英国リヴァプール出身のロックバンド、ザ・ビートルズの“ハンブルク・デイズ”を追った一作。彼らは60年8月に初めてこの地にやってきて、相当に狭く薄汚いクラブのステージでロックンロールを響かせ、以降、来るたびに会場を大きくしていって、女性のファンも増やした。時には12時間続けて歌い演奏したこともあった、ともきく。バンドの基礎体力が思いっきりついた時期であったはずだ。なぜ彼らがハンブルクに行ったのか、どんな人や物と出会って刺激を受けたのか、歌手トニー・シェリダンの伴奏バンドとしてのレコーディングに至る経緯などが、当時のハンブルクの風俗や音楽シーンの描写も交えながらテンポよく描かれる。ドラマ映画『バック・ビート』で描かれていた日々の、ドキュメンタリー版ともいえようか。

 当時のメンバーはジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、ピート・ベスト、そしてスチュアート・サトクリフ。ドイツに拠点を移し、美術家として活動を始めたものの、若くして亡くなったスチュアートについてしっかり紹介されているのも嬉しいし、「自分がいた時代こそが真のザ・ビートルズだ」と、かつて私に語ったピート・ベストの、当時のことをまるで昨日のように思い出しながらの談話も実に生々しい。

画像: 「僕らはリヴァプールで生まれ、ハンブルクで育った」というジョン・レノンの発言が、ドキュメンタリーで実感できる『NO ハンブルク NO ビートルズ』

 映画の後半では彼らがジョン、ポール、ジョージ、リンゴ・スターの通称“ファブ・フォー”となり、イメージ・チェンジの末に大ヒットを飛ばし、世界のアイドルへとなっていくさまも駆け足で描かれている。彼らが最後にハンブルクの、しかもとてつもない大会場で公演したのは1966年6月26日のことだが(通算6度目の訪問)、この日付がまた日本のビートルズ・ファンにとっては尋常ではない意味を持つ。このライヴを終えた彼らは飛行機に乗り、アンカレッジ経由で東京に向かうことになるからだ。監督はロジャー・アプルトン。

映画『NO ハンブルク NO ビートルズ』

12月6日より ヒューマントラストシネマ有楽町、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国公開

監督:ロジャー・アプルトン
出演:ピート・ベスト、アラン・ウィリアムズ
(アーカイブ映像)ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、スチュアート・サトクリフ、ジョージ・マーティン、アストリッド・キルヒヘア、リトル・リチャード
2024年 / イギリス / 57分 / カラー / 1.85:1 / 5.1ch / 英語
原題 ”No Hamburg No Beatles”
字幕監修:藤本国彦
配給:NEGA
(C)2024 A BI Hamburg Production Ltd

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