アメリカはジョージア州アトランタに本拠を置くEmpire Earsの代表作「ODIN」が「MKII」に進化。ODIN(オーディン)とはかつてゲルマン人が広く信仰した神のことだ。神話をモチーフとした「Olympus」シリーズのフラッグシップモデルというステイタスにふさわしい、24K金メッキ仕上げが与えられている。

 その「ODIN MKII」は、4つの異なる方式のドライバー(低域用がダイナミック型×2、中〜高域用がBAドライバー×5、高域用に静電型×2、振動用として骨伝導×2)を計11基搭載する。筐体には6061-T6航空宇宙グレードアルミニウムシャーシを使い、重要な内部部品と音響経路に独自のアンチレゾナンスコーティングを施したARC(アンチ・レゾナンス・コントロール)も採用している。まさに、新たなハイエンドイヤホンの登場だ。

ユニバーサルIEM:
Empire Ears ODIN MKII
 ¥693,000(税込)

画像1: “神の名” を冠したEmpire EarsのユニバーサルIEM「ODIN MKII」は、“演奏者が曲に込めた想い”  まで見事に再現する。麻倉怜士さんが、詳細インプレッションをお届け!

●形式:密閉型
●使用ドライバー:W9+ダイナミックドライバー×2、高精度ミッドレンジBAドライバー×2、高域用BAドライバー×3、EIVEC MKII静電ドライバー×2、W10骨伝導ドライバー×2
●再生周波数特性:5Hz〜100kHz
●感度:105dB@1kHz、1mW
●インピーダンス:2.7Ω@1kHz
●素材/デザイン:6061-T6航空宇宙グレードアルミニウムシャーシ/24K金メッキフェイスプレート
●ケーブル:独自カスタムメイド4芯ケーブル「KVASIR」(約120cm)
●コネクター:IEM 2pin 0.78mm(埋め込み式)
●プラグ:4.4mmバランス(ストレート)
※付属品:4.4mmバランスケーブル、Final Eタイプ シリコンイヤーピース(XS/S/M/L/XL)、クリーニングツール、マイクロファイバークロス、ブラックレザーODINケース

画像2: “神の名” を冠したEmpire EarsのユニバーサルIEM「ODIN MKII」は、“演奏者が曲に込めた想い”  まで見事に再現する。麻倉怜士さんが、詳細インプレッションをお届け!

 「ODIN MKII」は、同ブランドの人気モデル「ODIN」から昇華/発展させて新たに生まれ変わったハイエンドIEM。デュアル「W9+」(WEAPON9+)ダイナミックドライバー、デュアル高精度ミッドレンジBAドライバーと高域用BAドライバー3基、EIVEC MKIIを搭載したデュアル静電ドライバー、デュアル「W10」(WEAPON 10)骨伝導ドライバーという計11ドライバーを搭載。それをアルミ製ボディに収納している。

画像: ODIN MKIIの内部構造。左からデュアル静電ドライバー、デュアル高精度ミッドレンジBAドライバーと高域用BAドライバー3基、デュアル「W9+」(WEAPON 9+)ダイナミックドライバーが並んでいる

ODIN MKIIの内部構造。左からデュアル静電ドライバー、デュアル高精度ミッドレンジBAドライバーと高域用BAドライバー3基、デュアル「W9+」(WEAPON 9+)ダイナミックドライバーが並んでいる

 特長的なのは骨伝導ドライバーも搭載している点で、空気伝導と骨伝導の両方の経路を通じて同時にエネルギーを伝達してくれる。この仕組みはDCA(デュアルコンダクションアーキテクチャー)とよばれる、Empire Ears独自の設計技術だそうだ。

画像: 独自のDCA(デュアルコンダクション・アークテクチャー)を搭載する。これは、空気電動(エアー・コンダクション)と骨伝導(ボーン・コンダクション)の両方の経路を通じて同時にエネルギーを伝送することで、両者の長所を引き出す技術だ

独自のDCA(デュアルコンダクション・アークテクチャー)を搭載する。これは、空気電動(エアー・コンダクション)と骨伝導(ボーン・コンダクション)の両方の経路を通じて同時にエネルギーを伝送することで、両者の長所を引き出す技術だ

 試聴はAstell&Kernの「A&ultima SP3000T Copper」(モードは真空管/オーバー・サンプリング)と組み合わせて行った。

 試聴曲は、まずUAレコードの情家みえ『エトレーヌ』から「チーク・トウ・チーク」。冒頭のアコースティック・ベースの音階感や進行感、ヴォーカルの質感、表情、ピアノの躍動感、叙情感……などを聴く。ヴォーカルではもうひとつレベッカ・ピジョン「スパニッシュ・ハーレム」。静謐な音場におけるヴォーカル、ピアノ、パーカッションの再現性をチェックする。

