『野球どアホウ未亡人』でカルト的な人気を得た小野峻志監督の商業デビュー作となる『翔んだタックル大旋風』が、いよいよ12月26日より公開となる。ホラー作と思いきや、ラブコメ、スポコンの要素も混ぜ込まれ、予想のつかないラストを迎える奇妙奇天烈な仕上がりとなっている作品だ。ここでは、そんな作風の中で、主人公・秋子を華麗に演じた吉田伶香にインタビュー。役作りやたいへんだったという現場の雰囲気を聞いた。

――主演作の完成おめでとうございます。すごい映画ですね。80年代のめちゃくちゃさ加減があって楽しめました。
 ありがとうございます。そうですよね。あらゆる意味ですごい映画だと思います。

――出演が決まった時、これは何の映画だと思いました。
 一応、ホラー作と聞いていたのですが、台本を読んでも、本当にわけが分からなかったです。断るという選択肢はなかったんですけど、これ、私にやれるのかな、背負い切れるのかなっていう気持ちも強くて、逃げたくなりました。

――役自体は、作って演じられると思ったのですか。
 ぶっつけ本番じゃないですけど、監督が現場で一緒に作り上げましょうって言ってくださったので、私はもうついて行きます、っていう気持ちで、現場に入りました。もちろん、ある程度は秋子を作って持っていくんですけど、きっとそれは全く無意味になると想定していました。

――結局、それ(役作り)は無意味だったのですか。
 監督と解釈が違うということはなかったので、ある程度は用意していったものでできましたけど、ずっと手探り状態で、(撮影が)終わっても、完璧にできたとは一切思わなかったし、本当に完成するのかな、大丈夫なのかなって思っていました。監督ご自身も“僕にもどういうものが出来上がるのか、今は分からないのですが、信じています”と仰っていたので、私も監督を信じていますと返して、終わりました。

――それは、すごいですね。
 やる前も、やっている時も、終わってからも、正解というか、正解なんてないと思うんですけど、これで良いのか分からずに走りきった、という感じです。

画像1: 予想の斜め上を行く比類なき痛快作『翔んだタックル大旋風』が公開へ。主演「吉田伶香」は、「くだらなさが全開なので、考えずに、感じてほしい」

――そうやって映画を作るのは初めてですよね。
 普通なら、ある程度は本読みとか、衣装合わせの時に固めていくんですけど、ここまで、リアリティを求めない演技は初めてでした。これまでなら、シリアスならシリアスな演技を、ホラーならどれだけ怯えられるかや、息遣いをどれだけやるかなど、そういうリアリティを求められるので、私は、それを表現するお芝居を頑張ろう、成長しようと思ってきたのですが、それらを全部なしにするような感覚の作品でした。今まで積み上げてきたものを全部なしにして、ホラーだけど怯えていないし、本当なら恐怖で尻込みするところを、(敵に)立ち向かっちゃったりして! でも、怯えるところもあったりするので、もう、私が持っているものを継ぎ接ぎしてどうにかなるものではない、と思いながらやっていました。まったく新しい感覚でした。

――エチュードというか、アドリブみたいな感じですか。
 いえ、アドリブは一切なかったです。

――台本通り?
 はい、全部台本通りでした。アドリブは一個もなかったと思います。

――では、あれが正解なんですね。
 そうです。監督が作り上げたものです。

――完成した映像を観ていかがでした?
 演出・編集ってすごいなって思いました(笑)。自分がやったものと全く、全く違うものを見ているんじゃないかっていうぐらいの気持ちになって、やっている時はホラーというか、ホラー&スポコンに、ラブコメの要素がちょっとある感じでしたけど、観たら、笑っちゃいました。演じているから笑えたのか、観てくださるみなさんも笑えるのかは分かりませんけど、私は結構何カ所も笑っちゃいました。

――導入部ではホラーというより、ラブコメ・スポコンなのかなと思いましたけど、後半に行くにつれて、ホラー感が出てきました。
 そうですよね。私も、そう思いました。

――そうした展開は、台本を読んだ時点でイメージつきましたか。
 いやぁ、全然つかなかったです。普通は現場に行って、その場所に合わせて動きがつくので、予めの想像と違うことはありますけど、本作の場合はあまりにも想像がつかなくて、とりあえずセリフだけを入れようと思っていました。変に情景を想像して、自分で(芝居を)固めちゃうと、おそらく(現場合わせの)応用が利かなくなるので、セリフだけ入れて、あとは現場で合わせようと思っていました。

