9月のクライテリオン『異人たち 4K』『レポマン 4K』ほか【海外盤Blu-ray発売情報】

SEPTEMBER 2024 NEW RELEASES - THE CRITERION COLLECTION

THE CRITERION COLLECTION has announced its SEPTEMBER 2024 slate of 4K UHD BLU-RAY（5）releases.They are: THE LONG GOOD FRIDAY（1980）　REPO MAN（1984）　GREGGARAKI'S TEEN APOCALYPSE TRILOGY（1993-1997）　HAPPINESS（1998）and STRANGERS（2023）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

9月のクライテリオンはインディーズ作品中心のラインナップ。すべてが4K UHDリリース（一部作品を除く）という点にも注目。まず9月3日に登場するのが、『シド･アンド･ナンシー』『ウォーカー』のアレックス･コックス長編監督デビュー作『レポマン』（1984）だ。仕事もなく、金もないパンク青年オットー（エミリオ･エステヴェス）。退屈な毎日を送るオットーの前に、ある日ひとりの中年男が現れた。男の名はバッド（ハリー･ディーン･スタントン ）。彼の仕事はローンを払わない客の車を盗み出す「レポマン」だった。バッドの相棒となったオットーは賞金の懸かった64年型シボレー･シェビーを追うが、その車のトランクには謎のエイリアンの死体が隠されていた！全編にR&Rのリズムとパンクのスピードを盛り込み、グランジー感覚で彩ったSFコメディの快作である。レーガン大統領の国内政策と外交政策に対する風刺にも注目。

英オックスフォード大学卒業後、米UCLAの映画科研究生となったコックスだが、在学中に高い評価を受けた短編『エッジ･シティ』（1980／監督･脚本･出演）に続いて初の長編脚本を完成させた。その脚本を読んだ元モンキーズのメンバーで音楽プロデューサーのマイケル･ネスミスは、コックスの才能と将来性を見抜き、ユニバーサル･スタジオに製作予算の捻出を説得。ユニバーサルとネガティブピックアップ契約を結び、当初わずか 7万ドルで製作される予定であった本作は150万ドルの製作費を得てクランクインの運びとなる。コックスはロードムービーとして構想していたが、予算を抑えるために主な舞台をロサンゼルスに変更。さらに出演者に即興演技を求め、それにより映画の結末は当初のものとは著しく異なった。劇場公開（限定）は不入りであったが、ビデオやケーブルTVによって次第に注目を集め、数年後には1984年公開作の最高傑作のひとつとして再評価されるに至っている。撮影は短命に終わったニュー･ジャーマン･シネマの騎手のひとりで、ヴィム･ヴェンダースとのコンビでも知られる名手ロビー･ミュラー。2013年、クライテリオンは35mmオリジナルカメラネガからの2KレストアBLU-RAYをリリースしているが、今回は新たに4Kデジタルレストア／HDRグレード。監修は前回同様にコックスが務めている。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: SEPTEMBER 3, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY COMBO）$39.95 USD（BLU-RAY）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

名匠･大林宣彦によって映画化されたことでも知られる、脚本家･山田太一のファンタジー長編小説「異人たちとの夏」を英国ロンドンを舞台に映画化した『異人たち』（2023年／英･米合作）。4K UHDでのリリースである。監督は『さざなみ』『荒野にて』の演出で高い評価を受けたアンドリュー･ヘイ。大林監督版はファンタジーとホラーが同居した作品であったが、本作の骨格は大林版とほとんど変わらないものの、主人公のシナリオライターの出会う人物が女性から男性に変更され、ふたりともゲイの男性に設定されている。この設定変更は賛否が分かれるかも知れないが、幻想的で細細たる描写、濃やかな台詞構成で観る者を魅了する。撮影は黒澤明監督作『生きる』のリメイク『生きる LIVING』のジェイミー･D･ラムジー。中規模予算の作品には珍しく35mmフィルムで撮影。徹底した光源管理が行われ、夜間の室内、夜明けや夕暮れの屋外でもノーマルで露光、増･減感現像は行われていない。ラムジー撮影作品では繊細なカメラワークや深みのある色彩操演が特徴となるが、本作でもドラマティックな光の扱い、官能性や幻想性を生々しく浮かび上げる力量を楽しむことができる。4K UHD／HDR鑑賞は必須。日本では4月に劇場公開され、映画館で鑑賞された方はその記憶も新しいはずだが、国内版UHD BLU-RAYリリースは望み薄と思われる。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: SEPTEMBER 10, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY COMBO）$39.95 USD（BLU-RAY）

大林監督版の主人公はシナリオライターの原田英雄（風間杜夫）。幼い頃に暮らしていた浅草を訪れたところ、12歳の時に死別した両親（片岡鶴太郎／秋吉久美子）と出会う。同じころ原田は同じマンションに住む桂（名取裕子）という女性とも出会い、彼女と愛し合うようになる。しかし、このふたつの出会いを機に、原田の身体は次第に衰弱していく。