 オーケストラ作品ではカール・ベーム指揮ベルリン・フィルによる、『モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」第4楽章』の冒頭部分。音楽の駆動性、進行力の勁さ、弱音から強音のまでのDレンジ感、カンタービレの歌謡性……などを聴く。

情家みえ『エトレーヌ』から「チーク・トゥ・チーク」(96kHz/24ビット)

 UAレコードの情家みえ初代アルバムからの「チーク・トゥ・チーク」ハイレゾ音源は、ひじょうに明瞭で快速的に進行。情報量の細やかさ、微小信号の躍動感から大振幅の量感まで、音楽の魅力、歌の魅力をたっぷり味わわせてくれる。

 この音源の冒頭は、ピアノ、アコースティック・ベース、ドラムのトリオ演奏。実に明瞭で、明確に奏される。時間軸的にキレ味が鋭く、ハイスピード。まったくもたれずに、立ち上がり/立ち下がりがたいへんシャープ。それも単にナイフエッジな鋭さだけではなく、バランスのよさや稠密さも同時に保つ。

 ヴォーカルの粒立ちは細やかにして、粒の中に多彩な色を持つ。それはつまり情家の歌い手としての感情表現、ニュアンスの作り方がていねいに再現されているということだ。

画像: イヤホン本体は航空宇宙グレードの6061-T6アルミニウムをCNC加工し、さらにマットブラックのアルマイト加工が施されている。フェイスプレートとロゴには24K金メッキが施され、純粋さ、威信、永続性を表現している

イヤホン本体は航空宇宙グレードの6061-T6アルミニウムをCNC加工し、さらにマットブラックのアルマイト加工が施されている。フェイスプレートとロゴには24K金メッキが施され、純粋さ、威信、永続性を表現している

 「チーク・トウ・チーク」には、“Heaven” という歌詞が2回出てくる。最初はちょっとざらついた、雑味を入れたような感じで、2回目は優しい。それは録音の狙いそのものだが、ODIN MKIIはちゃんと違いを表現している。

 そもそもアーヴィング・バーリンの作詞・作曲になる「チーク・トウ・チーク」は、邦題が「頬よせて」、もしくは「頬に頬よせて」であり、踊っている時に頬と頬をくっつけるのが、“まるで天国にいるよう” という幸福な内容だ。冒頭の “Heaven” は接触する前で、ちょっとよそよそしい感じ。2番目はすごく親密な感じで、スキンタッチの喜びが溢れている。そんな違いをODIN MKIIは上手く描き分けている。

 情家の歌唱の特徴は、伸ばしに感情を入れることだ。英語の歌詞で言うと “Speak”とか “I see” など、音を伸ばす部分に細やかなビブラートが付き、なおかつ感情が加わり、というプロセスが鮮明に聴けた。

 ピアノはあの山本剛。彼は情家と何回もセッションをしているので、息が合い、歌っている間の合いの手もオブリガートも絶妙。でもそれはまだ抑制気味で、ソロになった途端に突然、熱量が上がる。その違いというか、抑制感と全力投球感の違いもよく出している。

 ピアニストとしての指使いの明快さと、醸し出す音の輪郭の強さもきちんと表現。山本の演奏はクールさと情緒感と叙情感が両立。名人ならではのガッツがあり、音の意味合いや、音が持っているこのピアニストならではの美質が、聴けた。

 ODIN MKIIは、一言で言ってひじょうに情報量が多く、しかも包み込むような音楽性がある。音のビジュアル性もポイント。音像的に楽器やヴォーカルがあるべき位置から正しく出音している様子が、目に見える。私はこの楽曲は何千回と聴いているが、そうした意味でイメージが新鮮だった。

画像: 麻倉さんが愛用しているAstell&Kernのポータブルプレーヤー「A&ultima SP3000T Copper」とバランスケーブルで接続して、様々なハイレゾファイルを試聴してもらった

麻倉さんが愛用しているAstell&Kernのポータブルプレーヤー「A&ultima SP3000T Copper」とバランスケーブルで接続して、様々なハイレゾファイルを試聴してもらった

レベッカ・ピジョン「スパニッシュ・ハーレム」(44.1kHz/16ビット)

