ソニーは、高密度LEDバックライトをR (赤)、G (緑)、B (青) の色ごとに制御可能なRGB独立駆動パネルを採用し、大画面化にも適したディスプレイシステムを開発した。各色が独立して発光するため色の純度が高く、映像をより鮮やかに広色域で再現できるという。
また、パネルの特性を最大限に引き出すために、ソニーが独自開発したバックライト制御技術を搭載。大画面でも画面の隅々まで繊細な色合いと光の濃淡を忠実に再現する。
映画などの映像作品では、物語性のある表現を実現するために、色彩や黒の表現、光の階調の細やかさが重要な要素になる。今回のディスプレイシステムは、これらの要素を高めることでクリエイターの意図を忠実に反映、映画制作および家庭での映画視聴にも適した画質を提供するそうだ。

従来のLEDバックライト(左)と、新RGB 独立駆動LEDバックライト(右)の構造の違い
ソニーでは、コンテンツ制作時の色彩調整(カラーグレーディング)に用いるプロフェッショナルモニターや、リファレンスモニターとして活用されるブラビアを通じて、長年映像制作現場を支援してきた。そこで得た独自の経験と技術的な知見を活かし、本ディスプレイシステムを開発したそうだ。
同社は2009年に発売した液晶ブラビア「KDL-46XR1」で3色LED(Gを2個内蔵)を搭載、純度の高い色を実現した。今回の新技術はそれをさらに進め、RGB LEDを独立制御することでいっそうの高画質を狙っているのだろう。2025年中に量産を開始し、家庭用テレビやコンテンツ制作用ディスプレイへの搭載拡大を目指していく。

左がこれまでのバックライトシステムで、右が新開発されたもの
新開発ディスプレイシステムの主な特長は以下の通り。
●RGB独立駆動パネル採用による広色域性能
各色が独立して発光するため、色の純度が高く、デジタルシネマ向けの色域規格DCI-P3で99%以上、4K放送などでも使われているBT.2020色域の約90%をカバー。
●カラーボリューム(色空間)の拡大による自然な映像表現
RGB独立駆動パネルに独自のバックライト制御技術を組み合わせることで、パネルの広色域性能を画面全体で有効に活用でき、大画面においても画面の隅々まで繊細な色合いを表現可能。
またRGB各色が独立して発光する際に、シーンに応じた最適な電力を各色に割り当てる機能も搭載している。これまでも、夜景などの暗いシーンで明るい部分に光りを集中させ、ピーク輝度を高めるといった調整を行っていた。新しいディスプレイシステムでは、色の濃淡にも応じた輝度調整を行うことで、単色のシーンでも明るく鮮やかな映像を再現するそうだ。

Mini LEDバックライトと新ディスプレイシステムの駆動イメージ
さらにプロフェッショナルモニターで実現している4000 cd/m2以上のピーク輝度を出すことができ、ソニーのディスプレイ機器史上最高のカラーボリュウムを実現する。
●広いダイナミックレンジと緻密な階調表現
新ディスプレイシステムは、96ビットの高ビットレートで駆動しており、漆黒とまばゆい白を同時に表現できるだけでなく、中間色の多いシーンでも明暗の違いを繊細に表現できる。既存の有機ELパネルでは技術的に難しい、明るさや彩度が控えめな色調も表現可能という。
高ビットレートでの信号処理により、細部まで精密に階調を制御できるため、大画面でも斜めから見た際の色や明るさの変化が抑えられ、広い視野角を実現できる。

●専用の制御用プロセッサーによる正確な色再現
高密度に敷き詰めたLEDの、RGB各色の明るさを個別制御することで、明るい部分は白飛びせず色鮮やかに、また黒つぶれせずに光の濃淡を繊細に描き出すことが可能。従来のローカルディミング処理に比べて、約2倍の処理能力やピクセル補正技術などを備えており、微細な色の違い、色ずれのない正確な色を再現できる。