前編の今回は、ラディウス、フィリップス、BASEUS、SOUNDPEATS、アンカーの5メーカーの製品を取り上げます。どうぞ、お楽しみください。
〇【試聴テスト】話題のイヤーカフタイプのオープン型イヤホン 主要モデルをプロが一気聴き!(後編)はコチラから
製品ラインアップ(前編)
・フィリップス「TAQ2000」
・ラディウス「ear-hug/HP-H10BT」
・SOUNDPEATS「SOUNDPEATS Clip1」
・BASEUS「Baseus Bass BC1」
・アンカー「Soundcore AeroClip」
フィリップス「TAQ2000」
◉実売価格例(税込):¥4,400
〈主な仕様〉
・ドライバー:12mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC
・再生周波数帯域:100Hz~20,000Hz
・再生時間:最大7時間(本体のみ)/最大28時間(ケース併用)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX4
・公式サイト:TAQ2000
〈プロフィール〉
この8月に発売されたばかりのホカホカの新製品。イヤーカフ型の王道的な形状で、2つのパーツを繋ぐブリッジ部には、柔軟性のある「フレキシブルジョイント」を採用(きしめんのように幅広)。耳の形状(厚み)に合わせて装着できるので、フィット感も高くとれると謳っている。イヤーカフ型としては比較的大きめの12mm径のダイナミック型ドライバーを搭載し、オープンタイプで不足しがちな低音を補強してくれる「Dynamic Bass機能」も搭載するので、さまざまな楽曲を迫力あるサウンドで楽しめるだろう。マルチポイント接続や低遅延ゲームモードなど、今様の必須機能も備えている。IPX4の防滴仕様で、汗や多少の雨への耐性もある。他、AIマイクで通話もクリアに行なえるほか、専用のアプリにも対応する。
〈デザイン性&操作性〉
ドライバーを内蔵する部分は球型で、対するクリップ部分は長円形の小判型というデザイン。ドライバーの口径は12mmで、コーデックはSBC。BluetoothはVer.5.4でマルチポイント接続にも対応。スマートフォンアプリにも対応するなど、安価な価格ながらも機能的には十分なものとなっている。操作性は、物理ボタンが設けられているので、タッチセンサーになれていない人でも、簡単に操作することができるのは、嬉しいポイントだろう。


〈装着性&音漏れ〉
装着してみると、圧迫感は少なく軽快だが、優しくホールドすることから頭を強く振ると少しズレそうな感じもある(実際はズレない)。音漏れについては、10cmほどの至近距離ではわずかに聞こえるものの、50cm離れるとほとんど聴こえない。実用上はまったく問題はないが、静かな場所では再生音量に注意したほうがよさそうだ。

〈サウンド〉
音は聴き心地の良さが印象的で、ジャンルを問わず気持ちよく音楽を楽しめる。ただし、ダイナミックレンジはやや狭く、音楽の迫力やスケールが少しこぢんまりとした感じになる。少しおとなし目な再現ではあるが、クラシック音楽における楽器の音色の再現などは、なかなかリアルで、ボーカルもしっとりと落ち着いた印象を受ける。歌声はクリアで聴きやすく、ニュアンスの再現も豊かだ。このあたりは、さすがバランスの取れたうまい音作りをするフィリップスらしさを感じる。パワフルなロックなどを力強い音で楽しむタイプではないが、心地よい音量でボーカル曲などを上質な音で楽しみたい人には合うだろう。
ラディウス ear-hug/HP-H10BT
◉実売価格例(税込):¥5,750
〈主な仕様〉
・ドライバー:10mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC、AAC
・再生周波数帯域:100Hz~20,000Hz
・再生時間:最大10時間(本体のみ)/最大25時間(ケース併用)
・アプリ:非対応
・防水規格:IPX4
・公式サイト:ear-hug/HP-H10BT
〈プロフィール〉
ラディウス初のイヤーカフ型の完全ワイヤレスイヤホン。発売当初から好評で、一時品切れになるほどの人気を博したという。特に装着性に留意したモデルとなり、ブリッジ部分には適度な柔軟性のあるシリコンを用い、優しく耳を挟み込む形状とすることで、長時間の装着でも快適さを得られ、音楽リスニングから、いわゆる"ながら聴き"用途まで、多彩に使えるようになっている。耳の後ろ側に来るパーツが円柱形なこともあって、しっかりホールドしてくれるところにも注目。音質面では、ラディウスらしい低音を重視しながらも、高音域まで伸びやかに再生するなど、バランスの取れたチューニングを施している。連続再生時間はイヤホン単体で約10時間、充電ケース併用で最大約25時間の使用が可能。
〈デザイン&操作性〉
水滴のような形状のドライバー部と少し大型のクリップ部分との組み合わせにより見た目はユニークな形状をしている。クリップ部分にタッチセンサーがあり、大型のため操作がしやすいのが特徴的だ。イヤホンは見た目がやや大柄に見えるがケースはコンパクトだから携帯性に優れる。


