歴史ある温泉郷を盛り上げるために立ち上がった若き女将たちの奮闘を、コミカルに、ハートフルに映画化した『レディ加賀』が、現地(石川県)での先行公開(2月2日公開)を経て、いよいよ2月9日(金)より全国公開される。ここでは、ヒロイン樋口由香(小芝風花)の幼馴染として、彼女をサポートする石崎あゆみを演じた松田るかにインタビューした。
――よろしくお願いします。出演おめでとうございます。まずは、出演が決まった時のことを教えてください。
ありがとうございます。オファーをいただいて出演が決まりました。ただ、ストーリーや役柄の説明よりも先に、タップダンスがありますので撮影までにできるだけタップダンスの技術を高めておいてください、と要請されたのは覚えています。
私自身、タップダンスは初めてでしたし、加えて、私の演じたあゆみは、タップダンスの経験者という設定でしたから、とにかく人様に見せられる状態にまで持っていかないといけない! と思いながら、劇中にも出演されているHideboHさんのスタジオに、とにかく空いている日は行って練習するというスケジュールで頑張りました。
――実際にタップダンスをしてみていかがでしたか?
ダンスはずっと習っていましたけど、勝手が違い過ぎて、とても難しかったです。分かりやすく言うと、ダンスは筋肉を使うことが多いんですけど、タップダンスは完全に脱力なんです。もちろん太ももの筋肉は使いますけど、膝から下は脱力(ブラブラして)していなくてはいけなくて、反動で音が鳴っているという状態なんです。とにかく、足先の力を抜くのが今までの(ダンスの)動きと違っていて、同じダンスなのにここまで違うのかって思いました。
――できるようになるまで、どのくらいかかるものなのでしょう?
音を出す(鳴らす)だけなら、初日から出来ましたけど、じゃあそれを速くできるのかとか、100発100中で鳴らせるのかというと、それは難しくて、ある程度踊れるレベルまで行くのには、4、5ヵ月はかかりました。とにかくこの映画に入る前からずっと、キャストみんなで行ける時に(練習に)行くっていう感じでした。
――撮影の時にはもう、ピタッと息もあって?
実際に(本編の)撮影に入っても、撮休の日にはみんなで集まって、泊まらせていただいている宿の宴会場をお借りして練習して、動画を撮って、見直して、ここの角度を合わせたいよねとか、ここもっとこうしたいよね、ここは1人だけ回転が遅いからもうちょっと早めに回ろうかとか、自主練を重ねてから撮影に向かった感じでした。本当に撮影ギリギリまで練習していましたけど、それだけ練習してもやはり難しかったです。
――ご自身の中で工夫したことや、ここが難しかったというようなことはありますか?
それほどタップダンスに精通しているわけではないので……。ただ、靴ひもの締め具合には注意していました。きつく縛ると動かしにくくなるし、でも緩めると脱げてしまいますから。このぐらいかなと考えながら、靴ひもを結んでいました。
――一方で、タップの練習と並行して役作りがあると思いますが、最初台本読んだ時に、演じられた石崎あゆみについて、どのような感想を持たれましたか?
まず、優しさのある女の子だなって感じました。そして、その優しさって何だろうって考えた時に、一歩引いて見守る優しさだという風に思いついたんです。由香(小芝)とあゆみが並んでいると、由香は夢に向かって一歩踏み出せた人、あゆみは踏み出せずに止まった人に見えがちなんですけど、それってやっぱり、守る強さがあるからこそ、あゆみは実家の旅館を継げたのだし、その守る強さがあったから、由香に頑張ってと夢を託すことができた。そういう、「待つ」「守る」優しさみたいなのがある子だなと思いました。
とはいえ、自分があゆみを演じるとなった時は、やはり(由香への)羨ましさも出ますよね。由香は出来た、でも私は出来なかった。どうしてもそう思ってしまう節があって、(由香を)すごく羨ましいなって思う雰囲気もありました。でも、自分の家業(旅館)にも誇りがあるので……という葛藤もあって。
――由香役の小芝さんはいかがでしたか?
