最もシンプルなQobuz再生システムとしては、スピーカー単体でQobuzが楽しめる、ストリーミング対応のアンプ内蔵スピーカー(アクティブスピーカー)が思い浮かぶが、現段階でQobuzの持ち味を最大限に引き出せる製品はそう多くはなく、選択肢は限定される。
スピーカーは電気信号を空気の振動に変えて、最終的に音楽を奏でるというリスナーとのインターフェイスとなるため音質への影響が最も大きく、また日常の生活の中で、常に、目に入るというインテリア的な要素もあるだけに、できることなら音質面はもちろんデザイン的でも気に入ったスピーカーを選びたいというのが本音だろう。
ここでがぜんクローズアップされるのが、一般的なスピーカーシステム(アンプ非内蔵=パッシブスピーカー)がそのまま使用できるQobuz対応のプリメインアンプだ。お気に入りのスピーカーシステムが自由に選べるし、もちろんいま使っているスピーカーをそのまま活かすことも可能だ。
スピーカー以外のエレクトロニクスを1シャーシに格納できるため、システム設置スペースやケーブルの引き回しが必要最小限に抑えられるのも大きな強み。また製品のバリエーションも、コンパクトでお洒落なモデルから、音質を追求した本格モデルまで、実に多彩だ。さらにeARC(enhanced Audio Return Channel)対応のHDMI端子を備えたモデルなら、テレビとHDMIケーブルを1本接続するだけで、放送/配信/パッケージソフトなどの音声をスピーカーで再生できる。
テレビとの連携操作も可能で、電源オンに連動して、プリメインアンプ側の電源が入り、入力が切り替わり、音量操作もテレビリモコンで行なえる。テレビの電源オフで、プリメインもオフにできる(連動内容は設定で変更可能/製品の組合せ次第で連動不可あるいは制約が伴なうケースもあり)。
ネットワーク対応のAVセンターでも同等の使いこなしが可能で、その気になればサラウンド再生、マルチルーム再生への展開も考えられる。テレビ付属リモコンと、専用アプリで操作できる快適なリビングシアターが完成するというわけだ。

使い勝手の良さ、シンプルな構成でQobuzの魅力を十分に引き出す
今回は多彩なネットワーク機能を搭載し、さらにeARC対応HDMI端子を装備したテクニクスのプリメインアンプSU-GX70を用意して、HiVi視聴室のリファレンススピーカーBowers & Wilkns 802 D4との組合せで、そのサウンド、操作性を確認していく。

SU-GX70はテクニクスの中核となるプリメインアンプ。独自のデジタルアンプ「JENO Engine」、ディスクリート構成のアナログ入力など、上級機SU-R1000で培った技術を積極的に投入した意欲作だ。
Qobuzの再生にはスマホ/タブレット専用アプリ「Technics Audio Center」を使用。「SOURCE」画面の左上のボタンをタップし、各種配信サービスからQobuzを選択。あとはQobuzにログインする流れだ。

テクニクスはネットワークオーディオ対応製品の多くがQobuz対応にアップデート。ミドルクラスのプリメインアンプSU-GX70もQobuz対応となった。再生は「Technics Audio Center」アプリに組み込まれたQobuz画面から行なう
今回、再生したのは「花束を君に/宇多田ヒカル」、「ビッグ・ショット/ビリー・ジョエル」、「モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番/チョ・ソンジン」など。声、楽器ともに、十分なダイナミックレンジを確保しながら、繊細で丁寧な聴かせ方で、音楽の内面のニュアンスまでしっかりと感じさせる。
低域の張り出しはやや控えめに感じられるが、基本的な分解能が高く、ベースの抑揚、バスドラムのリズム、ビートの描写も曖昧にならない。音源に対するレスポンスの良さが持ち味。素直で、演色のない聴かせ方は悪くない。
チョ・ソンジンのピアノは耳ざわりなエッジの強調はまったくと言っていいほど感じさせない。しなやかな鍵盤のタッチといい、空間に浸透していく緻密な響きといい、その表現は素朴で、実直。生気溢れる演奏に聴きいってしまった。
落ち着きのある、堂々とした再現性に少なからず貢献していたのが、周波数ごとに変化するスピーカーのインピーダンスを補正、最適化するLAPC(Load Adaptive Phase Calibration)だ。アンプ出力の周波数振幅位相を測定し、インピーダンスの最適化を図る本同機能のオン/オフで歌声のニュアンス、空間の拡がり、低域の実在感と、総合的な表現力が大きく変わり、LAPCオンでがぜん楽曲が生き生きとして、躍動する。
大型スピーカー802 D4をここまでしっかりと駆動するとは、驚いた。使い勝手の良さ、シンプルなシステム構成ながら、Qobuzの魅力を十分に引き出す、高音質プリメインアンプの存在は特筆に値する。
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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』