10月のクライテリオン『夜叉ヶ池 4K』『パンドラの箱』ほか【海外盤Blu-ray発売情報】

OCTOBER 2024 NEW RELEASES - THE CRITERION COLLECTION

THE CRITERION COLLECTION has announced its OCTOBER 2024 slate of 4K UHD BLU-RAY（3）and BLU-RAY（1）releases.They are: I WALKED WITH A ZOMBIE / THE SEVENTH VICTIM: PRODUCED BY VAL LEWTON（1943）DEMON POND（1979）GUMMO（1997）and PANDORA'S BOX（1929）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

クライテリオンの10月リリース･タイトル、そのトップバッターを飾るのはヴァル･リュートンがプロデュースした怪奇映画2作品。脚本家や小説家の顔も持つウクライナ系アメリカ人監督ヴァル･リュートンは、ニューヨークのMGM広報部でライターとしてキャリアをスタートさせた。その後ハリウッドに渡り、MGMの名プロデューサーであったデヴィッド･O･セルズニックの広報兼アシスタントとなる。セルズニックの『風と共に去りぬ』ではノンクレジットの脚本家として働き、その功績を買われて1942年、RKOスタジオのホラー部門責任者に任命された。RKOは彼に 3 つのルールを課した。予算は 15 万ドル以下であること。上映時間 75 分以内であること。そしてスタジオトップが企画した映画を製作すること。そのルールのもとプロデュースした作品が、MGMからその才能を買って引き抜いたジャック･ターナーに監督させた『キャット･ピープル』である。

13万4000ドルの低予算映画であった『キャット･ピープル』は、400万ドルに迫る収益を上げ、1942年のRKO最大の興行収入となった。この成功により、リュートンはスタジオから多くの干渉を受けずにホラー映画を作れるようになり、独自の構想も実現することができた。今回収録の作品は、『キャット･ピープル』に続いてプロデュースした『私はゾンビと歩いた！（aka.ブードゥリアン）』（1943）と『第七の犠牲者』（1943）である。前者は『キャット･ピープル』のターナー監督作。後者は、ロバート･ワイズとともに編集技師だったマーク･ロブソンを監督に抜擢して起用した作品。ちなみにリュートンは、自作の脚本最終稿を常に執筆していたが、共同執筆者としてクレジットされることを避けた。例外は『死体を売る男』（監督ワイズ）と『恐怖の精神病院』（監督ロブソン）の2作品で、小説家時代のペンネームであるカルロス･キース名義を使用している。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: OCTOBER 8, 2024
List Price: $59.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

『キャット・ピープル』のジャック･ターナーによるRKOホラーの代表作。舞台はカリブ海セント･セバスチャン島の砂糖農園。若い看護婦ベッツィー（フランシス･ディー）は、農園所有者であるポール･ホランド（トム・コンウェイ）の妻ジェシカの看護をする仕事に就く。そこで彼女はブードゥーの儀式に遭遇、呪術によって生ける屍を呼び寄せるという神秘的な世界に巻き込まれていく。シャーロット･ブロンテの小説『ジェーン･エア』を部分的に再解釈して構築された本作は、ホラー映画を詩的な視覚イメージと共に新たな高みへと引き上げた作品として記憶されている。劇場未公開作。

『チャンピオン』『哀愁の花びら』『大地震』のマーク･ロブソン初監督作品。女子学生メアリー（キム･ハンター）は、行方不明の姉（ジーン･ブルックス）を探すためにニューヨークへ向かう。姉の夫や医師の協力を仰ぎながら手掛かりを探すうち、やがて悪魔崇拝と殺人の痕跡を見つけ出す。ニヒリスティックなショッキングな傑作ホラー。冷たく荒涼としたムードは必見。日本未公開。

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

続いて登場するのは篠田正浩監督作『夜叉ヶ池』（1979）。泉鏡花が1913年（大正2年）に発表した戯曲の映画化となる。越前･三国嶽の山中にある夜叉ヶ池。かつて人間と水が戦った時に封じ込められた竜神が、1日3回鐘を突く約束を守らなければ、村に大洪水を起こすという言い伝えがあった。その鐘楼を守って山麓にひっそりと暮らしているのが、晃（加藤剛）と百合（坂東玉三郎）の夫婦である。ある日、学者の学円（山崎努）が夫婦の家を訪れた。聞けば、諸国に伝わる不思議な物語を求めて旅立ったまま、行方不明となった親友を探しているという。それが夫のことであると察した百合は･･･。歌舞伎俳優･坂東玉三郎の映画初主演も話題を呼び、しかも竜が棲む池を守る女と、池野主である姫の二役に挑戦。いずれも女優として起用したことにより、原作の持つ幻想的なムードの表現に成功している。同時に玉三郎自身の魅力を知る上でも、非常に重要な作品である。

