柚木麻子の小説『早稲女、女、男』の映画化『早乙女カナコの場合は』は、およそ10年にも及ぶラブストーリーを中心としながら、女性の生き方や女性同士の関係を描く群像劇。この、現代を生きるあらゆる世代の女性たちが、自分らしく一歩を踏み出すための普遍的な物語の主人公・早乙女カナコを橋本愛、その彼氏・長津田を中川大志が演じるほか、山田杏奈、臼田あさ美、中村蒼、根矢涼香、久保田紗友、平井亜門、吉岡睦雄、草野康太、のんといった若手から実力派まで幅広い俳優陣らが出演している。
去る4月2日には、『三月のライオン』『ストロベリーショートケイクス』などで知られる矢崎仁司監督が、新宿K’s cinemaでの舞台挨拶に登壇した。
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矢崎監督は冒頭「K’s cinemaで上映していただけるのが嬉しくて、(自宅のある山梨から)飛んできました」と挨拶。
これまで、「『この人、僕、好きだからみんな見てね』という風に映画を作ってきた」とのことで、各メインキャストの魅力を語った。
主人公の早乙女カナコ役の橋本愛について聞かれると、「本読みの段階で僕はウルウルして、『これは映画ができたな』という感じが本読みの段階であった」と撮影前の段階での手応えについて言及。
カナコが大学1年から付き合う長津田役の中川大志と、カナコの内定先の上司・亜依子役の臼田あさ美に関しては、「NHKの『LIFE!』が大好きで、ある意味、キャスティングはウッチャンがやった」とジョークを飛ばし、「『LIFE!』に出ている人みんな好きですから、今回お二人に会うのが楽しみだった」と告白した。映画冒頭はカッコつけている長津田だが、長津田が愛されるキャラクターになった理由について、脚本の改稿だけでなく、「中川さんの魅力がすごいから」とその魅力に太鼓判を押した。
本作は、橋本が演じたカナコと中川が演じた長津田が踊るシーンが印象的だが、「振り付けの方にある程度お願いしたけれど、基本的には中川さんと橋本さんが作っていった。(ダンスをリードする)中川さんが動き始めると、『カットを割りたくないな』と思うほどだった」と中川の貢献について語った。
長津田に一目惚れする麻衣子役の山田杏奈については、「家ではよく奥さんや子供に『あなたの言っていることは全くわからない』と言われるが、山田杏奈さんと臼田あさ美さんとは共通言語があって、『うちの奥さんよりすげー』という感じだった」と奇跡的な出会いを喜んだ。
臼田に関しては、「(クランクインした)初日に、『いやぁいいシーンが撮れた』と思った。初日って大体撮れないものなんですけれど。すごい俳優さん」と絶賛!
亜依子の元カレで、カナコにアプローチをする吉沢洋一役の中村蒼に関しては、「『もっと優しく』って言い続けた。そうすると、そんな(優しい)人間いないよってなるから、どうしても、夜景の手前のガラス窓に映ってたばこに火をつけるシーンを撮りたかった。その時の中村さんの顔がすげー良くて、『この顔をしてたばこに火をつけたら、あとは優しくしていいよ』と確信した。そのことを中村さんもわかってくれていたみたいで素晴らしい俳優さんと出会えたなという感じがした」と回想した。
画のこだわりについては、「美術っていうと、部屋を飾ることだと思っている方もいると思うけれど、本当の美術は、オープン(屋外撮影)の時でも、『そこに赤い服の人を通らせたい』だとか、エキストラの服の色まで決めるくらいが美術で、そうやって一枚一枚の画を作っていく」と話し、衣装合わせについて、「衣装は(演じるキャラクターが)武装する日と武装を解く日があるので、感情を見せない日と見せていい日で衣装を選んでもらいたい」と衣装合わせに時間をかける理由を話した。
カナコは、柚木麻子による原作「早稲女、女、男」に、高校時代陸上部だったと書かれており、「『カナコはホタルイカのシーンで走り始めてからは、立ち止まらない』というような縛りを自分で作って、常に走っているという風に撮影をしたけれど、結果、中間の走りが全くなくなってしまった」とのこと。中間の走りのシーンがカットになった理由について、「(撮った素材を繋げたら、)最初は3時間6分くらいあった」と話し、「(世に出さないのは)あまりにも勿体無いということで、大好きな中嶋イッキュウさんがこの映画を見て書き下ろしてくださった主題歌「Our last step」のミュージックビデオ(https://youtu.be/jYWxs5g-3z8)に、使われていないシーンをいっぱい入れてもらっている。この映画を観た後にミュージックビデオを見ると、あっと思うことがあると思う」と、主題歌のミュージックビデオもPR。
最後に「元気がなくなった時にはこの人たち(カナコ、長津田、麻衣子、亜依子、吉沢ら)に何度でも会いに来て下さい」とメッセージを送った。新宿K’s cinemaでは4月25日まで上映中。
本日4月13日(日)18:30からの回上映後にも、矢崎仁司監督の舞台挨拶が予定されている。
映画『早乙女カナコの場合は』
新宿K's cinema 他にて公開中
配給:日活/KDDI
2024/日本/DCP/2:1/5.1ch/119min 映倫区分:G
(C)2015 柚木麻子/祥伝社
(C)2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会
公式サイト
https://www.saotomekanako-movie.com/
予告編YouTubeリンク
https://youtu.be/m8uU5YQDa2Q