〈装着性&音漏れ〉
シリコン製の柔らかなブリッジが優しくホールドしてくれるうえ、クリップ部分が大きいことからズレることなく安定した装着感が得られらた。音漏れについては、約10cmの至近距離ではどんな音楽を再生しているのかがわかる程度には聞こえるが、約50cmほど離れれば周囲が静かな場所ではごくわずかに聞こえる程度に抑えられていた。多少の音漏れはあるものの、シャカシャカと耳障りな音ではないので、再生音量に気をつければ図書館のような静かな場所でない限り問題なく使えそうだ。

〈サウンド〉
再生音は自然な感触で、バランスに優れている印象。ただ、良い音ではある聴く楽曲によっては少しおとなしい印象を受ける。日常的に鳴らしっぱなしにしているような状況下で聴きやすいようにバランスにしているようだ。ボーカルは少し軽い感触だがクリアで聴き心地はよい。ロックなどを聴くと低音が少しソフトな印象で力強さがもう少し欲しくなった。軽やかな音は聴き心地はよいのだが、騒音の多い場所では周囲の音に埋もれてしまいそうな印象。オフィスや自宅など静かな場所で周囲に迷惑をかけずに音楽を楽しむような使い方が合うだろう。
SOUNDPEATS「SOUNDPEATS Clip1」
◉実売価格例(税込):¥9,980
〈主な仕様〉
・ドライバー:12mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC、AAC、LDAC
・再生周波数帯域:20Hz~40,000Hz
・再生時間:最大8時間(本体のみ)/最大40時間(ケース併用)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX5
・公式サイト:SOUNDPEATS Clip1
〈プロフィール〉
SOUNDPEATSからは、ブランド3モデル目のイヤーカフ型となる「SOUNDPEATS Clip1」をピックアップ。耳の後ろ側に来るパーツが平面的になっていることもあり、装着時の安定感が高められているのが特徴。そして、SOUNDPEATSと言えばLDACコーデックのサポートを、本モデルでも踏襲。開放的なサウンドでありながら、緻密で繊細、情報量に優れた音質で好みの楽曲を楽しむことができる。また、ブランド初となる“Dolby Audio”の対応も特筆できるだろう。アプリで設定することで、2chのコンテンツも、音場感のあるサウンドで再現できるようになる。ほか、マルチポイント対応、音漏れ防止機能、IPX5の防水規格準拠、イヤホン単体での連続再生時間は約8時間、充電ケース併用で約40時間の長時間再生が可能
〈デザイン性&操作性〉
球形のドライバー部とクリップ部は円筒型でデザインとしてはオーソドックス。ドライバーはデュアルマグネット型12mmドライバーを採用し、対応コーデックでは、SBC、AACのほか、CD以上の高音質でハイレゾ音源にもLDACにも対応する。操作性は、クリップ部分が円筒形になっているので、タッチがしやすく、操作性にも優れる。


