『Away』で注目を集めたラトビア出身の気鋭、ギンツ・ジルバロディス監督の長編第2弾。2024年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映を飾り、同年のアヌシー国際アニメーション映画祭では4冠を受賞。今年のゴールデングローブ賞では『インサイド・ヘッド2』や『モアナと伝説の海2』などを抑えてアニメーション映画賞を受賞、とひじょうに高い評価を受けているのだが、観れば納得である。

 世界が大洪水に包まれるなか、そこを脱出しようという黒猫が主人公だが、その視点から見た風景(たとえば象がとても大きく見えるなど)がフィーチャーされるわけではなく、カメラ(アニメ)の視点は極めて第三者的である。人間が演じるドラマを、動物というキャストにそのまま移し替えているようにも感じられた。ここが面白い。「どうぶつの冒険譚」にして、親子連れの来客をたんまり見込もう、などという考えはハナからないのではないか。むしろ、「さあ、この動物はいまこうなった。これも自然のひとつの摂理だ。あなたはどう感じる?」と、問いをつきつけてくるようなところがある。動物を、「かわいい消費の対象」にしていない。

 いささか抽象的な説明になってしまったが、観ればつかめる一作だと思う。ギレルモ・デル・トロ監督が「アニメーションの未来の壮大な幕開け」と称賛しただけはある、手ごたえのある内容だ。なお劇中に、人間や人間の言語が登場することはない。

映画『Flow』

3月14日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開

監督・脚本・音楽:ギンツ・ジルバロディス 音楽:リハルズ・ザリュペ
配給:ファインフィルムズ 原題:Flow 映倫:G 後援:駐日ラトビア共和国大使館
2024/ラトビア、フランス、ベルギー/カラー/85分
(C)Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.

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