近年、耳を塞がずに好きな楽曲を楽しめるオープンタイプの完全ワイヤレスイヤホンが人気を集めています。振り返れば、ソニーモバイルの「Xperia Ear Duo(XEA20)」やambieの「AM-TW01」、骨伝導タイプのBoCo「earsopen」(こちらは有線タイプ)などから、コロナ禍を経て骨伝導式に注目が集まりました。それと合わせるように耳掛け式のワイヤレスイヤホン(骨伝導ではない)へ、そしてソニーの穴あきイヤホン「LinkBuds」(2022年)を経て、ファーウェイの「HUAWEI FreeClip」(2024年)が発売。これを機に、一気にイヤーカフ型の人気が高まり、各社から同タイプの製品が多数登場してくるようになりました。多く普及しているカナル型イヤホンに比べれば、耳を塞がずに使える利便性と、長時間装着していても違和感が少ないこと、さらには耳を飾るファッション アイテムにもなることなどが、ファンの支持を得ているのでしょう。
 ここでは、市場で人気のイヤーカフ型の完全ワイヤレスイヤホンに焦点を当てて10製品をピックアップ。オーディオ・ビジュアル評論家の鳥居一豊先生に製品レビューをお願いし、前・後編で紹介していきます。後編の今回は、Victor、ファーウェイ、SHOKZ、BUTTONS、BOSEという5メーカーの製品を取り上げます。どうぞ、お楽しみください。

●【試聴テスト】話題のイヤーカフタイプのオープン型イヤホン 主要モデルをプロが一気聴き!(前編)はコチラから

製品ラインアップ

・Victor「HA-NP1T」
・ファーウェイ「FREE Clip」
・SHOKZ「OPENDOTS ONE」
・BUTTONS「BUTTONS CLIP」
・Bose「Bose Ultra Open Earbuds」

Victor「HA-NP1T」

◉実売価格例(税込):¥19,800(通常カラー)、¥22,000(プレミアムカラー)

〈プロフィール〉
 Victorブランド初のイヤーカフ型イヤホン。登場は昨秋となるが、"音楽が聴けるアクセサリー"というキーワードに沿って、8色のカラーバリエーションと、金属っぽさを全面に押し出したブリッジ部分がファッション性を高めており、今なお高い人気を集めている。搭載ドライバーは10mm径のダイナミック型で、オープンタイプで不足しがちな低音を増強するモードや、音漏れ防止機能、マルチポイント接続(2台)、IPX4の防水機能、ゲーミングや動画視聴に便利な「低遅延モード」、スマホアプリ対応など、イヤーカフ型に求められる機能は網羅している。

〈主な仕様〉
・ドライバー:10mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC、AAC
・再生周波数帯域:20Hz~20,000Hz
・再生時間:最大8時間(本体のみ)/最大24時間(ケース併用)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX4
・公式サイト:HA-NP1T

〈デザイン&操作性〉
 ドライバー部は縦に長い水滴形で、クリップ部は横に長いこれまた水滴形という柔らかなフォルムのデザインが特徴。プレミアムカラーモデルのドライバー及びクリップ部は、光沢のあるパール塗装が施され、バンド部分にはメッキパーツがあしらわれるなど、アクセサリーを意識したデザインが目を惹く。操作性は、物理ボタンを備えることで、確実な操作を実現。ボタンのクリック感は軽快で、心地のよい操作を可能にしている。

〈装着性&音漏れ〉
 女性でも使いやすい小さなデザインというもこともあって、装着するとピタリと耳にハマってずれることもないなど、よく工夫された形状だ。音漏れも10cmほどの距離でほとんど聞こえなくなり、50cmも離れればまったく気にならない。コンパクトさと合わせて、デザインもオシャレだから、屋外でも気軽に使えそうだ。

