高校演劇の優秀作を映画化した『水深ゼロメートルから』が、5月の全国公開に続いて、いよいよ10月23日にBlu-rayとして発売される。濵尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれの4人をメインキャストに迎え、夏休みのとある一日、水の抜かれたプールを舞台に繰り広げられる女子高校生たちの瑞々しい姿を映像化した注目作だ。ここではメインキャストを務めた4人――濵尾咲綺、仲吉玲亜、清田みくり、花岡すみれ――にインタビューを実施。出演の感想や役作りの苦労、パッケージ発売について話を聞いた。
――よろしくお願いします。本作は、2021年のリブート舞台から始まって、今年5月の劇場公開を経て、今月にはいよいよBlu-rayパッケージが発売されます。おめでとうございます。今一度になりますが、本作へ出演しての感想をお願いします。
濵尾咲綺(以下、濵尾) 私にとっての初舞台(2021)であると同時に、初主演映画になりましたので、初めてのことをたくさん経験させていただいた作品です。それもあってとても大好きな作品になりましたし、この4人はとにかく仲がいいので、このメンバーで撮影できたことが本当に嬉しいです。
仲吉玲亜(以下、仲吉) 濵尾さんが話されたように、このメンバーの仲がいいことが一番嬉しいですね。撮影はずっと泊まり込みで行っていて、本当に寝る時以外はみんな一緒にいたんです。撮影が始まる前から、終わってお風呂に入って寝るまで、ずっと一緒に過ごしながら、セリフの練習なんかをしていましたから、この仲いいメンバーじゃなければできなかったと思います。上映の時にも一緒に舞台挨拶に登壇させていただいて、とにかく一緒にいると楽しいし、いつも元気をもらっているので、友達と楽しく過ごしているという雰囲気を感じられるんです。劇中でも、この4人でしか出せない味をお見せできたんじゃないかなって思います。
清田みくり(以下、清田) 私は映画にメインキャストで出演するのが初めてでしたけど、先ほどからみなさんが話されているように、この4人の仲のよさ、他のキャストさんたちとの仲の良さがあって、すごくいい環境で撮影に臨めたと思っています。初めて大役を担った作品がこのメンバーで、本当によかったです。
花岡すみれ(以下、花岡) 舞台から数えれば3年近くの歳月が過ぎていて、私は当時高校生だったのが、今は二十歳を超えています。その期間を一緒に過ごせているのはなかなか珍しいことですし、3年前と比べて変わったねとか、そういうちょっとした変化にも気付きあえる仲になれたのが、すごく嬉しいです。映画の現場って一度きりのことも多いので、こうして長期にわたって定期的に会って、変化や成長に気付きあえるのは、楽しいです。
そういう関係性(仲良く)になれたのも、これだけ長期に続いている作品であることや、高校生活を題材にしていること、高校生活を(共通の)経験していることなどがあったからこそなんだろうと感じています。濃密な時間でした。
仲吉 それこそ私が高校1年生の時に舞台をやって、映画が高校3年生の卒業前だったので、高校生活と同じ期間を共に歩んできた感じです。
――続いて、皆さんの演じられた役と、その役作りについてお願いします。
濵尾 私の演じたココロは、一軍っていうことに囚われていて、(自分は)可愛くいなければいけないって思い込んでしまっているんです。私も以前、ファッション誌のモデルをやっていた時に、(見られる仕事なので)可愛くなければいけないとか、容姿を綺麗にしていないといけないって思い込んでいたことがありました。そんな時に舞台でココロに出会ったんです。物語の最後に、自分のためにメイクをするって言うんですけど、その言葉がすごく私自身に刺さって! まさにそうだなと思って、救われた部分もありました。
役作りの面では、ココロはストレートに相手が傷つくようなことを言ってしまうので、そこはなかなかうまく理解できなくて……。監督に相談をしたら、ココロはとにかく無邪気だから、悪気はないんだけど、相手が傷つくことをサラッと言ってしまうんだよって教えてくださったので、無邪気っていうことをココロのテーマにしながら、演じるようにしました。