〈装着性&音漏れ〉
装着感は、オーソドックスな形状ながら耳に最適化したものとなっていて、フィット感も良い。頭を強く振ってもずれることがないのでランニングなどのスポーツでも問題なく使えそうだ。音漏れについては、独自の音漏れ防止設計を採用しており、10㎝離れていればやや聞こえるが、50cm以上離れてしまえばほぼ聞こえない。迫力のあるサウンドが楽しめるモデルとしてはかなり優秀だ。

〈サウンド〉
LDACコーデックで試聴してみたが、音質はかなり良く、細かな音の再現や質感も丁寧に再現される。しかもオープン型では難しい低音もかなりしっかりと鳴る。単に低い音域が鳴り響いているということではでなく、力感もあり、低音の豊かな響きがしっかりと再現されるあたりも良い。ボーカル曲は声の描き分けやコーラスとの対比もきちんと再現されるし、歌い手による歌唱の違いもしっかりと描かれている。LDAC対応の良さも大きいと思うが、AACで聴いても基本的な実力の高さはよくわかった。オープン型とはいえ、基本的な音の実力が優れるものを選びたいという人には一番のおすすめといえる。
BASEUS「Baseus Bass MC1」
◉実売価格例(税込):¥6,580
〈主な仕様〉
・ドライバー:10.8mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC、AAC
・再生周波数帯域:20Hz~20,000Hz
・再生時間:最大7.5時間(本体のみ)/最大38時間(ケース併用)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IP55
・Amzonサイト:Baseus Bass MC1
〈プロフィール〉
BASEUS初のイヤーカフ型イヤホン。今夏発売されたばかりの新製品で、ここで取り上げるエントリークラスの「Baseus Bass BC1」と、上位モデルの「Baseus Bowie MC1」が同時発売された。型番に“Bass”と付いているように、低音の再生に留意したモデルで、アプリにある「バスブースト」メニューをオンにすることで、AI機能も活用しながら、量感のある低音再生が楽しめるようになる。操作系はタッチ式ではなく物理ボタン式なので、マスクを外す時に触ってしまって……という誤作動も防げるだろう。連続再生時間は、イヤホン単体で約7.5時間、充電ケース併用で最大約38時間と実用的なもの。10分の充電で最大2時間使える急速充電にも対応する。
〈デザイン&操作性〉
オーソドックスな球形のドライバー部と太鼓型のクリップによるデザインは、アクセサリー的な装飾はないものの、シンプルなデザインが好みの人に向いている。操作性は、物理ボタンを採用しており、ボタンで確実に操作したい人には合っているだろう。誤操作をしなくて済むのもポイントといえそうだ。


〈装着性&音漏れ〉
圧迫感のない軽い装着感だが、頭を強く振ると少し動いてしまうような感じもある(耳の形状による)。軽快感はあるがもう少しフィット感があると、アクティビティ時にも問題なく使用できそうだ。音漏れは10cm程度離れていても何か音が出ているかがわかる程度。50cmではほぼ聞こえなくなる。通話時のノイズキャンセル機能もあるので、ワイヤレスイヤホンで通話をよくする人には便利だろう。