画像: Victor「HA-NP1T」

〈サウンド〉
 音質的にはナチュラルで、特に声の自然な再現は好ましい。女性ボーカルの質感やニュアンスの再現にも優れる。クラシック音楽を聴くとちょっと低音が軽く感じられ、スケール感などが少し物足りないといった印象を受ける。また、男性ボーカルもクリアな音質ではあるものの、ほんの少し力強さが欲しくなってしまうといった感じだ。物足りない人は専用アプリに用意されている3つのサウンドモード(Normal、High、Bass)からBassをセレクトするといいだろう。パワフルなロックなどは少々苦手ながらも、ボーカルを主体とした曲は気持ちのよい音で楽しめる。軽快な使い勝手と合わせて気軽にいつでも使いたい人にオススメ。

ファーウェイ「FREE Clip」

◉実売価格例(税込):¥21,800

〈主な仕様〉
・ドライバー:10.8mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC、AAC、L2HC*
・再生周波数帯域:20Hz~20,000Hz
・再生時間:最大8時間(本体のみ)/最大36時間(ケース併用)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IP54
・公式サイト:FREE Clip
*「L2HC」で試聴するには、ファーウェイ製のスマートフォンで、EMUI 13.0以降のスマートフォンが必要。

〈デザイン&操作性〉
 球形のドライバー部と円筒形のクリップ部の組み合わせたスタイルで、バンド部分には形状記憶合金を使用して装着感を高める作りとなっている。操作性は、タッチセンサー式だが、反応も良く、曲送りや一時停止、再生のほか、通話や音量調整もタッチで操作できる。軽くタッチするだけで操作が行なえるので使い勝手がすこぶる良い。

〈装着性&音漏れ〉
 装着性は、耳への収まりがよくズレにくいうえに圧迫感がほどんどない。フレキシブルなバンドのおかげもあって耳に馴染みやすく、装着していることを忘れてしまうほどの自然な着け心地が好印象。音漏れは10cm程の距離では少し聞こえるものの、50cm程度離れてしまえばほとんど聞こえることはない。元気のよい音なので少し音漏れが多めに感じるが、実用上は問題ないレベルだろう。

画像: ファーウェイ「FREE Clip」

〈サウンド〉
 音質的には、広がりだけでなく、空間感のある音場はなかなかの出来。クラシックを聴いても、低域からしっかりとした力強さを感じるサウンドを奏でてくれるので、スケール感や迫力が出る。音色はニュートラルで、金管楽器や木管楽器の鳴らし分けも実に上手い。フォルティッシモのぐっと盛り上がる部分も力強さを感じるし、ピアニッシモの繊細な演奏でも音が周囲の音に埋もれにくいのも美点だ。ボーカルを聴いても声質の違いをきちんと再現できているし、抑揚や歌唱の違いもきれいに描かれている。躍動感のあるパワフルな音なので、どんな曲を聴いても満足度は高い。音質重視の人にオススメだが、装着感もなかなか優秀なので、イヤーカフ型の軽快さを求めながら音質にもこだわりたいという欲張りな人に最適だろう。

SHOKZ「OPENDOTS ONE」

◉実売価格例(税込):¥27,880

〈プロフィール〉
 SHOKZと言えば骨伝導、耳掛け式というイメージを塗り替えた、ブランド初のイヤーカフ型モデル。ファーウェイと同じくクラファンからスタートし、3億円を超える支援を達成した。球体と円柱(後ろに来るパーツ)を組み合わせた構造で、装着時にイヤホンをしっかりと装着・固定できるのがポイント。音漏れ防止機能もしっかりと装備している。搭載ドライバーはデュアル仕様のダイナミック型で、デュアル=二つのユニットを配置することで、16mm相当のユニットと同等の音響性能を実現しているという。機能面での特徴は「Dolby Audio」に対応したこと。いわゆる音声モードのようなもので、再生するコンテンツの臨場感をアップしてくれる。アプリからオン/オフするタイプだ。

〈仕様スペック〉
・ドライバー:16mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC、AAC
・再生周波数帯域:100Hz~20,000Hz
・再生時間:最大10時間(本体のみ)/最大40時間(ケース併用)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IP54
・公式サイト:OPENDOTS ONE

