大貫妙子と坂本龍一の共作『UTAU』は、2010年のCD発売当初から愛聴してきた思い入れも一入の盤だ。加えてオーディオ機器チェック用のリファレンス盤としてしばらく重用してもいた。

そうしたこともあり、先の同盤の初LP化にも歓喜したし、同ツアーの2010年12月 東京国際フォーラムでのステージをBD化した『UTAU LIVE IN TOKYO 2010 A PROJECT OFTAEKO ONUKI & RYUICHI SAKAMOTO(Blu-ray)』も迷うことなく購入した。

画像: 小原さんは、CDがリリースされた2010年のころから『UTAU』を愛聴してきた。LPそしてBDも当然発売日にゲットしたそうです。

小原さんは、CDがリリースされた2010年のころから『UTAU』を愛聴してきた。LPそしてBDも当然発売日にゲットしたそうです。

ブルーレイ『UTAULIVE IN TOKYO 2010 A PROJECT OF TAEKO ONUKI & RYUICHI SAKAMOTO(Blu-ray)/大貫妙子&坂本龍一』(RZJM-77999X)¥6,600(税込)発売中

画像: 3枚組LP『UTAU(3Vinyl)/大貫妙子&坂本龍一』(RZJM-77978X)¥12,100(発売中)

3枚組LP『UTAU(3Vinyl)/大貫妙子&坂本龍一』(RZJM-77978X)¥12,100(発売中)

教授が音響を監修した「109シネマズプレミアム新宿」で、同作が7月5日から3週間限定上映。これは見逃せない!

そんな矢先、新宿歌舞伎町の「109シネマズプレミアム新宿」にて同作が7月5日から3週間限定で上映されるという情報を得て、あの贅沢な空間でぜひとも鑑賞してみたいと思い、嬉々として出掛けたというわけだ。

画像: 坂本龍一氏が監修した109シネマズプレミアム新宿の「SAION -SR EDITION-」音響システムで、『UTAU LIVE IN TOKYO 2010』を体験

坂本龍一氏が監修した109シネマズプレミアム新宿の「SAION -SR EDITION-」音響システムで、『UTAU LIVE IN TOKYO 2010』を体験

『UTAU』は坂本龍一のインストゥルメンタル曲に大貫妙子が新たに詞を付けたり、坂本が歌っていた自作曲を大貫が歌ったり、大貫の定番曲を坂本が改めてピアノ伴奏に編曲し直したりという、二人の濃密な共同作業から誕生した作品。スローなテンポの楽曲が並び、アルバム全体には凛とした空気感がみなぎっているのが特徴だ。

画像: 教授が音響を監修した「109シネマズプレミアム新宿」で、同作が7月5日から3週間限定上映。これは見逃せない!

公演のオープニング「TANGO」から、そんな独特のテンションがステージ上に張り巡っていく。大貫のクリアーな歌唱がスクリーン上に定位する様は実に生々しくて吸い込まれるよう。そうした透徹とした空気感漂う演奏と、曲間の二人のウィットに富んだMCのギャップも一興だ。

中盤、坂本のソロピアノ演奏が7曲ほど続き、その儚くも耽美な調べにも引き込まれた。特に後半の「The ShelteringSky」と「Aqua」の連なりには、様々なシーンが浮かんできて完全にやられた(『Aqua』は当然あの是枝作品のエンディング場面が……)。

画像: 109シネマズプレミアム新宿のスクリーン7。本稿筆者の小原さんは7月9日(火曜日)に、このスクリーン7で本作を鑑賞された。

109シネマズプレミアム新宿のスクリーン7。本稿筆者の小原さんは7月9日(火曜日)に、このスクリーン7で本作を鑑賞された。

画像: ※109シネマズプレミアム新宿に併設されているスーベニアショップ「POST CREDIT」では『UTAU LIVE IN TOKYO 2010』Blu-rayおよび『UTAU』アナログレコードも販売中。いずれかをご購入の方には「UTAUオリジナル・クリアファル」のプレゼントがあります

※109シネマズプレミアム新宿に併設されているスーベニアショップ「POST CREDIT」では『UTAU LIVE IN TOKYO 2010』Blu-rayおよび『UTAU』アナログレコードも販売中。いずれかをご購入の方には「UTAUオリジナル・クリアファル」のプレゼントがあります

両名とも衣装が黒いうえに、ピアノも黒。ステージにも色はなく、映像はほぼ色彩感皆無のモノトーンで進んでいく。それ故ともすれば一本調子になりがちな展開を、スイッチング等の工夫や異なるカメラアングルのオーバーラップ等の編集の創意、さらには抽象的なCGイメージ映像のステージ投写によって飽きさせない構成としている。

加えて感心したのは、客席がまったく映り込まないこと。撮影もリモートで行なわれたようで、カメラクルーの姿が一切見えない。今回のような音楽・編成では、時としてこれら要素がノイズにもなりがちなので、ディレクションは相当綿密に練られたものと想像する。

鑑賞した109シネマズプレミアム新宿の音響面は、オーダーメイド設備の完成度の高さからか、スピーカーシステムの存在感どころか、エレクトロニクス機器の介在さえないようなナチュラルな実在感に満ちていた。

ヤマハのコンサートグランドピアノ「CFIII」の豊穣な響き、大貫妙子の生身の音像がそこにいるのだ。何せこの劇場の音響設備は坂本龍一監修。本人の演奏を、本人がお墨付きをした設備で聴く僥倖。これ以上の“ディレクターズ・インテンション”があるだろうか。

当時の坂本龍一の体調は、まだ病魔に蝕まれる前で比較的健全だったと想像でき、創作活動における何度目かのピークにあったのではないだろうか。その頃の演奏をこうしてかぶりつきで大画面鑑賞できるのは、たいへん貴重である。

本作が109シネマズプレミアム新宿で体験できるのは(いまのところ)、7月25日までとなっている。ぜひ注目していただきたい。

2010年に小社から発売したDigiFiのNo1では「UTAU」の特集記事を掲載。デジタル版のみ入手可能です。

画像: 大貫妙子&坂本龍一 / a life(UTAU LIVE IN TOKYO 2010 A PROJECT OF TAEKO ONUKI & RYUICHI SAKAMOTO) www.youtube.com

大貫妙子&坂本龍一 / a life(UTAU LIVE IN TOKYO 2010 A PROJECT OF TAEKO ONUKI & RYUICHI SAKAMOTO)

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