スマートフォン向けゲーム『あんさんぶるスターズ!!(あんスタ)』の楽曲を、生演奏のバンドライブで楽しめるスペシャルイベント(食事付き)が東京・恵比寿のBLUE NOTE PLACEで開催、コルグのLive Extremeを使ったドルビーアトモスによるライブ配信も実施される(主催はHappy Elements株式会社)。

8月23日のライブより(写真提供:Happy Elements株式会社)
その第1回が去る8月23日に開催され、多くのファンが詰めかけた。さらに、今週末の9月6日と7日にも公演とライブ配信(20:10〜)が予定されている。出演するESバンドのメンバーはyas nakajimaさん、宇都圭輝さん、石井裕太さん、Igoさん、そして裕木レオンさんの5名、さらにそれぞれの日程で異なるゲストが登場し、スペシャルなコラボレーション演奏を届けてくれる。
『あんスタ』は音楽のクォリティが高いと評判で、著名なエンジニアであるニラジ・カジャンチさんがミックスを担当、Apple Musicの一部の楽曲はドルビーアトモスでも配信されている。今回はこれらの楽曲をジャズアレンジによる生演奏で届けるという企画だ。

BLUE NOTE PLACEのステージサイド。赤い丸で囲んだ部分にアンビエンス用マイクが配置されている(ひとつはスピーカーの陰で写っていない)。またピアノには、PA用マイクとは別に2本設置されている
編集部では8月23日の会場にお邪魔し、ライブ配信の舞台裏を拝見してきた。BLUE NOTE PLACEは2022年12月に恵比寿ガーデンプレイス内にオープンしたライブレストラン、カフェ、ダイニングといった「音楽と食」を融合させた空間だ。今回は約200席を備える吹き抜け2階建てスペースの正面にステージが設けられ、ESバンドの演奏を間近で楽しめるようになっている。
このオープンに合わせてお店の2階に立体音響(7.1.4)のミックスが可能なBNJ studioを導入、配信のための準備にも着々と取り組んでいた。BNJ studioは2024年夏頃から稼働しており、これまでもステレオ・ハイレゾ音声によるライブ配信を行ってきたそうだ。

客席側リアサイド。こちらにも2階部分から4本のマイクが吊り下げられている
今回はBLUE NOTE PLACEでの演奏をドルビーアトモスでライブ配信するというもので、同社としても初の試みになるそうだ。ここで、なぜドルビーアトモスを採用したのかについて、Happy Elements株式会社の外部施策ディレクターHAさんと、会場の株式会社ブルーノート・ジャパン 企画制作部/マネージャーの福田安男さんに聞いてみた。
HAさんからは、「今回のバンドライブにおけるテーマ、目的は『最高の環境で演奏を楽しんでもらう』ことでした。『あんスタ』のユーザー層を考慮するに、配信でご覧になる方も多くなるとは想定していたので、採算はともかく、目的達成のために迷うことなくドルビーアトモスを選択したのを覚えています」との返答があった。プロジェクトの目的ごとに技術や配信プラットフォームを一新するというのは並々ならぬこだわりで、クリエイティブファーストといえる熱意が感じられるコメントだ。

ステージ上部、2階部分の手すりに4本のマイクを設置。天井側の音を収録し、ドルビーアトモスでの空間の広がりを演出するそうだ
福田さんは、「配信視聴者の皆さんにも、ライブ会場ならではの空気感、雰囲気を楽しんでもらいたいと考えました。立体音響フォーマットとしては、他にAuro 3DやDTSなどがありますが、現時点ではテレビやサウンドバーなども含めて、ドルビーアトモス対応製品が多いと思いますので、今回はこれを採用しました」と回答。配信者がユーザーの再生環境まで考えてフォーマットを選ぶというのはライブ配信には重要な観点で、この取り組みに対する真摯な姿勢がうかがえる。
さて、今回は7.0.4ドルビーアトモスで配信を行っており、そのために通常のPAマイクに加えて、立体音響用のオーディエンスマイクをステージ上方や2階の天井近くに設置、吹き抜け空間の臨場感もきちんと楽しんでもらえるように配慮している。
それらオーディエンスマイクの設置とドルビーアトモスのミックスを担当したのが、入交イマーシブオーディオ研究所の入交英雄さん。入交さんはStereoSound ONLINEにも度々登場いただいているマルチチャンネルオーディオのプロフェッショナルで、今回は空間の特性を把握するために、事前にBLUE NOTE PLACEの音を確認したうえで、ドルビーアトモスのリアルタイムミックスという難しい作業に望んだそうだ。