ふ~ちゃん(小芝)とは、前にも共演していますから、友達感みたいなものは苦労することなく、すんなりできましたね。前も親友役だったね~なんて話しながらやっていました。
――そうなんですね。さて、話を少し戻しますが、メインキャスト(5人)の皆さんと最初に会った時(顔合わせ)はいかがでしたか。
実は、顔合わせの前にタップダンスの練習が始まったので、レッスン場で、あれっ? あの人中村静香さんだよね? 八木アリサさんだよねと思いながら、あっ松田です、よろしくお願いします、という風に挨拶をして始まったという感じなんです。
とにかく、撮影開始までにタップダンスのレベルを高めてくださいというオーダーでしたので、私も含めて皆さん、行ける時に行って、たまたまレッスン場で一緒になって、っていうところからのスタートでした。
――練習を共にした分、撮影はスムーズに行った?
はい! レッスンは私たちの中で大きな財産になりました。やはり、それがあったからこそ、より仲良くなれましたし、タップダンスの撮影で動けなくなるぐらい疲れてしまっても、今日もたいへんだったよねって、笑いながら、一緒に乗り越えられたんだと思います。通常だと、撮影が始まって、仲良くなったころに終わってしまうんですけど、練習で4、5ヵ月も一緒に過ごしていたし、そんなに長期間、同じ目標に向かっていたからこそ、より仲良くなれたと思っています。部活みたいな感じでした。
――そうした練習の成果もあって、物語の中盤にある、若女将たちでタップダンスの練習をするシーンは、息もあっているし、観ていて楽しいものになっていました。
ベンチに座って足さばきの練習をしているところは、とにかく上半身を動かさないでくださいと言われていたので、なるべく上半身を動かさないようにしていましたけど、本当に、言うは易し・行なうは難しで、やる方としては意外と難しくて、結構、腹筋を使いました。
――配膳しながらタップの練習をするところも楽しそうでした。
重心をしっかり保ちながら、足先を動かすという練習で、やっていて楽しかったのですが、実際にお客様に見られたら、きっと怒られますよね(笑)。
――本作では、タップダンスだけでなく、旅館の若女将という設定もありました。演じてみての感想はありますか?
一応、養成講座には通っているんですけど、あゆみは唯一、現役の女将でもあるんです(笑)。劇中では、あゆみが玄関先のお花を生けているシーンがありますが、あっ、それも女将の仕事なんだって思いました。女将の仕事というと、どうしても、お客様にお料理を運んだり、お部屋へ案内したりなど、おもてなしというのが頭にあったのですが、玄関先にお花を生けるのも女将の仕事なんだって。由香の旅館ではお茶を点てていたので、お宿それぞれの特色だとは思いますけど、うちの宿は女将がお花を生けている。だから、そういう美的センスとか感覚とかも習わなくてはいけない、いろいろなものに精通していないといけないんだと思って。おもてなしに関わるもの全てが、女将にとっての大事なお仕事になるんだなっていう風に感じました。そこは新たな発見でしたね。
――そういえば、あゆみは女将の稽古の時と、自分の旅館にいる時で、着物の雰囲気がだいぶ変わります。
そうなんです。女将稽古の時は、メンバーそれぞれにカラーがあって、基本若々しい柄・色遣いなんですけど、旅館にいる時は、母の形見を着ている――少し地味なんですけどね――という裏設定があるんです。
それは、着物を用意してくださった鶴賀雄子さんが準備してくれたもので、着物にもグレードがあって、普段着、お客様の前に出る時で、替えないといけない。でも、着物って値段が張るので、二十歳そこそこの女の子ではそんなにたくさんは買えない。ということで、お母さんの形見(着物)を着ているんだろうと思って用意しました、と仰っていました。そうした現地の方々のサポートをたくさん受けて撮影することができたんだなって強く感じました。
ラストのステージのシーンも、観客の皆さんは、石川県にお住まいの方がボランティアで集まってくださったし、泊まらせていただいた旅館の方々もすごく暖かく迎え入れてくださって! 本当に加賀中のいろいろな方々に助けていただいて、映画を完成することができたと思っています。
――劇中では、加賀の景色も映し出されていますが、印象に残ったものはありますか?
