Chord Electronicsが2015年に発売した「Mojo」、さらにそれを再構想・再設計した「Mojo 2」(2022年)はハイエンド・ポータブルDACとして大きな注目を集めた。

 Mojo 2は、FPGAテクノロジーの進化とともに多彩な新機能を搭載。ロスレスDSP「UHD DSP」はフルトランスペアレント型処理により、音質を損なうことなく広帯域での総合的な音質調整を可能にした。これにより、ヘッドホンの種類や音源の特徴を問わず、高い互換性と柔軟性を実現している。

 そして今回、Mojo 2をさらに進化させた「Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)」(市場予想価格¥82,500後、12月19日発売)が登場した。

画像: Chord Electronicsから、「Mojo 2(4.4mm端子搭載モデル)」がデビュー。ハイエンド・ポータブルDACというジャンルを切り開いた製品が、さらに進化を果たす

 Mojo 2(4.4)は、従来の3.5mmヘッドホン出力に加えて4.4mmヘッドホン出力を搭載。4.4mm接続を検出した際には、前回使用時の音量・DSP・クロスフィード設定へ自動的に切り替わるメモリー機能も利用可能だ。4.4mm端子を持つイヤホン・ヘッドホンをそのまま接続できる利便性に加え、使用する端子ごとに最適な設定へ瞬時に復帰できるため、複数のイヤホン・ヘッドホンを使い分ける際の操作性が向上した。

 4.4mm端子は主にバランス駆動用として使われているが、Mojo 2(4.4)では “ヘッドホン出力としての4線式シングルエンド方式” を採用した。あくまで ヘッドホンをどのように駆動するのがもっとも理想的かという観点で選択されたという。

 そもそもMojo 2の中核となるPulse Array DACとディスクリート出力段は、シングルエンドでの動作に最適化されたアーキテクチャーだ。多数のパルスエレメントを組み合わせてアナログ信号を生成するこの方式は、単一基準点での精密動作、高度な時間軸制御、きわめて低いノイズフロアーを得意とするため、回路構成を複雑化させず、信号経路を可能な限り純度の高い形で維持することが重要になる。

画像: 左が3.5mm、右が4.4mmのヘッドホン出力端子

左が3.5mm、右が4.4mmのヘッドホン出力端子

 このDAC構造を前提にすると、左右で完全に独立したリターンを持たせ、シングルエンドのまま信号純度とチャンネル分離を向上させるという4線式シングルエンド方式が、もっとも合理的な選択だったそうだ。“バランス駆動の簡易版” ではなく、Pulse Array DACの性能を最大限に発揮させるための理にかなった構成と同社では説明している。

 そもそもMojo 2 は、「0.06Ωという低い出力インピーダンス」「123dBの優れたノイズ抑制」「30Ωで600mWという大出力」「118dBという高いチャンネルセパレーション性能」を備えており、Mojo 2(4.4)も、ヘッドホン駆動におけるバランス方式のメリットを上回る純度を、4線シングルエンド出力方式で実現していることになる(4.4mm 5極イヤホン/ヘッドホンにも対応)。

 FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ=書き込み可能な半導体チップ)には、カスタム仕様のXilinx(ザイリンクス)製Artix 7も採用された。S/PDIF入力、S/PDIFデコーディング、デジタルPLL、RAMバッファ、WTAフィルター、そしてパルスアレイDAC回路にいたるまで、すべてFPGAのプログラミングにより制御されている。

 またChord Electronicsを象徴するデジタル回路設計が、ロバート・ワッツが30年以上かけて開発したWTAフィルターとなる。D/A変換時の時間軸情報のタイミング精度を極限まで追求し、デジタルデータをFPGAに取り込んだうえで、本来A/D変換時に取り込まれたであろう元のアナログの波形を類推して補間することで、デジタル化される前のアナログの波形を高い精度で再現できるものだ。

画像: Mojo専用ストリーマー/サーバー「Poly」(別売)と組み合わせたイメージ

Mojo専用ストリーマー/サーバー「Poly」(別売)と組み合わせたイメージ

 オーバーサンプリングフィルターの演算精度を示すタップ長(数値が多いほど、精緻な処理が可能)も、Mojo 2(4.4)は40,960タップの16FS WTAフィルターを搭載、40個の208MHz DSPコアを並列に使用している。初段のWTAフィルターに続く2段目のリニアー・インターポレーション・フィルターにより、256FSまでオーバーサンプリングを行い、時間軸情報の再構築精度を向上させるという。

 さらにHugo 2で定評のあった「インテリジェントデスクトップモード」の改良版を搭載。インテリジェントデスクトップモードは、内蔵バッテリーを維持するために充電動作を自動的に最適化する機能(メニューボタンと充電表示LEDに紫色に表示)。改良版は、絶縁型バッテリーと電源ユニットの再設計により音質を損なうことなく動作し、フィルタリングとアイソレーションの改善も実現している。

 デジタル入力端子は、光/同軸デジタル、Micro USB、USB Type-Cの4系統を搭載。データ入力は最大でリニアPCM 768kHz/32ビット、DSD256のネイティブ再生に対応する。

 なおMojo 2(4.4)は、Mojo専用ストリーマー/サーバー「Poly」(別売、ファームウェアはVer.3.0.0以降)と互換性を有しているので、Polyとドッキングすることで、ハイレゾストリーミングやmicroSDカードスロット使用時の最大2Tバイトのソリッドステートライブラリー保存・再生が可能になるそうだ。

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