高音質ストリーミングサービスQobuzの「いい音」をあらゆる場所で楽しむ
オーディオファン、音楽ファンを問わず、自宅だけではなく、屋外や外出先でも、好みの音楽をいい音で楽しみたいというニーズは根強い。再生システムとしては、スマホとワイヤレスイヤホンの組合せが一般的だが、オーディオ再生に特化したデジタルオーディオプレーヤー(以下、DAP)の市場も活況で、ハイレゾ対応の完全ワイヤレスイヤホンも人気を集めている。
従来、DAPはCDをリッピングしたり、ダウンロード購入して入手した音楽データをDAC内蔵ストレージに収めて再生するスタイルだったが、数年前から音楽配信サービスも楽しめるハイレゾ対応モデルが登場。現在では高級機、普及機を問わず、DAPのスタンダードなスタイルとして定着している。
DAPの強みは、世界的にポータブルオーディオの市場が拡大傾向にあり、絶対的な製品の数が充実していることだ。しかも据置型のオーディオ機器に比べると、新製品への更新も早く、処理能力の高いSoC(System on a Chip)や音質重視のDACチップなど、最新の技術、パーツがいち早く導入される傾向にある。また製品のバリエーションが豊富で、価格帯も様々。デザイン、音質、機能性と持ち味が異なり、製品の選択に悩まされるが、これもまたユーザーにとっては楽しい。
さてQobuzの再生だが、ソニー、フィーオなどAndroid OSで動作している機種がほとんどで、Qobuz純正アプリがダウンロードできるようだ。高音質DAPメーカーとしてお馴染みのアステル&ケルン(以下、A&K)では、Android OSを独自にカスタマイズして、音楽再生に最適化している模様で、Qobuzは「APK PURE」というサイトから、当該アプリをダウンロード、製品本体内の「Open Service」というフォルダにコピー/インストールすることで対応している。ただA&KのサブブランドACTIVOから2024年にリリースされたP1は、前述した手順を踏まずにシンプルにアプリをダウンロードして再生できるAndroid OSを搭載している。
■ デジタルオーディオプレーヤーのQobuz対応の主な方法
・Android ベースのOSを採用、Qobuzアプリをインストールして対応
主なブランド:ACTIVO、Cayin、Fiio、HiBy、iBasso Audio、Sony
・「Opne APK Servse」でQobuzアプリをインストールして対応
主なブランド:Astell & Kern
携帯デジタルプレーヤーにとって、ダウンロードしたデジタルファイルだけでなく、音楽ストリーミングサービス音源再生の重要性が高まってきた。その対応として、OS(基本操作ソフト)自身をスマホなどで採用されているAndroid(あるいはそれをカスタマイズしたOS)を採用するケースが増えている。携帯デジタルプレーヤーの有力メーカー、アステル&ケルンは、AndroidベースのOSのようだが、かなりカスタマイズが施されているようで、「Opne APK Service」という仕組みを利用してQobuzなどストリーミング機能を実装する
また完全ワイヤレスイヤホンでもQobuz再生を楽しみたい場合は、ハイレゾ相当の音質とされるaptX、aptX HD、aptX Adaptive、あるいはLDACへの対応が不可欠だ。
ヘッドホン、イヤホンを問わずSP1000で鳴らすQobuzは高品位

Digital Audio Player
Astell & Kern
SP1000
今回は筆者が日常的に使用しているA&K SP1000でQobuz再生を試してみた。メニュー画面から「サービス」をタップするとQobuzのロゴが表示され、これをタップしてログインすると、Qobuz再生の画面に切り替わる。
操作画面はAndroidスマホ用Qobuzアプリでの画面に近く、お気に入りのアルバム、曲、アーティスト、プレイリストなどの呼び出しが可能。オーディオメーカー製の操作アプリではほとんどサポートしていない「Qobuz Magazine」も表示できるのは便利。ただし、操作時のレスポンスは、スマホ同等とは言えず、ややぎこちなさが残るものの、操作時にストレスを感じるほどではない。
再生楽曲は「イエスタデイ・ワンス・モア/カーペンターズ」、「赤いスイートピー/松田聖子」、「99/TOTO」など。
まずノーブルオーディオの完全ワイヤレスイヤホンFALCON ANCとの組合せで、松田聖子の『SEIKO JAZZ3』から「赤いスイートピー」をaptX HDコーデックで再生する。曲冒頭のソプラノ・サックスフォンの色濃い響きが放出され、そこにキーボード、ドラム、エレピ、タンバリンと細かな音が複雑に重なり、濃密、かつ華やかな空間が浮かび上がる。
ゆっくりと松田聖子が歌い始めるが、その声は落ち着いて、ある種の貫禄を感じさせる。優しさと力感を併せ持った説得力のある歌声。音場の拡がりやスケール感は中庸だが、的確にリズムを刻むベースの響きが心地よく、高音のヌケも良好だ。ワイヤレス接続のイヤホンでここまでのクォリティ感が得られれば、文句はない。
続いてスピーカー再生に近い自然な定位と音場空間が特徴的なクロスゾーンのCZ-8Aの有線接続で聴く。まず同じ曲「赤いスイートピー」を再生したが、目の前に拡がる空間がグッと拡張され、多彩な楽器の響きがきめ細かく、浮遊するかのように拡がっていく様子が新鮮だ。彼女の唇の動きを感じさせるほどの解像力は、まさにハイレゾ音源の真骨頂といえるだろう。
「イエスタデイ・ワンス・モア/カーペンターズ」はピアノの静かな響きに誘われるようにカレンが歌い始め、その声の質感が高いこと。心にスッと染み込むような緻密さ、透明感が特徴的で、歌声に癒やされる。サビに入っても歌声、伴奏、コーラスとそれぞれの描き分けが的確で、バランスが崩れない。ハイレゾ再生ならではの品位感を体験することができた。
今回の取材ではA&Kの高級DAPを使用したが、A&norma SR35やソニーNW-ZX707など、10万円前後の現在の売れ筋モデルでもQobuzの再生クォリティは相当高く、Hi-Fi鑑賞用として十分、実用になるレベルに達している。屋外でも、様々な楽曲がいい音で楽しみたいという貴方はぜひ1度、そのサウンドを体験していただきたい。

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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』