BNJ studioの様子。8〜10畳ほどのスペースに7.1.4モニターシステムが設置され、ドルビーアトモスのミックスも可能とのこと
ちなみに追加されたオーディエンスマイクはステージ側2階席近くの手摺部分にハイト用を4本、さらにステージ上部に4本、ステージ両サイドに2本、ピアノ用に2本、そしてステージ客席後方に4本というもの。
ハイト用は会場の広がりや天井の高さを表現するためのもので、ステージ上の4本はバンドの楽器群の高さ方向を加えることによってバンドそのもののリアリティを表現するそうだ。ステージサイドの2本と客席4本の6本のマイクでフロアーの雰囲気を表現し、ピアノのマイクは、PA用としてはハウリング防止のため近めにセッティングするため、配信用にピアノそのものの音質がもっとも良い位置に2本追加したという。
こうして収録したPAマイク+オーディエンスマイクの音声信号とカメラからの映像信号がBNJ studioに送られ、7台のカメラ(2K)映像のスイッチングとドルビーアトモスのミックスが行われる。ドルビーアトモスのモニター環境はフロアーチャンネルが日本音響エンジニアリング「NES mini」が7本、トップスピーカーはジェネレック「8331A」が4本という構成だ。

今回のライブ配信は、コルグが開発したLive Extremeを使っている。BNJ studioの一角にはそのエンコーダー用PCも準備されていた
なお、今回の配信はドルビーアトモスの他にHPL(ヘッドホンリスニング)での2ch音声も配信されており、ユーザーの再生環境に応じて選択できるようになっている。HPL音声はドルビーアトモス信号から変換しているそうだ。
23日の第3回、実際に配信を行っている最中に入交さんの後ろに座って、ドルビーアトモスのサウンドを体験させてもらった。ゲストアーティストが参加した曲では、ボーカルがセンターにしっかり定位し、バンドの配置も明瞭。ステージの広がりを感じつつ、あたかも会場にいるようなサラウンドとして楽しめた。

リハーサル時にHPLエンコードした音源を確認する入交さん
入交さんはBLUE NOTE PLACEの2階吹き抜けの空間再現を大切にしたいと話してくれたが、確かに天井の高さも感じられたし、後方だけでなく2階からの拍手もしっかり響いてきて、ライブの包囲感、盛り上がりが追体験できた。
福田さんによると、ライブ配信を見てくれた人のSNSでの反応も良好で、臨場感があるといったコメントも出ていたそうだ。リアルタイムミックスによるドルビーアトモス体験というコンテンツは、6日〜7日にも配信が予定されている。ご自宅のホームシアターで体験してみてはいかがだろう。
ENSEMBLE STARS!! BAND LIVE
●出演者:ESバンド(yas nakajima、宇都圭輝、石井裕太、Igo、裕木レオン)
●ゲスト(一部楽曲で出演予定):9月6日 小林大紀、草野太一、9月7日 野島健児、梶原岳人
●開催日時:9月6日(土)20:10〜、9月7日(日)20:10〜
●アーカイブ視聴期間
・9月6日公演分:9月6日(土)23:00〜9月13日(土)21:00
:9月7日公演分:9月7日(日)23:00〜9月14日(日)21:00
●チケット価格:¥2,800(税込) https://l-tike.com/es-bandlive/
●チケット受付期間:
・9月6日公演分:8月10日(日)18:00〜9月13日(土)18:00
・9月7日公演分:8月10日(日)18:00〜9月14日(日)18:00
●配信プラットフォーム:eContent(https://econtent.jp/ )