〈サウンド〉
厚みのある音色で低音がしっかりと鳴ることが大きな魅力。クラシックを聴いても個々の音がリアルな感触で出て、聴き応えがある。低音感はあるが最低音域の伸びはやや不足。これはオープン型では高望みというところか。声も厚みのある再現で、歌い手の声色の違いをきちんと描き分けるし、細かなニュアンスもきめ細かく表現できる。男性ボーカルの力強い声の伸びもしっかりしている。厚みのある音で解像感もなかなかよく出来ている音だ。ロックなどをパワフルに聴きたい人にも合うが、基本的なバランスが良いので音質を重視する人は候補になるだろう。
Anker「Soundcore AeroClip」
◉実売価格例(税込):¥17,990
〈主な仕様〉
・ドライバー:12mm径 ダイナミック型
・対応コーデック:SBC、AAC、LDAC
・再生周波数帯域:20Hz~20,000Hz
・再生時間:最大8時間(本体のみ)/最大32時間(ケース併用)
・アプリ対応:〇
・防水規格:IPX4
・公式サイト:Soundcore AeroClip
〈プロフィール〉
Ankerは、積極的にオープンタイプの製品をラインアップしており、耳掛け式で5モデル、イヤーカフ型で3モデルを発売している。ここでは、今春発売した「Soundcore AeroClip」をピックアップした。先端の丸いパーツをつなぐC字型のブリッジ部が、ヘッドホンのヘッドバンド部のように平たくなっているデザインが目をひく仕上がり。イヤホンとしては、12mm径の大型ダイナミックドライバーの搭載や、SOUNDPEATS同様にLDACコーデックのサポート、音漏れ防止構造、IPX4の防水規格準拠、AIを使った通話ノイズキャンセル機能など、注目ポイントが満載だ。バッテリーの持続時間はイヤホン単体で約8時間、充電ケース併用で約32時間というロング仕様。ほか、マルチポイント接続にも対応する。
〈デザイン&操作性〉
球形のドライバー部と円筒型のスタイルはオーソドックスだが、この二つをつなぐバンド部が太く、デザイン上でもユニークなポイントになっている。なかなかデザイン上の差別化がしにくいイヤーカフ型だが、本機は遠目から見てもはっきりとわかる独自のデザインが特徴的だ。操作性は、デザイン上でもユニーくなポイントとなるバンド部分で行なえる。バンド上であれば、どこをタッチしても操作することができるので、一時停止・再生、先送り、が簡単に行える。それも反応が良いので、ストレスを感じることなく操作ができるのは、タッチ操作に慣れていない人でも直感的にできるので、使いやすかった。電話の応答、通話の終了、着信の拒否も、タッチ操作で行なえる。


〈装着性&音漏れ〉
見た目からゴツい感じを想像してしまうが、装着感は軽快で圧迫感もない。実際に装着すると、装着感がほぼ無く、付けていることを忘れてしまうほどだ。音漏れは、独自の構造で抑えており、10cmの距離では少し音が出ているのがわかるものの、50cmではほぼ聞こえない。

〈サウンド〉
ドライバーは12mmのチタンコート振動板で磁気回路もデュアル構造になった本格的なもの。BluetoothはVer.5.4で対応コーデックはSBC、AACに加えてLDACにも対応*。LDAC対応ということもあり、情報量が豊かで優れた音質だ。オープン型の特徴でもある包まれるような包囲感に加えて、音の広がりや高さを感じる音場感もある。低音もしっかりと力強くなるため、オーケストラの雄大さや迫力も伝わる音質だ。ボーカルはくっきりとした再現で、声の違いの描き分けもうまい。男性ボーカルも芯の通った力強い再現を可能にしている。メリハリがやや強めのバランスではあるが、外界の音も耳に入るオープン型はこのくらいの方が楽しい音になるとも感じた。屋外で使うことが多い人には好まれるだろう。
*iPhone・iPadなどのiOS端末はLDAC非対応
〈筆者プロフィール〉

鳥居一豊(とりい かずとよ):雑誌の編集を経てフリーランスとなる。AVはもとより、PCオーディオやヘッドホン、また各種ガジェットの造詣も深く、さまざまな分野で執筆している。自らが設計から携わった自慢のシアター空間「架空劇場」は、ドルビーアトモスやDTS:X再生にも対応する「6.2.4」構成。最高の映像と音を求め、日々進化し続けている。大のアニメ好きでもあり、深夜アニメのエアチェックは怠らない。