――そんなに大きくは変わらなかった。
 そうなんですけど、初日にはあまり感情の起伏のあるシーンはなく、ひたすらトレーニングとかタックル練習をしているシーンの撮影だったので……

――えっ、いきなりそこから!
 そうなんですよ、走ったりタックルの練習をするシーンをずっと撮っていて。アメフトの先生が来てくださったので、普通に“こうしてください”“こうですか”って教えてもらいながら練習しているところ(芝居をしていない)も撮っていて、こっちも、いつまでやるんだろうって思いながら、ずっとタックルの練習をしていたんです。

画像2: 予想の斜め上を行く比類なき痛快作『翔んだタックル大旋風』が公開へ。主演「吉田伶香」は、「くだらなさが全開なので、考えずに、感じてほしい」

 それを延々と撮影しているので、どんな風にどこで使うんだろうって思いながら、言われるがままに練習をしていました。それもあって、練習のリアリティさは出ていたと思いますけど、初日からそういう感じでしたから、役作りや芝居の難しさを感じることはなかったです。初日から、終盤の山場の撮影があったら、どうなっていたか分からないですね。

――主演です、ホラーですと聞かされて、初日からタックルの練習をする現場はどうでしたか。
 違和感よりも、筋肉痛がすごかったです。初日からこれだと、撮了まで体がもつのかなって、心配になりました。撮影は初夏に始まったので、日中は結構暑かったこともあり、ちょっと早い夏バテをしてしまって。お腹が空いているのに、ご飯が食べられなくなってしまったので、この状態で撮影が続いたらめちゃくちゃ痩せるかもと思いましたけど、まあ、たいへんだったのは初日だけで、なんとか体力的に持ちこたえました。

――物語の展開も、まったく読めませんでした。
 不思議な話ですし、もう、考えたらダメなんですよ。本当ならこうなるんじゃないのとか思い始めたら、この作品は楽しめません。

――一応お聞きしますが、セリフを入れている段階での秋子の印象、イメージはどういうものでしたか。
 自分の欲望に素直な子だと感じていました。後半に行くにしたがって、理解しがたい行動とか、言動が多くなりますけど、そういうサディスティックな人もいるな、というぐらいの感じというか、方向性を考えていました。もう、理解しようとしたらダメだと思っていました。自分とは切り離して、秋子はそういう子なんだと考えていました。

画像3: 予想の斜め上を行く比類なき痛快作『翔んだタックル大旋風』が公開へ。主演「吉田伶香」は、「くだらなさが全開なので、考えずに、感じてほしい」

――前回、『こわれること いきること』のインタビューでお話を伺った際、シーンの繋がりの感情の状態を大事にしていて、たとえば70%とか80%と覚えておいて、次のシーンの撮影の時に、その状態で表現して感情量が繋がるようにしていると仰っていました。今回は、どうだったのでしょう。
 全くなかったですね(笑)。基本、映画って順撮りではないので、いつもはそこ(感情の繋がり具合)を一番大事にしているんですけど、今回に関しては、感情の繋がりがないと言ったら変ですけど、怯えていたのに、次のシーンでは全然平気になっているやんっていうのが結構あったんです。それも監督と話し合って、普通ならこのぐらい怯えると思うんですけどと聞くと、いや、ここからはもう、秋子は吉岡さんのことしか考えてないから怯えなくていいです、という感じで。私は、はい分かりました、と答えてやっていました。

――たいへんでしたね。個人的には、多重人格なのかなって思っていました。
 感情の繋がりを全く考えなくてよかったので、その意味では、演じる上での重荷が一つ取れたと思います。まあ、いろいろと大変ではありましたけど。

――途中の発言や、あの写真を見ると、サイコっぽい印象も受けました。
 そうですよね、私も思いました。現場でそれを見た時に、怖かったです。

――その写真のシーンもそうですけど、途中から暴走が始まって、展開がまったく読めなくなりました。
 そうです、考えたら終わりです。考えてはいけないんです(笑)。感じてください。