本作は劇場公開後、民放局で1度だけ放送されたきり、権利関係の問題で長らく放送やパッケージソフト化が見送りとなっていた。だが公開から41年が経った2020年、篠田監督と玉三郎の再会をきっかけに封印が解けることに。同年、篠田監督と玉三郎の監修･承認を得た4Kデジタルレストア･マスターが完成。今回のUHD BLU-RAY化では2020年4KレストアDSM（デジタルソースマスター）を採用、4K化に伴う細部の再修復が行われている。HDRは未採用。BT.709／SDRグレード版としての登場となる予定だ。サウンドも新たな整音が施されている。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: OCTOBER 15, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

19歳で問題作『KIDS／キッズ』の脚本を書いたハーモニー･コリンが、初の劇場映画監督に挑戦した『ガンモ』（1997）が4K UHD BLU-RAYで登場。アメリカ中西部の実在する田舎町ジーニア。主人公はソロモン（ジェイコブ･レイノルズ）とその友人タムラー（ニック･サットン）。口のきけないバニーボーイ（ジェイコブ･シーウェル）を含めて、いずれも地元の10代の少年だ。なんの取り柄もないドン詰まりの田舎町が誇れることは、数年前にこの地域を竜巻が通過して町をひっくり返していったことだけ。映画はソロモンとタムラー、そして周囲の人びとの姿を、貧困、暴力、殺人、薬物乱用、破壊行為、性差別、人種差別、自殺、売春、精神疾患、性的虐待、動物虐待など、幅広い問題を取り上げながら、居心地の悪い窃視症感覚の視点で追いかけていく。

監督コリンは脚本執筆に当たり、伝統的な三幕構成を放棄。正義感や道徳観を持つキャラクターを避け、コラージュのようにエピソードを構築している。「私は興味深い瞬間や場面を作り上げることに注力した。それらを連続して並べると、独自の物語が生まれんだ」と語るコリンは、自らのビジョンを確固たるものにするため、撮影をジャン＝イヴ･エスコフィエに依頼している。エスコフィエは『ボーイ･ミーツ･ガール』『ポンヌフの恋人』などのレオス･カラックス 監督作で知られるフランス人撮影監督。ここでは35mm、16mm、8mm、ビデオなどが混合され、さまざまなレベルの映像のリアリズムで観客を魅了する。本作のUHD BLU-RAY化において、2003年に51歳で他界したエスコフィエの功績に敬意を表しながら、監督コリンが4Kレストア／HDRグレードを監修、最終承認を与えている。ノイズの扱いに長けたサウンドトラックも必聴。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: OCTOBER 22, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET）$39.95 USD（BLU-RAY）

BLU-RAY RELEASE
TWO-DISC SPECIAL EDITION

10月のBLU-RAYタイトルは、ドイツの巨匠G･W･パプストの名作『パンドラの箱』（1929）である。次々に男を替えては、彼らの運命を狂わせていく魔性の女ルル。この悪女が快楽と酒に溺れ、やがて切り裂きジャックを客に取って惨い最期を迎える･･･。ルルを演じるのは、サイレント末期を彗星のように駆け抜けた伝説の美女、ルイーズ･ブルックス。1928年、それまで脇役に甘んじていたルイーズは、ハワード･ホークス監督作『港々に女あり』、続くウィリアム･A･ウェルマン監督作『人生の乞食』でブレイク、ミステリアスなセックスアピールで人気を高めるが、突然、パプストにに招かれてハリウッドを去った。さっそく翌1929年、本作で女優としての名声を博すことになる。初めて外国の地を踏むルイーズのために、ベルリンの駅にはパプストも迎えに足を運んだという。ルーズの回想録には「ハリウッドでは経験したことのない、礼儀正しく尊敬の眼差しをもって迎えられた」と記されており、彼女も彼らの期待に応える名演を披露した。

ハリウッドに戻ってからは不遇が続いたルイーズ。女優を引退した後、彼女は経済的に困窮し、有料のエスコート嬢にまで身を落とす。その後の20年間、彼女はアルコール依存症と自殺願望に悩まされ続けた。ところが1955年、フランスの映画史家アンリ･ラングロワなどがルイーズの作品を再発見。ラングロワは「マレーネ･ディートリッヒやグレタ･ガルボをも凌ぐ映画界のアイコン的存在で、比類のない女優である」と高く評した。これを機に、アメリカでの評価も高まることになる。

隠遁生活を送っていたルイーズは、自身の映画キャリアについて執筆を始め、1982年にエッセイを出版。映画評論家ロジャー･エバートが「欠かせないと言える数少ない映画書のひとつ」と評するなど。洞察力に富んだエッセイは大きな称賛を集めた。それから3年後の1985年8月8日、ブルックスは心臓発作で他界。ミステリアスな79年の人生に幕を下ろした。

だが本作で魅せた黒いボブのヴァンプ像は、一世紀近い歳月が流れた今なお新鮮。彼女のイメージはアンナ･カリーナやライザ･ミネリらといった女優たち、『サムシング･ワイルド』や『パルプ･フィクション』などの作品に伝承され、ポール･オースター監督作『ルル･オン･ザ･ブリッジ』のモチーフにもなっている。最新2Kデジタルレストア。モノトーンのSLIPBOX／DigiPack仕様で登場。

BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: OCTOBER 15, 2024
List Price: $39.95 USD（BLU-RAY）

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