全部が真っ赤な、あやとりみたいな形をした橋(あやとりはし)のところですね。そこは周囲の景色がとても綺麗でした。撮影は、スタッフさんたちだけが近くのホテルに移動して、すごく遠くから景色込みの映像を狙っているんです。完成した映像を観た時に、一気に視界が開ける感じがして! 加賀の自然――豊かな緑の中に赤い橋が浮き立って見えて、本当に素敵でした。加賀って、海だけでなく山も楽しめて、さらに温泉もあってと、すごくいいところなんだなって思いました。そのシーンを観ながら、由香とあゆみはこの自然の中で一緒に育ってきたんだな~って感じて、すごくいいなぁって思いました。
――近年はご当地映画も増えてきました。
被災を受けた方々には、一日も早い復興を願っています。加賀にはたくさんの観光スポットがありますし、おいしい食べ物もありますので、聖地巡礼じゃないですけど、映画を観て、現地を観光して、加賀を満喫してほしいと思います。
――話は変わりますけど、本作も含めて松田さんは、少し気の弱い女性を演じられることが多いと思いますが、インタビューを通して受ける松田さんの印象とは、結構ギャップがあるように感じました。
あらっ、隠し通せているのならよかったです(笑)。自分に近いというか、私がそのまま登場人物になったかのような役柄というのは……確かに、今までなかったかもしれませんね。なかなか出会えていない気がします。
――もっと自分に近い役柄というのは演じてみたいものですか?
いやぁ、もう自分がいるので足りています(笑)。ただ、演じてみたい気はあります。そういう役をいただけたら、役の幅が広がるのかなって思いますね。
――では最後に、月並みなお願いになりますが、読者へのメッセージをお願いします。
映画を観て楽しんでいただきたいのはもちろん、シーンごとに加賀のよさ――山、海、温泉、食べ物、お酒、デザート……などなどが存分に映っているので、作品・映像を通して加賀の魅力を伝えられたらいいなと思います。加えて、タップダンスと着物というように、和洋折衷というか、独特な組み合わせ・融合の良さも見ていただきたいです。
そして、この作品の配給収入の一部を、石川県に寄付させていただくことが決まりました。映画を観ていただくことで、加賀の良さを味わいつつ、被災地に支援ができるようになっています。より多くの方に観ていただければ、より多くの支援が可能になります。たくさんの方に観ていただけると嬉しいです。
食事、温泉、海と、いいものが揃っていて、親世代、子供世代、孫世代と三世代が楽しめる場所になっているので、映画を観て、ぜひ、加賀へお越しください。
映画『レディ加賀』
2024年2月2日(金)石川県先行公開
2024年2月9日(金)新宿ピカデリー 他全国ロードショー
<出演>
小芝風花 松田るか 青木瞭 中村静香 八木アリサ 奈月セナ 小野麻里奈 / 佐藤藍子 篠井英介 森崎ウィン / 檀れい
監督:雑賀俊朗 脚本:渡辺典子、雑賀俊朗 プロデュ-サー:村田徹、藤田修 主題歌:眉村ちあき「バケモン」(トイズファクトリー) 製作委員会:サーフ・エンターテイメント、フェローズ、ポニーキャニオン、basil、ミライ・ピクチャーズ・ジャパン、JR 西日本コミュニケーションズ、ポリゴンマジック、アークエンタテインメント、ねこじゃらし、SDP、トイズファクトリー、ウィルウェイ、レアル、おさかな 特別協賛:加賀市 特別協力:北國新聞社 後援:石川県・金沢市 配給:アークエンタテインメント
(C)映画「レディ加賀」製作委員会
松田るか SNS
https://twitter.com/imrukaM
https://www.instagram.com/imrukam/
スタイリスト:山口美帆
ヘアメイク:IKUYO
衣装クレジット:
ジャケット、パンツ/SHIROMA
ネックレス/blueta1
ピアス/petit ami...
リング/cujacu