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

『第四の核』『ジャック･ルビー』のジョン･マッケンジー監督が、『モナリザ』『ロジャー･ラビット』のボブ･ホスキンスを主演に迎えて放ったギャング･スリラー『長く熱い週末』（1980）。舞台はロンドン。裏社会を仕切るハロルド（ホスキンス）は、チンピラからのし上がった叩き上げのマフィアのボスである。現状に飽き足らない彼は、アメリカのマフィアと手を組み、来たるオリンピックに向けて港湾地帯の土地開発を目論んでいた。大規模な不動産取引がまとまりかけた矢先、自分の手下たちが次々と殺され、ハロルド自身も予想外のトラブルに見舞われることとなる。製作総指揮に名を連ねるのは元ビートルズのジョージ･ハリソン。当時無名の映画スタッフだったバリー･キーフが、プロデューサーのバリー･ハンソンのために脚本を書き、ホスキンスをハロルド役として当て書きしたものであった。ハロルドを演じたホスキンスの熱演はもちろん、ハロルドの愛人ヴィクトリアに扮したヘレン･ミレンのメガクールな演技は必見。ピアース･ブロスナンの映画デビュー作。撮影は『007／カジノ･ロワイヤル』のフィル･メヒュー。英国映画協会の英国映画トップ100／21位作品。

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: SEPTEMBER 17, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY COMBO）$39.95 USD（BLU-RAY）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

1995年『ウェルカム･ドールハウス』で話題をさらったトッド･ソロンズの長編監督第2作『ハピネス』（1998）。舞台はニュージャージー州郊外の町。ここにごく普通の中流家庭に育った3姉妹が暮らしている。三十路を超えても独身のまま、作曲家志望の末娘ジョイ（ジェーン･アダムス）は恋人と別れたばかり。長女トリッシュ（シンシア･スティーヴンソン）は精神科医の夫ビル（ディラン･ベイカー）と3人の子供たちに囲まれて裕福な暮らしを送っている。次女のヘレン（ララ･フリン･ボイル）は成功を収めた作家で、誰からも慕われる羨望の的。一見幸福そうに見える3人の姉妹とその家族、そして周囲の人びとだが、実はおぞましい秘密を抱えた社会不適合者ばかり。本作はそんな登場人物たちの心の闇を描いたブラック･コメディであり、1990年代でもっとも物議を醸した映画のひとつである。「物議を醸す現代のテーマを大胆に追ったこと」「豊かに重層的なサブテキスト」「驚くべき視覚スタイルの流動性」が評価され、1998年カンヌ映画祭･国際批評家連盟賞を受賞。撮影は『ベルベット･ゴールドマイン』『レスラー』のマリス･アルベルチ。本盤はそのアルベルチ監修による最新4Kデジタルレストア版。これまで国内外BLU-RAY未発。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: SEPTEMBER 24, 2024
List Price: $49.95 USD（4K UHD + BLU-RAY COMBO）$39.95 USD（BLU-RAY）

4K UHD BLU-RAY／BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

ロサンゼルス生まれの日系三世、グレッグ･アラキを探求。1990年代初頭の、クィアをテーマにしたインディーズ映画のムーブメント、ニュー･クィア･シネマの騎手としても知られるアラキだが、ここではティーンエイジャーの「疎外感、曖昧なセクシュアリティ、攻撃性」をテーマとした『ティーンエイジ･アポカリプス』三部作をピックアップする。公開時、いずれの作品も大きく賛否が分かれたが、時代の流れと共にカルトな名作として評価されている。三部作で共同プロデューサーを務めたのは、アラキのカリフォルニア大学サンタバーバラ校時代の教師アンドレア･スパーリング。

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES

Released: SEPTEMBER 24, 2024
List Price: $99.95 USD（4K UHD + BLU-RAY）$69.95 USD（BLU-RAY）

三部作第1作『トータリー･ファックト･アップ』（1994）は、ジャン＝リュック・ゴダールの1965年監督作『男性･女性』にクィアな解釈を大胆に加えた作品。ホームビデオによるインタビューを軸にした15章構成。さまざまな障害に直面しながらサバイブしていく、6人のゲイの若者の機能不全な日常を綴る。16mmキネコ（ビデオ映像をフィルムに変換）作品の本作のみBLU-RAYリリース。

三部作第2作『ドゥーム・ジェネレーション』（1995）。ローバジェット映画ながらアラキ初のメジャー作品であり、クィアのテーマに捻りを効かせつつ少年少女の無軌道な恋愛に焦点を当てた作品。主人公はマーク･ベイヤーのコミック「エイミーとジョーダン」を下敷きにした、少女エイミー（ローズ･マッゴーワン）とボーイフレンドのジョーダン（ジェームズ･デュヴァル）。ある夜、暴行を受けていたゼイヴィア（ジョナサン･シェック）を助けたことから、3人の奇妙な旅が始まった。官能的でシュールな色彩設計、シューゲイザーの響きにのせて描く異色のロード･ムービー。米国公開では短縮版が公開されたが、本盤では83分ディレクターズカットが収録される。

監督アラキが「LSDでラリった映画版『ビバリーヒルズ青春白書』」と語った三部作最終作『ノーウェア』（1997）。オープンな関係にあるバイセクシャルのカップル（ジェームズ･デュバルとレイチェル･トゥルー）を軸にしたアンサンブルキャスト映画であり、ロサンゼルスの大学生グループが送る奇妙な1日の出来事を描く。自分の死期を悟り、死の瞬間を捉えるためビデオカメラを手放さない（デュバル演じる）映画学科の学生ダークは、監督アラキの体験をもとに設定されている。キャストの中には、ライアン･ィリップ、ミーナ･スヴァーリ、キャスリーン･ロバートソン、デニス･リチャーズといった後にブレイクすることになる俳優たちも含まれる。

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