〈デザイン&操作性〉
 SHOKZの得意とするオープン型で、イヤーカフスタイルを組み合わせたモデル。球形ドライバーと円筒形クリップ部の構成となっていて、ドライバーは2個のユニットを対向配置したデュアルドライバーで構成されている。主に肌に触れるバンド、耳穴、イヤーカフは、シリコンで覆われており、触り心地がとてもよい。カラーは、ブラックとグレーの2色が用意されており、グレーのモデルにいたっては、アクセサリー感覚で身に着けられそうなカラーリングになっている。操作性は、タッチセンサー式ながら、しっかりと反応してくれるので、とても楽に操作が行なえる。

〈装着性&音漏れ〉
 装着感は軽快でややゆるいフィット感ながら、頭を強く振っても外れてしまうようなことはなかった。後ろを向いた時などほんの少し耳に当たる感じはあるものの気になるレベルではない。音漏れは10cmの至近距離では少し聞こえるものの、50cmの距離ではほぼ気にならない。極端に大音量で聴くようなことがなければ問題はなさそうだ。

画像: SHOKZ「OPENDOTS ONE」

〈サウンド〉
 低音もしっかりと出ておりスケール感のある再生音で、全体的に力強いサウンドが楽しめる。クラシックでも各楽器が一斉に音を出すような部分でも音が混濁することなく、パワフルで細部まで鮮明な音を再現する。弱音部などでも音が痩せるようなことはなく、クリアに聴けるのも好ましい。低音の実力も優秀で大太鼓の音もそれらしい迫力がある。ボーカルはクリアでニュアンスもよく出ている。低音を含めて力強いサウンドが持ち味で、ロックなどのパワフルなサウンドも存分に楽しめる実力がある。オープン型は低音が足りないことで敬遠している人もいるがそんな人にこそ試してみてほしいモデルだ。

BUTTONS「BUTTONS CLIP」

◉実売価格例(税込):¥33,000

〈プロフィール〉
 アメリカはロサンゼルスにあるテック企業BUTTONSがリリースしたイヤーカフ型モデル。アメリカという土地柄と、創業者の一人がアーティストということもあってか、ゴールド仕上げのモデルは、まさに"ゴージャス"という形容がぴったりの仕上がりに。特徴はAI機能の活用にあり、専用のAIエージェント「HALI」を音声操作で呼び出せば、再生操作やスケジュール管理、翻訳などが対話形式で行なえる。搭載ドライバーはチタン複合振動板を採用した12mm径のダイナミック型。機能面では、「360°空間オーディオ」を搭載し(アプリでオン)し、ヘッドトラッキングにも対応するので、映画や音楽だけでなくゲーミングにおいても良好なサウンドをその効果を存分に味わえるだろう。

〈仕様スペック〉
・ドライバー:12mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC、AAC
・再生周波数帯域:20Hz~20,000Hz
・再生時間:最大5時間(本体のみ)/最大20時間(ケース併用)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IP54
・公式サイト:BUTTONS CLIP

〈デザイン&操作性〉
 単なるイヤーカフ型のイヤホンというだけでなく、独自のAIエージェントを備え、AI音声チャット機能を備えることが特徴のモデル。ドライバー部、クリップ部とも水滴形のデザインでメタリック塗装とマットなブラックを組み合わせたデザインもしゃれている。充電ケースもメタリック塗装と革風の組み合わせがユニークだが、ケースサイズは、やや大きめか。操作はタッチ式で、どこに触れても操作ができるうえ反応もいいから、ストレスを感じることなく使える。

〈装着性&音漏れ〉
 音漏れは独自のウェーブガイドで軽減しており、10cmほどの距離ではかすかに聞こえるが、50cmではほぼ聞こえない。装着性はフィット感が良く、片側約6.7gという軽さも相まって長時間つけていても耳が痛くなるようなこともなく、ずれて動いてしまうような感じもなかった。

