し、當真自身は情熱的なイメージのある「赤」が好きだと語り、中島は朱里と同じく寒色系の「青」を自身のイメージカラーに挙げた。平澤は淡い水色や紫に惹かれるものの、オーディションでは「白と黒」を着ることが多いという裏話を披露。南も自身の好きな色として「水色」を挙げ、撮影終了時に贈られた花束も水色だったと笑顔を見せた。
作品のテーマにちなみ「取り返しのつかないこと」や「今なら絶対にやらないこと」を問われると、会場は和やかな雰囲気に包まれた。當真は「中学時代の部活動で日焼け止めを塗らなかったことをとても後悔しています」と苦笑いを浮かべ、「これから大人になる私にいろいろ言われそうなので、徹底しようと思っています」とコメント。中島は「毎日が取り返しのつかないことの連続」と前置きしつつ、「いいことも悪いことも、絶対に取り戻すことはできないし、元の形で戻ってくることはない。日々の一瞬一瞬を大切にしたい」とポジティブな姿勢を示した。平澤は「中学受験の際にもう少し勉強しておけばよかった」と述懐。「あの時サボらなかったら、今とは違う道があったかもしれない。でもあの時サボったからこそ、今の仲間と出会えたりもしたわけで、そういう意味ではあの時サボってよかったのかも」と現在の出会いに感謝を示した。南さんは学生時代、自分で前髪や眉毛をカットして失敗し、ガタガタの状態で登校していたという可愛らしい失敗談を披露。吉田監督は中学時代、学校をサボった友人を自宅に匿ったものの親に見つかって怒られたというエピソードで会場の笑いを誘った。
舞台挨拶の最後には、登壇者を代表して中島セナ、當真あみ、吉田浩太監督が観客に向けてメッセージを送った。
中島は、本作が大人にとってはかつての学生時代の痛みや楽しさを想起させるものであり、現役の学生にとっては「今どういう風に過ごしているのか」を自問するきっかけになると分析。その上で「映画を見て何か感じてくれたことがあったら嬉しいです」と観客に語りかけた。
當真は、登場人物たちが何かに焦り、苦しみながらも、周囲に気を取られて自分自身が見えなくなっている姿に言及した。當真は、そうした状況は自分自身や観客の日々にも重なる部分があると指摘し、「自分の心の声を一番に大事にしてほしい」と力強く訴えた。そして、この作品を見た人々が自分の人生を大切に過ごすことへの願いを込め、挨拶を結んだ。
最後にマイクを握った吉田浩太監督は、劇中の重要アイテムである「青いノート」につけられた一本の傷について触れ、それこそが「この映画のテーマだ」と明かした。監督は「人間誰しもああいう傷が心に生まれる」と語り、観客に対して映画を単に客観的な物語として見るのではなく、自分自身の心の傷や体験と重ね合わせ、当事者として受け止めてほしいと呼びかけた。
映画『終点のあの子』
テアトル新宿ほかにて全国公開中


