東京・調布の角川大映スタジオでは、新たに劇場用Dolby Atmos（ドルビーアトモス）対応ダビングステージの運用を開始した。ダビングステージとは、編集を終えた映像を実際の視聴環境に近い状態で再生しながら、音の最終調整を行うスタジオのことで、映画のミックス作業のために設計されたダビングステージは実際の映画館のような作りになっている。
読者諸氏もご存知の通り、ドルビーアトモスとは従来の5.1chや7.1chに加え、天井（トップ）スピーカーをサラウンド再生用に加えることで、音が上下左右、あらゆる方向から聞こえる立体的な音場を作り出すことができる規格だ。また、音声トラックをオブジェクトとして扱い、その位置情報を個々のスピーカーにレンダリングし、オブジェクトベースの音響再生を実現できるのもポイントだ。
ドルビーアトモスを含む3Dオーディオ市場はゲーム、音楽、VRやARの台頭で活況を呈しており、今後大きく成長する業界として注目されている。ドルビーアトモスは映画製作でも使用されている規格であり、今回の角川大映スタジオは、劇場用ドルビーアトモスの制作に対応しているステージとして日本で3番目となることから、今後国内外で上映される映画を中心とした様々なコンテンツでの活用が見込まれるとのことだ。
ミキシングコンソールに「Avid S6」を新規に導入。10MHz対応のグランドマスタークロック「DXD-16」を採用し、高解像度な音響を実現する機材を選定した。ナチュラルな音響空間を実現する柱状拡散体「AGS」は残しつつ、音響の内装建築もいちから再設計、ドルビーアトモスに相応しい音響特性を実現している・
ステージの室内デザインも、他のダビングステージにはない明るい雰囲気へとリニューアル。ステージ前方の壁部を黒で統一して映像への没入感を高める一方、後方には和モダンテイストのデザインを採用。編集に最適な音響環境はそのままに、落ち着いて制作に取り組める空間へと進化させている。環境問題にも配慮し、新たに制作されたオリジナルの作業机には天然リノリウム素材を採用、廃棄時も有害物質を発生させない、環境に優しいステージとなっている。
機材リスト
●ミキシングコンシール：Avid S6 Dual Head 72Fader
●DAW：Avid ProTools HDX3×6
●スピーカー：JBL 5742、9310、AM5212|00、4645C
●アンプ：Crown I-TECH5000HD/Crown DCi 8|600DA
●プロセッサー：BSS BLU-806
●映像再生機：Avid Media Composer Artist|DNxIO、ProTools Artist|DNxIQ
●プロジェクター：NEC NC2000C DLP Cinema Projector
