つらい気分になる。楽しそうに飛び跳ねていたり、満面の笑顔で登場したり、スポーツや音楽やファッションに喜びを発散する子供たちの姿がたっぷり紹介されているが、ナレーションは総じて子供たちを過去形で紹介する。それはなぜか。戦争の犠牲になったからだ。この世に生を受けて、新しい毎日に触れて、すくすくと成長してきた命、嘘のつき方も暴力のふるい方も、もちろん武器の使い方など知るよしもない若い命が、爆撃で一瞬にして吹っ飛ぶ。「集団虐殺」のために、無実の命が奪われた。

 2021年5月の11日間で、少なくとも67人のガザの子供たちが亡くなったという。このニュースを英国で知った映画監督のマイケル・ウィンターボトムは追悼映画を作ろうと決意、パレスチナ映画監督ムハンマド・サウワーフと共に、当ドキュメンタリーを作った。音楽はドイツ生まれの作曲家、マックス・リヒターが担当。きわめて淡々とした響きが印象的だ。そして日本語ナレーションを担当した坂本美雨も淡々と、けれどしっかりと語りこむ。ここ数日、またいやな報道が私の目と耳を悲しませている。この映画は、ますます観られるべき一作になっている。

 10月4日よりアップリンク吉祥寺で公開(映画料金のうち100円をガザの子どもたちを支援する団体に寄付)。

映画『忘れない、パレスチナの子どもたちを』

10月4日よりアップリンク吉祥寺、アップリンク京都ほか全国順次公開

監督:ムハンマド・サウワーフ&マイケル・ウィンターボトム
ナレーション:ゾーイ・ウェイツ(英語版)、坂本美雨(日本語版)
音楽:マックス・リヒター 撮影監督:サラ・アルハウ 編集:マイケル・ウィンターボトム&オットー・ヒルズ・フレッチャー 録音技師:メルワン・アル・サワ サウンドエディター・リレコーディングミキサー:ロバート・ファー カメラオペレーター:ハソナ・アルジェルジャウ カメラアシスタント:ムハンマド・カデル 録音技師:メルワン・アル・サワフ プロデューサー:ベン・ピアース、ハシム・アルサラフ、ムハンマド・サウワーフ、マイケル・ウィンターボトム エグゼクティブプロデューサー:メリッサ・パーメンター 脚本・演出:佐野伸寿
イギリス/2022年/英語・アラビア語/84分/DCP/カラー/原題:ELEVEN DAYS IN MAY/日本語字幕翻訳:M.Nakamura/字幕監修:師岡カリーマ・エルサムニー/配給・宣伝:アップリンク

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