映画『大いなる不在』の初日舞台挨拶が7月13日(土)にテアトル新宿で開かれ、近浦啓監督、藤竜也、真木よう子、原日出子が登壇した。
本作品は近浦啓監督にとっては『コンプリシティ/優しい共犯』(18)に続き、長編監督作として2作目。本作でも世界の映画祭で多くの賞を受賞、第48回トロント国際映画祭プラットフォーム・コンペティション部門にてワールドプレミアを飾り、第71回サン・セバスティアン国際映画祭のコンペティション部門オフィシャルセレクションに選出。藤竜也が日本人初となる最優秀俳優賞を受賞するという快挙を成し遂げ、サン・セバスティアンの文化財団が最も卓越した作品に与えるアテネオ・ギプスコアノ賞も受賞。第67回サンフランシスコ国際映画祭では、最高賞にあたるグローバル・ビジョンアワードも受賞している。
ここでは当日の舞台挨拶の模様をお伝えしたい。
── 近浦監督とは短編の『Empty House』、 『コンプリシティ/優しい共犯』を含めると今回で3度目の出演になりますが、今のお気持ちはいかがでしょうか?
藤竜也 気持ちですか?嬉しいですよ(笑)。僕が監督との関係で好きなところは、3本も映画をやると一緒に長くいますが、普段はプライベートの話などしたことがなくて、いい作品を作ろうという緊張した関係で繋がっているところですね。
この年まで仕事に呼んでもらえて、できればもう1本くらい一緒にやらせていただきたいです。
── 本作の脚本を読んだ時の印象はいかがでしたか?
真木よう子 最初この脚本を弟が持ってきて『これ、すごい。何だろう、ちょっと読んでみて』と。読んでみて、これ絶対参加したいと思ったのですが、一方でこの役は本当に自分でいいのかなと?すごくいい作品だからこそ、もし違う人がやるのであればと考えていたところ、近浦監督からお手紙をいただいて、俄然やりたい気持ちが強くなって参加させていただきました。すごく嬉しかったです。
── やはり夕希という役は真木さんにお願いしたいといと?
近浦監督 そうですね。どうしても真木さんに出演してもらいたくて、すごく長く読みづらい手紙を真木さんに書かせていただきました(苦笑)。
少し内容に触れるのですが、真木さん演じる夕希と森山さん演じる卓が施設から帰る坂道の画が序盤にあるのですが、リハーサルで真木さんの後ろ姿をみてたら「これは風が吹くな」と。それで本番前に真木さんに「あそこで立ち止まって夕陽を見上げてください」とお願いしました。するとワンテイク目、真木さんが夕陽を見上げて光が差し込んできたら、ワンテンポ置いてすごい風が吹いたんです。ああいう奇跡の瞬間は、真木さんじゃなければ起こらなかったと思います。
── 前回の舞台挨拶で、脚本を読む前に出演を決めていたとおっしゃっていましたが、出演のオファーが来た時の印象はいかがでししたか?
原日出子 本当にミーハーでごめんなさいね。藤さんがお出になるというので、絶対にこの作品に出たいとキャストを見た瞬間に「やると!」言ってしまいました(笑)。その後じっくり脚本を読ませていただいて、本当に深い作品でこの作品にぜひ参加したいという気持ちになりました。
── ここで主演の森山未來さんからビデオメッセージが届いております。
森山未來 初日おめでとうございます、非常に残念ながらちょうど別の仕事でヨーロッパにおりまして舞台挨拶に参加できません。
本作ですがとても力強い映画に仕上がっています、皆さんに楽しんでいただければ嬉しいです。そして観終わって色々と感想を持たれるかと思いますので、ぜひぜひご友人やSNS上で語っていただき、この映画がより多くの人に伝わっていくよう、よろしくご協力いただければと思います。ぜひ、楽しんでください。
── 藤さん、今回森山さんとご一緒されてどのようなことをお感じになりましたでしょうか?
藤竜也 何と言いますか、俳優同士って何も言葉を交わさなくても、カチン!ってカチンコが鳴った瞬間、ものすごくインターアクションが起こるんです。セリフが無くてもです。その中で森山さんはいい俳優だなと思いました。本作品では父・陽二とのカップリングもちろん、他の出演者とのカップリングがすごく大事で、そこが全部成功しているんです。特に親子の関係というのは森山さんと一緒にやっていて、きっとこれはうまくいくなと思いました。
── 本作は北米で開催される第17回 JAPAN CUTS〜ジャパン・カッツに出品されており、藤さんに特別生涯功労賞が授与されることも決定しています。またその翌日19日からニューヨークのアンジェリカ・フィルム・センターでの公演、その翌週の26日にはロサンゼルスシアターでの公開も予定されています。台湾や韓国、インドネシア、スペインでの配給も決まっているということで、日本だけでなく世界中にこの作品が届くということですが、近浦監督お気持ちをぜひ教えてください。
近浦啓監督 本作は自主制作で作った映画です。僕たちのようなインディペンデント映画を作る製作者は、日本だけじゃなくて海外でも作品を観てもらえればすごくいいねと話しています。僕も同じような気持ちで海を超えられたらいいなという思いで作っており、それが今回こういう形で実現してきて本当に嬉しいです。
映画『大いなる不在』
2024年7月12日(金)より、テアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国順次公開
〜あらすじ〜
幼いころ家族を捨てた父(藤竜也)が警察に捕まり、連絡を受けた卓(森山未來)が妻の夕希(真木よう子)と共に久々に九州の父の元を訪ねる。久々に再開した父は認知症で別人のようになっており、父が再婚した義母(原日出子)も行方不明になっていた。卓は父と義母の生活を調べ始めるが…。父と義母の間に何があったのか?
<キャスト>
森山未來 藤竜也 真木よう子 原日出子
三浦誠己 神野三鈴 利重剛 塚原大助 塚原大助 塚原大助 市原佐都子|Q(特別出演)
<スタッフ>
監督・脚本・編集:近浦啓 共同脚本・監督補:熊野桂太 プロデューサー:近浦啓 堀池みほ ラインプロデューサー:越智喜明
撮影監督:山崎裕 美術:中村三五 リレコーディングミキサー:野村みき サウンドエディター:大保達哉 音楽:糸山晃司
録音:森英司 弥栄裕樹 衣装:田口慧 ヘアメイク:南辻光宏 助監督:石井将 制作主任:齋藤鋼児 スクリプター:保坂栞
製作・制作プロダクション:クレイテプス 配給:ギャガ
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
(C)2023 CREATPS Inc.
<エンディングテーマ>
佐野元春 & THE COYOTE BAND 「今、何処」(Daisy Music)
<公式サイト>