――かと思えば、冒頭にお聞きしたスポコン展開になるし(笑)。
 絶対に意味のない練習ですよね。

――終盤にはタイトルにもなっている「タックル」するシーンもありました。
 そのシーンで難しかったのが、タックルを寸止めしないといけないことなんです。編集するから、思いっきり走ってと言われたんですけど、その状態で寸止めしないといけなかったので、もう、たいへんというか難しかったです。すごく覚えています。

――ちなみに、アメフトに興味は持ちましたか?
 まったく(笑)。やったら絶対に怪我すると思ったので、私はもう勘弁してほしいです。逆に、選手の方はすごいんだなって感動しました。

画像4: 予想の斜め上を行く比類なき痛快作『翔んだタックル大旋風』が公開へ。主演「吉田伶香」は、「くだらなさが全開なので、考えずに、感じてほしい」

――本作では、主題歌も担当(歌唱)されています。往年のキャンディーズやスケバン刑事を思い出しました。
 どちらも知らないんですけど、オマージュしているとは聞きました。でも、歌うことは好きですけど、上手さとは比例しないというか、得意ではないので、今後歌うことは多分ないと思います。

――歌唱のオファーが来た時は?
 有り難いお話ではありましたけど、最初は、「私で大丈夫なんですか」って断ったんです。でも、せっかくなのでと仰っていただいたので、「うまくないですよ。本当にいいんですか」ってお返事して、最終的に歌うことになりました。

――歌は、舞台挨拶とか、どこかで聞けるのでしょうか?
 いえ、やりません、絶対にやりません。絶対にやらないです、絶対に。もうそれだけはNGです。許してください。やっぱり、自分の歌声って聞いてられないです。

――80年代だったら、ランキングの歌番組への出演もあっただろうと思います。
 いやいやいや、今の時代で良かったです。

――さて、この作品に出演しての感想をお願いします。また、自身の成長につながったことなどはありましたか?
 まず、自分の成長につながった部分で言うと、スタッフ・キャストの側から“くだらない”って言っちゃう映画なんて、そうそうできるものじゃないので、なかなか出会うことのできない作品であり、普段はまず演じられないような役をやらせていただいたことで、私の中で新しい引き出しが一つ増えました。当日まで全体像が分からない状態で現場に行くことなんてまずないので、本当にいい経験になりました。

 あとは、出演している私が分からないのですから、観客のみなさんもきっと、最後まで何を観ているのか分からないと思うんです。だから、考えたらダメなんです。本当に“くだらない映画”を観に行くっていう気持ちで来てほしいです。そして、ホラーかと思いきや、最後には思いもよらないところに連れていってくれる映画になっているので、そういう気持ちで観に来てほしいです。お願いします。

――監督がまた、同じテイストの作品を創るとなったら、オファーは受けますか。
 また出ます、出たいです、ぜひ。新しい世界に連れて行ってくれるので、監督について行きます。

画像5: 予想の斜め上を行く比類なき痛快作『翔んだタックル大旋風』が公開へ。主演「吉田伶香」は、「くだらなさが全開なので、考えずに、感じてほしい」

――最後に、年末のインタビューですので今後・来年の抱負をお願いします。
 来年も引き続き、お芝居を極めていきたいです。芝居の面ではさきほどお話ししたように、リアリティを求めていますけど、これまでは、そういうものに縛られていたというか、枠に囚われていた部分もあったように思います。本作に出演してそれが見事に砕けたので、それも一つの縁だなぁと思いました。来年は、サイコパスを含め、自分の役の幅を広げられるような役を演じたいです。あとは、若いうちに学生服も着ておきたいですね。

――今日は、ありがとうございました。

映画『翔んだタックル大旋風』

2025年12月26日(金)より テアトル新宿 ほかにて公開!

画像: 映画『翔んだタックル大旋風』

<キャスト>
吉田伶香 / 平野宏周 夏海 森山みつき 藤田健彦 水石亜飛夢 / 金子隼也 / 佐野史郎

<スタッフ>
監督・脚本:小野峻志 主題歌:「恋の危険タックル」タックル三人娘(吉田伶香・夏海・森山みつき) プロデューサー:長田安正 くれい響 製作:BBB 制作:UE 配給:ユナイテッドエンタテインメント
(C)2025『翔んだタックル大旋風』製作委員会

●吉田伶香 オフィシャルサイト
https://blue-label.jp/management/ryoka-yoshida/

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