 もう1曲、超定番のレベッカ・ピジョン「スパニッシュ・ハーレム」。まずS/Nがすごく良い! ベースの分散和音が始まるのはまさに無音から。正確に中央に定位し、音階感が明瞭。エッジがはっきり出て、ひとつひとつの音が持っている剛性感が明確だ。

 ヴォーカルの質感は情家とまったく違う。レベッカ・ピジョンはちょっとそっけないけど、ラブリーな感じで、ゆっくりと流しているが、内には勢いが横溢するという声の質感を、ODIN MKIIは上手く再現している。粒立ち感がひじょうに細やかなので、レベッカが持っている声の特質、感情のせめぎ合いのような部分が、こと細かに聴き取れた。

 本曲はダイナミックレンジが広大。最初は静かに始まり、次第に楽器が加わり、最後には絢爛豪華に盛りあがる。ピアノは最初に私、入っていいですか? としずしずと加わり、時間経過と共に、自信を付け、大胆になる。そんな、時を経て出てくる音の抑揚感、音楽の躍動感がとてもリアルに聴けた。

 もうひとつはヴォーカルの親密性。情家の声は若干離れたところから届くので、感情は感じるが、個人的な親しみはいまひとつ。レベッカの場合は、オンマイクで、なおかつ囁くような歌い方なので、ひじょうにインティメット性を感じる。これはイヤホンの、それもハイクォリティ試聴の美点だ。スピーカーだと親密さというよりは、空間感、スケール感が主体になるが、イヤホンでは文字通り耳の中で囁いているので、その音楽が持っている、音楽的な特質、特徴がダイレクトに感じられる。親密性、一体感が楽しい。

 音場も透明で、見渡しがクリアー。センターに立ち上がりの鋭いパーカッション、右にチェロ、左バイオリン、センターにピアノが入って、ヴォーカルも……という澄んだ空気の中から、清涼な音楽が聞こえてくるのは、まさに “音場鑑賞” の醍醐味だ。

画像: ODIN MKIIは埋め込み式IEM 2pinコネクターを初搭載した。付属ケーブルは独自のカスタムメイド「KVASIR」(クヴァシール)で、4本の金、銀、銅の導体が、ユニークなクワッドブリッドの形状で編み込まれている

ODIN MKIIは埋め込み式IEM 2pinコネクターを初搭載した。付属ケーブルは独自のカスタムメイド「KVASIR」(クヴァシール)で、4本の金、銀、銅の導体が、ユニークなクワッドブリッドの形状で編み込まれている

『モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」第4楽章』
カール・ベーム指揮ベルリン・フィル(44.1kHz/16ビット)

 オーケストラ作品としてカール・ベームがベルリン・フィルを指揮した『モーツァルト:交響曲第41番「ジュピター」第4楽章』。堂々とした、明瞭感と剛性感の高い演奏であり、録音だ。ODIN MKIIはそうした本作の特徴を、あますところなく、再現してくれた。骨格感がひじょうに重厚で、構成も明確にして、推進力が強靭。音の輪郭がくっきりと刻まれ、なおかつ分解能が高く、ディテイルの微視と全体量感の巨視とが、うまくバランスしている。

 本イヤホンの明瞭性、情報量再現のていねいさ、グラデーションの緻密さ……という美質は、本演奏の機微を、ひじょうに細やかに描き出す。明瞭なる音の流れの中での各楽器の音色が明確。スコアの隅々まで、ビジュアル的によく見える。ベームがこの曲をどう解釈したか、どうやって音楽としての実体感を持たせたかというところが、伝わってくる。

 本演奏は古典的な第1ヴァイオリンが左、第2ヴァイオリンが右の両翼配置で、チェロとコントラバスは右端だ。この各パートの位置が正確に分離して、再現されている。モーツァルトのスコアが面白いのは、この両翼配置を前提に作曲されていることだ。右の第2ヴァイオリンがリズムを刻むと、左の第1ヴァイオリンが軽快なオブリガードを奏し、センター奥の木管がチャーミングな合いの手を入れる……というスコアが狙う音位置のダイナミズムが、実に興奮的だ。ODIN MKIIは音場の中の位置関係を明瞭にして、各々の音進行を高解像に、臨場感豊かに見せ、聴かせる。

イヤーピース:AZLA SednaEarfit mithryl
¥4,400(税込、3サイズ1ペア)、¥3,300(税込、2サイズ1ペア)、¥3,300(税込、1サイズ2ペア)

画像3: “神の名” を冠したEmpire EarsのユニバーサルIEM「ODIN MKII」は、“演奏者が曲に込めた想い”  まで見事に再現する。麻倉怜士さんが、詳細インプレッションをお届け!

