TVS REGZAが展開しているYouTubeチャンネル「レグザチャンネル」が好評だ。声優の小岩井ことりさんと、レグザブランド統括マネージャーの本村裕史さんが毎回軽妙なトークを繰り広げる内容で、最近はJBL製品の「BAR1000」や「4305P」「L82 Classic Mk II」と組み合わせたシステム提案や、往年の名機CELL REGZA「55X1」を復活させるといった特集も紹介されている。そのユニークさが受けて登録者数も1.33万人を越えたという。
そのレグザチャンネルが本日更新され、また面白い(常識外れな?)記事がアップされている。「【液晶&有機ELレグザを完全分解】レグザの中身を全部見せます!」というタイトルで、「通常のLEDバックライト液晶テレビ」と「Mini LEDバックライト液晶テレビ」そして「有機ELテレビ」の3種類を分解、内部構造を含めて仕組みが紹介されている。
そのYouTube公開に先立つこと2時間、TVS REGZAではマスコミを集めて2023年のテレビを振り返る説明会を開催していた。TVS REGZA 取締役副社長の石橋泰博さんと本村さんが登壇し、同社から見た今年上半期のテレビの動向を紹介しようというものだ。
両氏によると、2023年はテレビの大型化と視聴スタイルの変化が顕著になってきたという。特に量販店などの店頭ではMini LEDバックライト液晶テレビの評価が高いそうで、「これまで高画質テレビ イコール 有機ELという認識が一般的でしたが、リビングで使う場合はMini LED液晶の画質もかなりよくなっています。今後はMini LED液晶も高画質テレビとしての選択肢に入っていくと考えています」(本村さん)とのことだった。
さらに画面サイズの大型化も進んでおり、JEITAの集計によると、2022年の国内出荷統計では50型以上が40%を占めている。加えてTVS REGZAの販売実績では、2020年から2022年の2年間で、65型の構成比が2倍に成長しているそうだ(量販店の販売台数)。
この点については、「2011年の地デジ移行期にテレビを購入した人たちの買い替えが始まっています。そこでは画面の大型化がポイントです。2011年頃は37型が中心ゾーンでしたので、買い替えについても55型くらいに落ち着くことが多いのですが、今のテレビであれば価格的にもお手頃になってきた65型が実はお薦めです。これは決して大型テレビを売りたいからということではなく、実際にテレビを買ってから、もう少し大きな画面にしておけばよかったという声が多いのです」(本村さん)と分析していた。
さらに面白いのが、視聴スタイルの変化に関する考察だった。レグザはネットへの接続率も高く、ユーザーの同意を得た上で試聴時間などのデータも収集している。全国300万台を対象にした視聴データでは、2018年から2022年までの平均視聴時間は6.6時間ほどで、ほとんど変わっていないそうだ。昨今はテレビ離れが叫ばれているが、それは放送を見ないという側面が強く、何らかのコンテンツを楽しむ表示機器という意味では、テレビ離れは進んでいないということだろう。
もちろんその視聴時間にはネットコンテンツも含まれており、こちらは近年着実に伸びている。具体的には2020年4月には70分強だったものが、2023年は98分で、それだけテレビでネットコンテンツを見るユーザーが多くなっている。逆に言うとスマホやPCでネット動画を見ていた人たちが、テレビで高品質にコンテンツを楽しめるということに気づき始めたということだろう。
さらにレグザ調べでは、テレビでネット動画を見る割合は、40型以下のパーソナルサイズよりも50型以上のテレビを使っているユーザーの方が伸び率も高いという。大きい画面で、手軽にネットコンテンツを楽しみたいという人が増えているわけで、確かに視聴スタイルは変わりつつあるようだ。
ちなみにレグザの代名詞ともいえるタイムシフトマシン機能を搭載したモデルと非搭載モデルのユーザーでは、ネット視聴時間は変わらないが、テレビ番組の視聴時間はタイムシフトマシン搭載機の方が2倍以上多いそうだ(26分と68分)。「タイムシフトマシン搭載機であれば、ネット動画と同じ感覚で地デジを楽しめることもひとつの要因ではないでしょうか」(本村さん)。
なおレグザには「ネット動画AIビューティ」を始めとする多くの高画質化機能が搭載されている。このように、様々なソースを高品質に楽しんでもらいたいという商品企画もレグザが支持される一因だろう。
そしてここから、Mini LEDバックライト搭載「75Z970M」の試作機を使った “分解ショー” がスタートした。われわれマスコミもカットモデルを見る機会はあっても、目の前で分解の様子を見たことはない。YouTubeと同じ内容を体験してもらい、その貴重さをアピールしようという(本村さんの)狙いなのだろう。蛇足ながら、どんな状況であってもユーザーがテレビを分解することは危険きわまりない行為なので、決して真似をしないでいただきたい。
まずバックパネルを外すと、レグザエンジンZRαやパネルをコントロールするTコン基板、さらに電源基板やスピーカーなどが出現する。レグザエンジン、電源基板ともかなりの大きさで、いかに手がかかっているかがうかがえた。なお75インチモデルの場合、1.6mm厚の鉄板を型押ししたベースを使い、片面にこれらの基板、パーツを装着しているそうだ。
裏返すと液晶パネルやバックライト面になるわけで、そこから液晶パネルの取り外しがスタートした。大まかにいうと液晶パネルは、0.7mmのガラス板2枚で液晶層をサンドイッチした構造になっており、合計でも1.4〜1.5mmほどの厚さしかない。実際に液晶パネルを破損してしまったという修理要請も多いそうだ。
今回の分解ショーでも取り外し中に液晶パネルが落下してヒビが入ってしまい、4分の1ほどの部分は絵が映らなくなってしまった。これほど繊細なパーツを搭載した製品が安心して使えていることにも、技術水準の高さを感じた次第だ。
液晶パネルの下には量子ドット層(青色LEDの光を赤や緑に波長変換し、高純度な白色を得る)や拡散パネル(LEDの光を画面全体に行き渡るように拡散する)が配置され、それらを取り外すといよいよMini LEDバックライトが現れた。
そのMini LEDバックライトはとにかく眩しい! 4K液晶パネルの光透過率は10%ほどということで、画面上で明るいと感じるだけの輝度を得るには、その10倍の光源が必要ということになる。ただし最近のLEDバックライトは省エネも同時に実現しており、これだけの明るさを持ちながら、消費電力は10年前の液晶テレビよりも相当に抑えているそうだ。
75Z970MのMini LEDバックライトはまさにびっしり敷き詰められている印象で、今回は動画信号を流しながら分解してくれたので、分割駆動の動きもよくわかった(LEDや分割駆動のブロック数は非公開)。それを見ているだけで何が写っているのか想像できるほどで、高画質の秘密の一旦を垣間見た気分になった。
今日の分解ショーの様子を動画で撮影できたが、編集が間に合わないので、まずはスチル写真でお届けする。動画で確認したいという方はYouTubeのレグザチャンネルでご確認いただきたい。(取材・文:泉 哲也)