仲吉 ミクは、私のイメージで言うと、クラスの大半はミクタイプなんじゃないかって思います。常に周りの顔色を伺って物事を言ったり、自分で思うことがあっても、自分の中でワンクッション置いてから伝えたりと。内向型というか、割と自分が思っていることを内に秘めているタイプだと思うんです。そんなミクだからこそ、かっこいいなって思うのは、男踊りにはプライドを持っていること。あれだけ怖いココロ(笑)に何を言われようと、チヅルに言われようと、怖いと思いながらも、男踊りに関しては、自分の言葉で頑張って頑張って伝えようとするんです。その仕草とか葛藤する心はミクのすごいところで、普段大人しいからこそ、より芯の強さを感じました。
ミクを演じる上で気を付けたのは、ミクは受ける演技が多いことでした。加えて、最初から一番状況が変わるのに、それまでの変化があまり見えない役なので、最後に、なんでこの子、急に変わったの? って見えないように、心の動きをどれぐらい出して、どれぐらい抑えてっていうのは、考えていました。すごく難しかったです。そこは山下監督と話し合いながら、ミクならどうするかなって考えて深めていきました。
――舞台挨拶の時のコメントでは、舞台と映画で一番キャラが変わった役だと、話されていました。
仲吉 舞台の時は、それこそココロに対しての怒りのまま、もうわぁ~って言って最後のシーンにつながるんです。舞台の場合は、来てくださるお客さん全員に熱(感情)を伝えなければいけないので、割と出す演技をしていたんです。けど、映画では、やはりリアリティが大事なのでで、出すというより、(怒りの感情を)内に入れて入れて、その感情・表情をどれだけ見せるか、どうやって伝えるか、ミクとしてどう言葉にするかという、表現の仕方が変わった感じです。性格は変わらないんですけどね。
――最後の男踊りは、秘めていた感情を出したからか、とても爽やかでした。
仲吉 ありがとうございます。加えて雨が降ってきて、とても素敵な演出にうれしくなりました。
――続いて清田さんお願いします。清田さんは映画からの出演になりますね。
清田 はい、私は今回(映画)からの参加になりまして、チヅルという役はかなり猪突猛進ガールというか煩悩ガールで、本当にこんな子がいるのかって思ってしまうほど変わった子でした。でも、チヅルという役に出会って、これまで自分が出してこなかった子供っぽい部分を出すことができた! という感覚が持てました。ただ、実年齢で言うと私が一番年上なので、(現場では)お姉さんっぽくしていないといけないのかなと感じていたのですが、みなさんが役柄と同様の空気感で接してくれたので、すんなりと溶け込めました。
仲吉 みくりん(清田)の優しさがあって、喋りやすくしてくれたから、すぐに仲良くなれたんですよ。
清田 ありがとう。逆に私は、年上だけど同い年として扱ってくれてありがとうって思っていました。加えて、自分の見せてなかった部分を出すことができたからこそ、映画が終わった後でも、こうして仲良くできているんだろうと思います。
――ココロとチヅルについては、出てきた時から悩みを抱えているんだろうなと見えました。ツンツンしているし、人当たりも強いし、無理して頑張っているという雰囲気も強かったです。
濵尾 私はそこを強調しようとは考えてなくて、とにかく現場に入るまでに、(ココロが)傷ついた部分を自分の中に落とし込もうと思っていました。
清田 私も特に強調しようとは思っていませんでしたけど、最後の勝負をするシーンのリハーサルの時に、感情が高ぶりすぎて、めちゃくちゃ泣いてしまったことがありました。
仲吉 それ、すごく覚えてる。
清田 自分でもびっくりしました。正直、そんなに意識(気張っている)せずに、素でいれたからこそ、チヅルとしてその場にいられたのだろうと思います。
――次に花岡さんお願いします。ユイ先輩は出てくるまでに27分かかっていました(笑)。
花岡 えっ、そんなに出てきませんでしたっけ? まあそれはさておき(笑)、ユイは3年生で先輩、水泳部の元部長で、(現部長の)チヅルの直属の先輩なこともあって、ずっとチヅルのことは気にかけていて、この日も(チヅルの様子を見に)プールに来ているっていう状況です。