 米国製プレミアムLSR(リキッドシリコンラバー)素材と、金属アレルギーに強い外科医療で使用されるサージカルステンレス(SUS 316F)を音導コアに採用し、一体成型したイヤーチップ。ステンレス音導管の反響を利用することで、装着したイヤホンのサウンドに美しい響きと音色、広い空間表現を付加してくれる。

 プレミアムLSRは、優れた耐熱性、酸化抵抗性、表面張力、低温柔軟性を有し、良好な誘電体特性等の固有特性を持つ合成/弾性の重合体で、柔らかく低圧迫、程よい摩擦抵抗と固定力による落下防止、かゆみ等に対しての低刺激性、そして高い耐久性を高次元で実現する。

 耳に触れる部分に向かうほどシリコンの厚みが薄くなる、独自のテーパード型構造設計を採用していることで、低圧迫と高遮音性の両立を実現した。MS(直径11.9mm)、M(直径12.6mm)、ML(直径13.3mm)の3サイズ展開で、対応ノズル先端直径は4.5〜6mm。

画像: ODIN MKIIにSednaEarfit mithrilを取り付けた状態。透明なリキッドリリコンラバーの内側にサージカルステンレス製の音導コアが見える。ステンレス音導管の反響を利用することで、イヤホンのサウンドに美しい響きと音色、広い空間表現を付加できるそうだ

ODIN MKIIにSednaEarfit mithrilを取り付けた状態。透明なリキッドリリコンラバーの内側にサージカルステンレス製の音導コアが見える。ステンレス音導管の反響を利用することで、イヤホンのサウンドに美しい響きと音色、広い空間表現を付加できるそうだ

画像: www.aiuto-jp.co.jp
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イヤーピースをAZLA「SednaEarfit mithryl」に変更

 今回はODIN MKIIにAZLA「SednaEarfit mithryl」(セドナイヤーフィット・ミスリル、以下mithryl)を組み合わせたサウンドも検証している。AZLAは2017年に設立された韓国のイヤホンメーカー。本作はアメリカ製の医療用ステンレスによる音導コアと、医療用LSR (リキッド・シリコン・ラバー)を採用したイヤピースだ。

 ODIN MKII付属のイヤピース(Final Eタイプ)とは、まったく音が違う。付属のイヤピースは、ひじょうにバランスが良好。さまざまな音響要素がよい案配で調和し、レスポンスも的確で、音場の透明感も高い。

 mithrylの押しは、何と言っても解像感だ。ディテイルの再現性は、ひょっとしたら付属イヤーピースでは聴こえない音も聴こえてくるぐらいの勢いだ。音の粒子サイズも相当細かい。エッジの剛性感も高く、輪郭をはっきり与え、細かい音も出して、装着したイヤホンのサウンドに美しい響きと音色、広い空間表現を与えようという強い意思が開発陣にあったと聴いた。

 情家のヴォーカルも、ボディがくっきりと締まり、エッジもシャープ。それに比べ、付属イヤーピースは丸みや柔らかさを感じる。「チーク・トゥ・チーク」の劈頭、“Heaven” と言った時に、付属イヤーピースでは目の前に優しく近づいてくる印象だが、mithrylでは勢いよく、“私のことをもっとかまって” と積極的に迫り来る。ヴォーカル音像もリッチで、同時にボディの内側の筋肉に筋があり、鍛錬した結果が聴けるような剛性と緻密さが、あった。

 迫りくる音の迫力感、勢いが、音場の中にまさに羽ばたいている。透明な音場の中で、音の粒子の勢い、スピードが違う。私の個人的好みでは、付属イヤピースのウェルバランスが良いと思うが、はっきり、くっきり、ハイスピードで、なおかつ情報をぐんと出して迫りくる音が好きなユーザーには、mithrylは最適なイヤピースだ。楽曲に応じて使い分けると、音楽の楽しみが倍増する。

画像: 取材は麻倉さんの自宅オーディオルームで実施した。Empire Earsの輸入販売を手掛けている(株)アユート Audio事業部 プロダクトマーケティング 河野 亮さんに製品の詳細を説明いただいている

取材は麻倉さんの自宅オーディオルームで実施した。Empire Earsの輸入販売を手掛けている(株)アユート Audio事業部 プロダクトマーケティング 河野 亮さんに製品の詳細を説明いただいている

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