画像: BUTTONS「BUTTONS CLIP」

〈サウンド〉
 音楽を聴くと低音感がしっかりとあり、パワフルな音を楽しむことができる。空間感の再現もよくできており、クラシックなどを聴くとホール感や雄大なスケールまで感じられる。ボーカル曲でも声に厚みがあって聴き応えのあるサウンドが楽しめた。高音域の伸びもスムーズでクリア、しかも聴き心地が良い。男性ボーカルも芯の通った力強さがあり、聴き応えがある。見た目のデザインの良さが印象的だが、音もなかなか質の高いものになっていて、実力は高い。他人とは違ったモデルで個性をアピールするには最適なモデルだろう。

BOSE「Bose Ultra Open Earbuds」

◉実売価格例(税込):¥39,600

〈プロフィール〉
 今回ラインナップした10モデルの中では最高値の製品。デザイン面でもその独創性は飛びぬけていて、まるでアメコミのヒーローが付けているプロテクターのよう。本体色は最多の9カラーを揃える。BOSEらしくユニットなどの詳細は明らかにされていないが、aptX Adaptive(48/24)コーデックはサポートされており、対応プレーヤー(スマホ)と組み合わせれば、より厚みのあるサウンドが楽しめるだろう。専用アプリも用意されていて、立体的な音響が楽しめる「イマーシブオーディオ」にも対応する。音源位置を固定するヘッドトラッキング機能もあり。駆動時間はイヤホン単体で約7時間、10分の充電で約2時間使える急速充電にも対応する。IPX4の防水機能、マルチポイント接続機能も備える。

〈仕様スペック〉
・ドライバー:非公開
・対応コーデック:SBC、aptX Adaptive
・再生周波数帯域:非公開
・再生時間:最大7.5時間(本体のみ)/最大27時間(ケース併用)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX4
・公式サイト:Bose Ultra Open Earbuds

〈デザイン&操作性〉
 耳に挟むタイプのイヤーカフ型ではあるが、デザインがかなり独特。なかなかユニークな外観のモデル。操作性は、物理ボタンの採用によって、確実な操作が行なえる。円柱形のクリップ部の上部にボタンが組み込まれているから、人差し指で簡単に操作できる辺りも、好感が持てる。

〈装着性&音漏れ〉
 音漏れは10cmの至近距離では少し聞こえる。50cmではほぼ気にならない。他と比べてごくわずか音漏れが多めだと感じるが、極端に混雑した場所や逆に極めて静かな場所でない限り、実使用上での差はあまりないだろう。装着感は、きしめんタイプのバンドがフレキシブルで、慣れると装着がラクに行なえる。装着してしまうと軽快で圧迫感もなし。見た目のわりに首を動かしても耳に当たるようなことはないし、ずれる感じもほぼ無い。

画像: BOSE「Bose Ultra Open Earbuds」

〈サウンド〉
 音質はさすがのボーズサウンドで、低音もしっかりと出るし、クラシックを聴いてもスケール感のある雄大なサウンドが楽しめる。イヤーカフ型では漠然とした包まれ感になりやすい音場感もきちんと再現されているのは立派だ。ボーカルでもしっかりと声が前に出る感じの再現で、音色もクリア。女性らしいしなやかさと声の伸びがありつつ、力強さも感じるところが良い。大柄なデザインなので耳元がやや目立つため、好き嫌いが分かれそうだが、音の方はかなり優秀。音の点でもジャンルを選ばず楽しめるバランスの良さがあり、イヤホンは音質で選びたいという人には有力な候補と言えるだろう。

〈筆者プロフィール〉

画像11: 【試聴テスト】話題のイヤーカフタイプのオープン型イヤホン 主要モデルを一気聴き!(後編)

鳥居一豊(とりい かずとよ):雑誌の編集を経てフリーランスとなる。AVはもとより、PCオーディオやヘッドホン、また各種ガジェットの造詣も深く、さまざまな分野で執筆している。自らが設計から携わった自慢のシアター空間「架空劇場」は、ドルビーアトモスやDTS:X再生にも対応する「6.2.4」構成。最高の映像と音を求め、日々進化し続けている。大のアニメ好きでもあり、深夜アニメのエアチェックは怠らない。

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