役柄については、台本にはあまり書かれていなかったので、ユイがチヅルに対して思っていることや、水泳部に対して思うことなどを自分なりに深めて、役を埋めていく感じでした。自分で準備したのは、(ユイは)普段何に悩んでいるんだろうということで、それは台本から拾うというよりも、自分で想像しながら作っていきました。
結構、ユイには共感できる部分も多くあって、実際学生時代には、将来何をやりたいか決まっていない子も多かったので、ユイは水泳を続けてきたけど、大学ではどうしようか迷っているとか、他の人に夢(選手権での勝利)を託している。その託すっていう行為をずっとしている役でしたから、そういう子って多いなって実感しながら、役を演じていました。それこそ今流行りの“推し活”のように、なにか特別な思いを持っているもの・人に気持ちを託す、応援するみたいな文化と似ている部分があるなって感じていました。
――とはいえ、チヅルに自分の気持ちを伝えていました。
花岡 静かな中にも、熱いものはあったんだろうと思っています。
――喧嘩にもなりました。
清田 あれ、確か初めの方に撮ったので、いきなりバチバチするんだって思いました。
花岡 そうそう、物語上でも急に雰囲気が悪くなって、おや? ってなるところでしたから。
清田 チヅルがユイ先輩に暴言を吐いたあとで、先輩から“ごめん”って言われた時に、チラッと(ユイ先輩の)涙が見えてしまい、やってしまった、言ってしまったっていう後悔の気持ちが、本当に湧いてきて。そのせいか、肌感が違ってきて、当日は結構暑かったのですが、鳥肌が立つぐらいヒヤッとしました。
花岡 言われてから出て行くまで、プールサイドの端から端まで結構長い距離を歩かないといけないし、その過程で後ろから(チヅルの)視線を感じるし、(喧嘩したことで)この場にいられなくなってしまうのが、本当にしんどくて……。その言葉は、ガッツリ胸に刺さりました。
――その直後のシーンは、結構長回しでした。
清田 そんなに長く回されると思っていなかったし、しかも、ボール投げるのが下手クソで、ガッツリ失敗してしまって……たいへんでした。撮影が始まる前から、カメラが回っている時間を気にしちゃダメだっていうのは、気を付けていたんですけれども……。ただ、このシーンのようにのりしろが多いのは、この映画の特長だと思います。
――喧嘩といえば、ココロと山本先生のシーンも激しかったです。
濵尾 実は、山本先生が、学生時代にいた顧問の先生や生活指導の先生ぐらい怖く見えて、すごく緊張しました。しかも、先生は方言ではなかったので、それによっても、冷たくて怖い感じが増していました。
ただ、いったん役(ココロ)を抜けてみたら、生徒想いのいい先生に見えるんですよ。でも、ココロとして山本先生と話すと、“何言ってるの!”“その態度は何っ!”っていう気持ちになってしまって……。とにかくココロは正論を言っているから、先生としても、そうですねって、なかなか受け入れられないところはあるんだろうと思いつつ……。
清田 外野(プールの中)から見ていても、普段冷静なココロが、本当に怒っているって思いました。
仲吉 怒られている人を見る時って、こちらも緊張するじゃないですか。だから、これ以上怒らせないでほしいなと思っているのに、先生が次々と地雷を踏んで(ココロを)怒らせていくから、お願いだからもうやめて~っていう気持ちでした。
清田 私も、先生が本当に不憫に思えてきて……。早く止めてって思いました。去っていく先生の背中がめちゃくちゃ寂しく見えました。
――一方で、ミクは自分の気持ちをうまく言葉にはできなくて、ずっと言われっぱなしでしたけど、最後になんとか自分の気持ちを話すところは、真に迫っていました。
仲吉 ありがとうございます、もう、一番難しかったです。
清田 舞台から結構台本が変わっているんですけど、舞台を経験しているからこそうまくいかないって、二人(濵尾&仲吉)とも泣いていました。
仲吉 そうですね。お互いに役と自分との差もあるし(私は普段は、言いたいことを言えてしまう性格だから)、セリフも変わっているし、距離感も舞台と違うし。
私は、結構舞台の時のミクを残してしまっていたこともあって、踊りのことをこんなに言われているのに、何で言い返さないのかっていう違和感もあったりして、それがすごくごちゃごちゃになってしまって……。2人(濵尾)で話し合いながら、どうすればいいのか分からなくなって、泣いてしまうこともありました。ただ、それも山下監督がすごくいろいろな方法を試して、しっくり来るまでやらせてくださったおかげで乗り切れたように思います。
