1973年に公開され(日本公開は翌1974年)、世界的な大ヒットになったホラー映画の名作。悪魔に憑りつかれた少女リーガンの悪魔払いを2人の神父が行うという内容だが、ストーリーを細かく語るまでもないだろう。
何作も続編が作られ、その度に評価を高めていった本作。2000年には『ディレクターズ・カット版』も製作され、最近でも午前10時の映画祭などでリバイバル上映も行われている。そんなホラー映画の金字塔が、ついに製作50周年を記念して<4K ULTRA HD&ブルーレイセット>となって、我々の前に姿を現した。
『【初回限定生産】エクソシスト ディレクターズカット版& オリジナル劇場版<4K ULTRAHD&ブルーレイセット>(4枚組/ペーパープレミアム付)』 ¥10,780(税込)
<ディスクNo.1>●ブルーレイ●本編132分+映像特典65分●ビスタ●音声:DTS-HDMA6.1ch(英語)、ドルビーデジタル5.1ch(日本語)<映像特典>●今明かされる撮影秘話●ジョージタウン〜あのロケ地は今〜●2つのエクソシスト〜秘められたる理由〜●予告編集&TVスポット集&ラジオ・スポット集(ラジオ・スポット集は音声のみ)
<ディスクNo.2>●ブルーレイ●本編122分+映像特典99分●ビスタ●音声:DTS-HDMA5.1ch(英語)、ドルビーデジタル1.0ch(日本語)<映像特典>●ウィリアム・フリードキン監督によるイントロダクション●イメージ画とストーリー・ボード●インタビュー・ギャラリー(オリジナル・カット/天国への階段/最後の審判)●もうひとつのエンディング●ドキュメンタリー「フイアー・オブ・ゴッド」●予告編集&TVスポット集説
<ディスクNo.3>●UHDブルーレイ●本編132分●ビスタ●音声:ドルビーアトモス(英語)、ドルビーデジタル5.1ch(日本語)
<ディスクNo.4>●UHDブルーレイ●本編122分●ビスタ●音声:ドルビーアトモス(英語)、他
●発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
●販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
収録されているのはBDやDVDと同じく、『オリジナル劇場版』と『ディレクターズ・カット版』の2バージョン。UHDブルーレイとBD、合計4枚のボリュウムだ。視聴は4K対応プロジェクターとモニターを使い、音声は最近、急速に人気が高まっているJBLのサウンドバー「BAR1000」を使用した。
このBAR1000、サウンドバーと侮っている人もいるかもしれないが、リアスピーカーをワイヤレスで着脱でき、サブウーファーのサイズもかなり大きく、本格的なスピーカーシステムと比べても、遜色ない音を聴かせてくれる優れモノだ。
まずは映像。冒頭のモノクロからオレンジ色になっていく太陽のショットがHDR効果で目に焼き付くほど鮮烈だ。続くイラクの平原では地面に生えた草や、陽炎にゆらめく大地の立体感も見事に再現されている。遺跡の発掘現場ではBDに比べ、個々の人物が着ている服の違いも明瞭になり、従来の映像と違うことが一目で分かるはずだ。
ただ、ウィリアム・フリードキン監督の他の作品でも見られた緑など原色を強調するタッチは、UHDブルーレイでも変わらず、ショットによっては色を乗せ過ぎに感じる場合もあった。リーガンに悪魔が憑りついてからは、有名な緑の汚物がインパクト大。カラス神父に吐き出す場面では、思わず、「うっ」と声が出てしまった。
メリン神父も加わるクライマックスでは、巨大な冷蔵庫の中で撮影したという冷気の表現が圧巻。口から出る白い息がひじょうに生々しく、薄暗い照明も潰れることなく、細部まで再現しきっている。
収録音声は、UHDブルーレイの『ディレクターズカット版』『オリジナル劇場版』のどちらもドルビーアトモスが収録されている(『オリジナル劇場版』はパッケージの表記が異なっているが、実際のディスクにはドルビーアトモスが収録されている。同梱BDは、『ディレクターズカット版』がDTS-HDマスターオーディオ6.1chで『オリジナル劇場版』はDTS-HDマスターオーディオ5.1ch)。
UHDブルーレイのドルビーアトモスと、ブルーレイのDTS-HDマスターオーディオを聴き比べてみたが、なかなか面白い結果となった。アトモスは自然に取り囲むイマーシブオーディオらしい作りで、まさにその世界感に放り込まれるように感じたのだが、DTS-HDマスターオーディオはセパレート感がひじょうに強く、特にリア側は音を左右に振り回すような演出がされ、これはこれで楽しめるものとなっていたのだ。
例えばドルビーアトモス音声だが、先に挙げたイラクの発掘現場では周囲でつるはしを降ろす音があちこちから聞こえ、悪魔像の頭部を発見する場面での風が吹き込む音もゾクッとさせる。アメリカに舞台を移してからは、メインとなる家の屋根裏で響く物音の存在感がひじょうにリアル。徐々に容態を悪化させるリーガンが、病院で検査を受ける時の機器の音もやたらと神経に触るような音に感じられるはずだ。
またカラス神父が録音したリーガンの声を聞いている時に電話の音が鳴り、ビクッとする場面では、その電話の音もかなりレベルが上がっているように感じられ、何度も見ているはずなのに、ドキッとしてしまう(ちなみにこの場面、カラス神父役のジェイソン・ミラーの演技をリアルにするため、フリードキン監督は近くでショットガンを撃ちまくっていたらしい)。
リーガンの部屋でポルターガイスト現象が起きる場面では、部屋の小物が飛び交う音に圧倒され、箪笥などの大きい家具が引きずられる音のインパクトもすごかった。
今回のUHDブルーレイには未収録だが、実は『エクソシスト』には、ステレオ音声も存在する。北米でリマスターLDがリリースされた時に収録されていたのだが、その音が本当に素晴らしかったのだ。カラス神父が水道水を聖水と偽ってリーガンにかける場面で、リーガンがのたうち回り、謎の言語を口にするのだが、当時のドルビー・プロロジックで再生すると、その声が面白いようにグルグル回った。
自分がサラウンドに目覚めるきっかけになったと言ってもいい体験だった。そのステレオ音声は、最初のDVDに収録されるはずだったが、なぜか5.1ch音声になっていて、それ以来、ソフトに収録されることはなかったのが本当に残念だ。
今回のセットには44ページの解説書や、名場面やビハインドシーンを収めたアートカード、ブックマーク(しおり)、ミニポスターをまとめたペーパープレミアムもセットになっている。もしかしたら最後のソフトになるかもしれない、この豪華BOX、是非手元に置いて、心ゆくまで『エクソシスト』を堪能してもらいたい。
©2013 1973 Warner Bros.Entertainment Inc. All rights reserved.