近年進展著しい“AI”をテーマに、その裏の一面を映像化した『TSUSHIMA』の完成披露上映会が8月21日(木)、新宿ピカデリーで行なわれ、主演・山田純大、共演の中西悠綺、二宮芽生、ケニー大倉、そして山根高文監督らが登壇した。司会は、山根監督と報道時代の同僚だったという川瀬眞由美氏が担当した。映画については、9月5日(金)より、代官山シアターギルドで上映の予定だ。

本作は冒頭にも記したように、猛烈な勢いで発展しているAIが日常生活に溶け込み、知らぬ間に人がその影響を受けてしまっていたら(そういう時代が来てしまったら)をテーマに描かれおり、監督自身、大学で医療工学を専攻してことから、AIが日常に潜り込む一側面として、美容や医療、選挙という要素と組み合わせて映像化している。中々に壮大な設定となっているが、多少脱線すると、記者はかつてモルダーが追っていたものが、実はここで描かれいるAIだったのではないか、という印象も受けた。
さて、本作で主役でもある新聞記者・田島圭介を演じた山田は監督から、「田島は、ずっと報道記者をしていた僕自身だから、とにかく淡々と冷静に演じてほしい」と言われたそうだが、序盤で今の世の中ではありえないような体験をしていることもあり、「その後、どうやって淡々と冷静に演じていけばいいのか分からないところもありましたけど、そういった点も含めて観てほしい」とコメントしていた。

1990年代の対馬で選挙活動を始める、本作のヒロインと言える佐藤由里子を演じた中西は、「人をまっすぐに愛するということは、人や動物のように感情を持った生き物にしかできないと思いますが、それがAIに乗っ取られてしまったら……。それによって自分のたいせつな人の人生が狂わされてしまう、ということを描いています。撮影当時(2年前)よりもAIが進化、浸透してきている今、こういうことが起こりうるんじゃないかと、すごく感じています」と、今だからこそ身近で起こるかもしれない恐怖についてコメントしていた。

佐藤の選挙スタッフ・小林を演じた二宮は、「ミステリアスな役柄であまり多くは語りませんが、佐藤(中西)の一番そばにいて、全部を見ている人です。ということもあり、目の前で起きている光景をしっかりと受け止めて、いろいろと考えることができたと思います」とコメント。一方で、「最初の脚本を読んだ際、これはどういうこと何だろうって、理解が難しいこともありましたけど、いろいろな捉え方ができるし、何回も観ていただくことで、受け取り方も変わってくる作品になったと感じています。加えて、対馬の美しい景色が味わえるので、それも合わせて楽しんでほしい」と語っていた。

時代は少し遡って(ここ大事!)1960年代のバーのオーナー小林を演じたケニー大倉は、「日本の高度成長期に、横浜でバーを経営している小林を演じました。まだまだ女性が社会進出していない時代でしたけど、積極的に女性を助けている役です。あとは、本作のキーとなる“緑の物質”を追っている面も持ち合わせています。それがAIとどう関わるのか? 作品をご覧になってひも解いてほしいと思います。あとは、山田さんとはまったく絡み(共演シーン)がなくて(笑)、今日初めてお会いしましたけど、親近感がわいてきて、初めましてとは思えなかったです」とおどけたコメントをしていた。

そして、順番は山根監督へ。「最初は監督までやるとは思ってなかったんですけどね」とおどけつつも、AIの負の一面について、「自分が知っていること、分かっていることであれば、AIが間違った反応・返事をしてきても、間違っていると分かるから全然怖くないんです。でも、分からないことや判断できないこと、もっと進んで、AIだから正しい・あっているという世の中になってしまうのが、一番怖いんじゃないかなって思っているんです。この映画ではその一面を描いています」と創作の根っこをコメント。

続けて話は、テーマソングに河合奈保子の楽曲を選んだ理由へ。「現役当時は、そんなに詳しくなかったのですが(歌が上手いとは思っていたそう)、主題歌を探している時に、たまたまこの楽曲が入っているDVDを見て。これしかない! と思って」決めたそうだ。
実は、映画の完成後に両親(時期は異なる)を相次いで亡くしているそうで、ご尊父のご遺体のそばでウトウトしていた時に夢で「お父さん、なんで死んだのと聞くと、お母ちゃんに会いに行くねんって返事してきて。それじゃあしょうがないねとなって、パッと目が覚めたんです。そこでフト思ったのが、劇中でも描いていますけど、医療の進化で亡くなりそうな人を助けることができるかもしれない。肉親ならそう思いますが、“お母ちゃんに会いに行く”という父を引き留めてしまったら、不幸なんじゃないか、と。その答えを主題歌に込めています。なぜこの曲を選んだのか? エンディングまでがストーリーだと思って、観て・聞いていただければと思います」とその意図を話していた。
最後に山田と中西のコメント――「いろいろなことが詰まっている映画で、これありえないだろうと感じることもあるかもしれません。けど、ふと立ち止まって考えてみると、こういう未来が来るかもしれないって思わせてくれる映画になっています。そのはざまの部分を楽しんでほしいです」(山田)、「私がこの作品を通して感じた中で一番怖いのが、すべてをAIに委ねてしまうこと。監督も仰っていましたけど、おかしいことをおかしいと感じなくなってしまうことが、怖いと思います。AIが普及している今だからこそ、何が人間にとって大切なのかという本質を問われている作品になっています。たくさんの方に観ていただいて感じてほしいです」。加えて、実の祖母が本作で映画デビューしたそうで「私が演じた佐藤の80代の役で出演して、女優デビューしているんです。同じ役で共演できたことも嬉しいので、あわせて観てほしいです(喜)」(中西)――を以てトークイベントは終了した。
映画『TSUSHIMA』
2025年9月5日(金)より代官山シアターギルドにて公開
以後、全国順次公開
■キャスト
山田純大
中西悠綺
二宮芽生 浜浦彩乃
ケニー大倉 勝野洋 星田英利
売野雅勇 古藤芳治 大嶋真由子(長崎文化放送アナウンサー)
黒瀬友美 稲垣雅之 鈴木恒守 彦坂啓介 宮澤佑 萩原謙太 楓
藤真由美 野口勝博 田中愛桜(子役) 中西美江子
■スタッフ
脚本・監督・編集:山根高文
プロデューサー:宮下昇、米田利己、夏原健
アソシエイトプロデューサー:米田伊織
助監督:高原一
撮影:藍河兼一、岡村浩代(助手)
録音:豊田真一、高島良太
スタイリスト:松下綾子
ヘアメイク:岩橋奈都子
美術:江連亜花里
ポスターデザイン:近藤知佳
特殊メイク:征矢杏子
CG:佐野和信
MA:吉方淳二
英語字幕:蔭山歩美、Janelle Bowditch
音楽:陶旭茹
ウェブサイト:村田愛理、菅原澪
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