時が過ぎるのは早いもので、モンキー・パンチさんが亡くなって6年が経つ。今年の命日(4月11日)で七回忌を迎えることになった。この間、オーディオビジュアルの環境も著しく変化したので、モンキーさんが生きていたなら、あれはどうだ、これはどうだと、熱心な質問攻めにあっていたことだろう。

画像: 月刊HiVi 1998年9月号に初登場いただいだ際の記念カット

月刊HiVi 1998年9月号に初登場いただいだ際の記念カット

 PCへの取り組みも早く、漫画家としてほぼ最初にマックで絵を描き始めたモンキーさんのことだ、ハイレゾ配信や最近話題のサブスクリプションサービスにも取り組まれていたことは想像に難くない。その一方で、ぼくは無邪気にアナログオーディオの復活を囁いていたかもしれない。

 モンキーさんのオーディオビジュアルの経歴とその偉業は、2021年に刊行されたステレオサウンド別冊「モンキー・パンチさんが教えてくれた」(関連リンク参照)にほぼすべて紹介されている。オーディオビジュアルに対して、あれだけの熱意を注いだ人を僕は他に知らない。まぁ、その半分はぼくの囁き(誘惑)も手伝ってのことだったが、最後はご自身の英断だった。

 好奇心が旺盛だったモンキーさんは、気になるとじっとしていられない性分でもあり、当然機材の変遷も多かった。でも心の中には、いつもJBLとマッキントッシュがあった。

画像: ホーム商会に展示されているJBL「パラゴン」。1957年製とは信じられないほど状態も良好です

ホーム商会に展示されているJBL「パラゴン」。1957年製とは信じられないほど状態も良好です

画像: モンキー・パンチさんのオーディオビジュアル経歴を収めた別冊や、「ルパン三世」のサウンドトラック(LP、SACD/CDハイブリッド)も発売しています。残りわずかですので、興味のある方は関連リンクをチェック

モンキー・パンチさんのオーディオビジュアル経歴を収めた別冊や、「ルパン三世」のサウンドトラック(LP、SACD/CDハイブリッド)も発売しています。残りわずかですので、興味のある方は関連リンクをチェック

 そんなモンキーさんへの思いも手伝って、七回忌に当たり、ステレオサウンド社から発売されたアナログレコード「ルパン三世 1977~1980 ORIGINAL SOUNDTRACK ~for Audiophile~ Analog Edition」を、東急東横線・学芸大学駅近くのオーディオショップ、ホーム商会で試聴した。というのも、現在ホーム商会にはJBLスピーカーの美の頂点ともいえる、ミントコンディションの「パラゴン」が置かれているからだ。

 一見するとサイドボードにしか思えないこのスピーカーは、15インチのウーファー「150-4C」、ミッドレンジドライバー「375」+「H5038」ホーン、トゥイーターに「075」を組み合わせた3ウェイ機であり、しかも日本に正式に輸入される前の1957年製という貴重な一台である。

 1965年から山水電気が日本への輸入を開始するが、その時点でウーファーは「LE-15」に変わり、最終的にはアルニコマグネットからフェライトの磁気回路に換装されたユニットが使われている。ちなみに生産台数は1000台程である。

 そんな貴重なパラゴンがあることを知って以来、僕自身も耳の保養も兼ねて何度か試聴させてもらっていた。今回は、モンキーさんならこの音をどんなふうに感じただろうか、そんな思いを巡らせて試聴している。プレーヤーは強化電源付きのリン「LP12」にMC型カートリッジ「Arkive」、プリアンプがマッキントッシュ「C-2700」、パワーアンプはベルエアー「VT-25シングル」というラインナップである。

画像: ホーム商会の展示システムをお借りして、LP「ルパン三世 1977~1980 ORIGINAL SOUNDTRACK ~for Audiophile~ Analog Edition」を試聴

ホーム商会の展示システムをお借りして、LP「ルパン三世 1977~1980 ORIGINAL SOUNDTRACK ~for Audiophile~ Analog Edition」を試聴

画像: 「パラゴン」には初期のJBLロゴマークが燦然と輝いている。左はツイーターユニット「075」の背面

「パラゴン」には初期のJBLロゴマークが燦然と輝いている。左はツイーターユニット「075」の背面

 「ルパン三世のテーマ」「ルパン三世 ’79」の順番で聴いてみたが、イントロと曲中のセリフがリアルに聴こえる。レンジ感は欲張っていないが、ふくよかな中音域と充分なステレオイメージを持ち、70年近く前のスピーカーとは思えない、ハイセンスで古さを感じさせないサウンドである。

 続いて「ルパン三世 ’80」を再生する。コーラスが入り、現代風にアレンジされた曲調とともに、ビブラホンの響きを細やかに、そしてホーンセクションを厚く聴かせて、ハイファイ調に変化した録音の違いもよく分かった。この曲でもステレオイメージと立体的な音響空間の描き出しは健在で、モンキーさんのイメージに一番あっているというか、好みの音である。

 劇場第二作『ルパン三世 カリオストロの城』のテーマソングで、ボビーが歌う「炎のたからもの」では、彼女の声が見事に浮かび上がり、改めてパラゴンが奏でる音の奥深さを知ることになった。

 実はこのパラゴンは売り物ではない。お店のシンボルとしてお客さんにオーディオの楽しみを伝える役割を果たしているが、もしモンキーさんが存命で、「これ売ってほしいなぁ」と頼まれたら、どうしますか船橋社長? そんな想像をしたくなるような、心地いいサウンドだった。

 モンキー・パンチさんには、もっともっと色々な機器を体験して、オーディオビジュアルの世界を極めて欲しかったと思う。モンキー先生、天国でもいい絵といい音を楽しんでいますか?

貴重なJBL&マッキントッシュサウンドを聴かせてくれた、ホーム商会

画像: モンキー・パンチさんが愛したJBLとマッキントッシュで聴く「ルパン三世のテーマ」は、やはり格別だった。七回忌を迎えて、改めてモンキーさんのオーディオビジュアルへの熱意に感服する

 今回の試聴では、東急東横線・学芸大学駅近くのオーディオショップ「ホーム商会」にお邪魔した。ここはビンテージから最新モデルまでオーディオファン垂涎の製品を揃え、様々なイベントも開催している人気店だ。店長の船橋さんと潮さんは昔からのオーディオ仲間でもあり、StereoSound ONLINEでもしばしば取材にお邪魔している。

 事前に申し込んでおけば試聴にも応じてくれるので、気になる製品のある方は一度問い合わせていただきたい。「この記事を見たと言っていただけば、お店のスタッフが温かく迎えてくれるはず」(潮さん)とのことです。

画像: 潮さんの試聴では、レコードプレーヤーのリン「LP12」+MCカートリッジ「Arkive」、プリアンプのマッキントッシュ「C-2700」、パワーアンプにベルエアー「VT-25シングル」というシステムを使わせてもらった

潮さんの試聴では、レコードプレーヤーのリン「LP12」+MCカートリッジ「Arkive」、プリアンプのマッキントッシュ「C-2700」、パワーアンプにベルエアー「VT-25シングル」というシステムを使わせてもらった

●住所:東京都目黒区鷹番3-21-21(東急東横線 学芸大学駅 徒歩3分)
●電話:03(3711)0600)

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