finalから、有線イヤホンのフラッグシップ「A10000」のエッセンスを投入し、“高音質”を謳うワイヤレスヘッドホン「UX5000」(32,800円 税込)が絶賛発売中だ。発売翌日の11月1日に開催されたオーディオイベント「ヘッドフォン祭」のfinalブースでは、展示・試聴コーナーが設けられており、同時発表の完全ワイヤレスイヤホンのフラッグシップ「TONALITE」と並ぶ注目を集めていた人気モデルだ。ここでは、発売後しばらく使ってみてのレビューを簡潔に紹介したい。
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先に結論を書いてしまえば、音楽用DAPと組み合わせた際の音質は、謳い文句通りの“高音質”が堪能でき、A10000で感じた繊細さや広い音空間、響きの豊かなボーカルなど、そのエッセンスを充分に受け継いだワイヤレスモデル、というものだ。

イヤーパッドは簡単に取り外せる
さて、まずはアプリと接続してアップデートや各種設定の確認から。UX5000用のアプリはなんと、Android13以上が対応ということで、これまでアプリ確認で使っていた「Xperia 1 II」(Android12)が使えないため、インタビューの文字起こしにしか使っていない(笑)「Pixcel 10」(こちらはAndroid16)と組み合わせている。
アプリ自体は写真のように簡単なもので、「ノイズキャンセル機能」「EQ機能」「マルチポイント機能」「アップデ―ト確認」しか項目がない。UX5000はLDACコーデックをサポートしているのだが、アプリでLDACをオンにする設定がないので、Android OSの「開発者向けオプション」から「Bluetoothオーディオコーデック」の中で「LDAC」を選択する。選択後は、「接続設定」の中のBluetoothの項目でLDACになっているか確認するといいだろう。しないとAACになってしまう。

「UX5000」用のスマホアプリ(Android用)。ノイキャンはオフにできる
コーデック確認、アップデート確認が終了したのち、しばらくはPixcel 10をプレーヤーにしていくつか楽曲を聴いてみたが(ノイズキャンセル機能はオフ)、音の繊細さや響きの豊かさは感じるものの、高域の伸びや音場の広さはもう一歩という印象。
そこで普段簡易確認に使っているXperia 1 IIに替えてみると、音が軽くなったので、上述した「開発者向けオプション」の中の「LDACコーデック:再生音質」を確認すると、「ベストエフォート」になっていたので、「音質重視」に変更する。機種にもよるが、LDACコーデックの場合、初期状態では「ベストエフォート」か「接続重視」になることが多いので、接続ごとに確認したい(あれ? こんな音質? と思ったらぜひ確認してほしい)。一応、スマホでテストする場合は、モバイルデータ:オフ、Wi-Fi:オフ、機内モード:オン、使わないアプリはオフ、で試聴しているのだが、ここでの音質はあまりよくなかったので、割愛する(Xperia 1 IIはもう引退かな?)。

LDACで接続していても、「ベストエフォート/接続優先」になっていることが多いので、接続ごとに確認したい。
気を取り直して、音楽用のDAPと接続すると、音質は激変。音に厚みが出てくるだけでなく、繊細さはもう一段向上し、使い古された言葉を使えば、ベールを一枚剥がしたよう。大きな音に隠れてしまいそうな微弱音もはっきりと聴こえてくるようになった。ボーカルも、おでこの少し後ろぐらいにスッと立ち上がり、声のニュアンスや響き、消え際の余韻まで充分に感じられる再現性となった。密閉型ということもあって、スマホ再生では低音が少し強めに(うるさく)出ていたが、DAP再生ではその質が変化し、重心の低い引き締まった量感のある低音となり、澄み切った高域再生と合わせ、厚みを備えたレンジの広いサウンドを聴かせてくれた。UX5000の能力を存分に楽しむには、組み合わせるプレーヤーも吟味してほしい。

右のカップ。中央の丸いのボタンが電源、音量用。下の楕円のボタンがノイキャンボタン。このノイキャンボタンは間違って触ってしまうことも多く、一度ノイキャンをオンにすると、ヘッドホンではオフにできない
その他、いくつかの機能も簡単にチェックしてみた。ノイキャンは謳い文句の通り、強すぎず、弱すぎずで、電車内では耳につくボーっという騒音(送風音など)をうまく消してくれる。一方で音質への影響は他社よりは少ないが多少はあり、ディテイル・高域再現へのダメージ、音空間の縮小を感じてしまう。ちなみに、アプリでノイキャンオフにしても、ヘッドホン本体でオンにできるが、その場合、ヘッドホンではオフにできないので、オフにする場合は、アプリと接続する必要がある。

有線接続は左のカップで行なう。艶消し、梨地の表面は、なかなかに高質感
付属ケーブルを使った有線接続も聴いてみたが、音量は少し小さくなり、高域や音場感、繊細さはかなり縮小するので、緊急時かゲーミング時(遅延を気にするコンテンツ)用と考えたほうがいいだろう。装着感については、記者の頭が大きいようで、側圧は強め。その分密着感が上がり、パッシブのノイキャンには効果がある。まあ、バンド部分のクッションはいいので痛くはならないが、側圧が強いなという感覚は残る。


収納ケースが付属する



