三船敏郎、チャールズ・ブロンソン、アラン・ドロンが顔を揃えた1971年の、まさに奇跡と呼ぶべき映画が4Kデジタルリマスター版として公開される(言語はほぼ英語)。豪快でりりしい三船、男くささ満開のブロンソン、世紀の美男子ドロンを、よりクリアーな画質と音質で楽しめるのがいい。とはいっても、この3人の「すさまじいヴァリュー」を実感できているのは、ある程度、昭和の空気を吸った者なのかもしれない。という意味では、この3人にあまりなじみのない世代にこそ見てほしい、とも思うし、次世代が親や祖父母を誘って見に行くと、観終わった後に一家で話が弾むことだろう。先住民の描写など、今見ると(少なくとも私には)胸が痛むところもあるけれど、それも含めて、今から半世紀前の「西部劇」である。
長いあいだ大いに語られてきた映画であろうから、検索すればいろんな意見が出てきよう。三船とブロンソンの「バトルと友情」が混濁した関係は見ていて実にスリリングだ。物語の背景は1870年のアメリカ、つまり日本にとっては、あの、屈辱的な「日米修好通商条約」締結から12年後の話ということになる。そして、映画製作時点からおよそ100年前の話、さらにいえば「70年安保」の頃の作品でもある。しかも三船は「男は黙ってサッポロビール」のコマーシャルでも人気を博していた。そうした時期に彼は「主演映画」を撮るために渡航し、サムライの格好をして、いくつもの命がけのシーンに取り組んでいたのだ……。
評伝『占領下のエンタテイナー:日系カナダ人俳優&歌手・中村哲が生きた時代』(私も雑誌で書評した)の刊行で再評価高まるカナダ出身の名脇役・中村哲も、重要な役割を示す。監督はテレンス・ヤング、撮影監督はアンリ・アルカン、音楽はモーリス・ジャール。
映画『レッド・サン 4Kデジタルリマスター版』
2025年1月3日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー
提供:マーメイドフィルム
配給:コピアポア・フィルム
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