濵尾 私は今回のミクに対して、すごく羨ましく思っていました。自分らしく、自分のままでいいじゃんって言っているのを聞いて、いいね、そうだよねって、自分にも刺さっている感じでした。
仲吉 基本、(ミクは)自分に言い聞かせているようなセリフが多かったので、自分のために言っているんだろうなって思いながら、話していました。
――話しは尽きないのですが、最後にBlu-rayパッケージ発売に向けてのコメントをお願いします。
濵尾 遂に発売されます。本当に嬉しいです。この作品は観るたびに、感じ方や感情移入するキャラ、注目するキャラが変わってくるので、ぜひ、ご自宅で何度も観ていただきたいです。お願いします。
仲吉 映画を観た方の感想を聞くと、人によって感じ方(作品の受け取り方)が違うのはもちろんなんですけど、観る回数によって、気付くところが違ったり、心に残るシーンが変わったりするのにすごく気付かされたんです。今回、パッケージ化されたことで、何度でも観られるようになりますから、何度も観ていただいて、新たな発見をしてほしいです。表情の変化とか、その表情の裏に隠されている心情など、細かいところまで気付くようになると、さらに楽しめると思います。
清田 私はこの作品の完パケを観たのが自宅だったので、それを思い出しました(笑)。自宅で観ると、劇場とは違う感覚が味わえると思いますし、濵尾さんと仲吉さんが話されていたように、何度も観ることで、感じ方・受け取り方も変わってくると思うので、ぜひ、何回も再生して、新たな発見を楽しんでほしいと思います。
花岡 映画ですから、劇場の大きなスクリーンで観ていただくのも一つの大きな魅力だと思いますけど、気軽に自宅で観られるようになることで、さらに広く、より届いて欲しい人たちに観ていただけるんじゃないかっていう期待があります。特に、登場人物たちと同世代の若い人たち(学生)に観てほしいです。
『水深ゼロメートルから』Blu-ray【初回限定生産】
2024年10月23日(水)発売
価格:¥7,480(税込)
品番:PCXP-51095
収録分数:本編87分+映像特典38分
枚数:BD1枚+CD1枚
特典:
◯同梱・封入特典
・特製三方背ケース
・オリジナルサウンドトラックCD
<収録楽曲>
01.水のないプールで
02.私のエゴやけど
03.水深ゼロメートルから
04.波のない夏 (Instrumental)
◯映像特典
・メイキング
・未公開映像集
・予告映像集(特報/本予告)
◯音声特典
・スタッフ&キャスト本編オーディオコメンタリー
▼<好評配信中>
<キャスト>
濵尾咲綺(ココロ役) 仲吉玲亜(ミク役) 清田みくり(チヅル役) 花岡すみれ(ユイ役) 三浦理奈 / さとうほなみ
<スタッフ>
監督:山下敦弘 脚本:中田夢花 原作:中田夢花 村端賢志 徳島市立高等学校演劇部 音楽:澤部渡 主題歌:スカート「波のない夏 feat. adieu」(PONYCANYON / IRORI Records) 製作:大熊一成 直井卓俊 久保和明 保坂暁 大高健志 企画:直井卓俊 プロデューサー:寺田悠輔 久保和明 撮影:高木風太 照明:後閑健太 録音:岸川達也 美術:小泉剛 スタイリスト:小宮山芽以 ヘアメイク:仙波夏海 助監督:山口雄也 ラインプロデューサー:浅木大 篠田知典 キャスティング:池田舞 松本晏純 スチール:根矢涼香 脚本協力:小沢道成 協力プロデューサー:根岸洋之 宣伝美術:寺澤圭太郎 宣伝プロデューサー:森勇斗 製作:『水深ゼロメートルから』製作委員会 製作幹事:ポニーキャニオン 制作プロダクション:レオーネ 配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)『水深ゼロメートルから』製作委員会
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濵尾咲綺 公式
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