“日本のベニス”とも称される、富山は射水市を舞台にした、ハートフルなコメディ作『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』が同県での先行公開を経て全国順次公開中で、9月23日からは名古屋のシネマスコーレでの上映が始まる。
昭和の面影が色濃く残る射水市の風光明媚な景色の中で、将来への不安にもがく学生トリオをメインキャストに、10代らしい溌剌さ、すれ違い、淡い恋心などを盛り込んだ注目の作品。ここでは、ヒロイン・花凛を演じた原愛音に話を聞いた。
――よろしくお願いします。まずは今回、長編に出演しての感想をお願いします。
ありがとうございます。現地では、実際に北生津曳山祭(ほうじょうづひきやままつり)も体験できましたし、撮影ではありましたけどとにかく楽しかったのを覚えています。
――撮影の時期は?
昨年(2022年)の9月末ごろで、まだ夏の雰囲気が残っていました。
――現地の印象は?
富山の方々って、温かくて、優しくて、もう初日からすぐに溶け込むことができました。しかも、地元の方が大勢、スタッフとして手伝ってくださっていたこともあって、皆さんの地元愛を感じながら、一緒に作品を創り上げているという感覚を味わえて、とても心地よかったです。
――原さんの演じられた花凛の登場シーンは、なかなかに印象的でした。
そうですよね(笑)! なかなかできない経験ができました。台本を読んだ時にも、えっ船? と思いましたけど、実際に撮影に臨んでみたらとっても新鮮で、めちゃくちゃ楽しかったです。漁師になった気分で、行けーって叫びたくなりました。
――あのポーズ(仁王立ち)はご自身で考えた?
はい。花凛は、日常的に船に乗って通学しているという設定でしたから、乗り慣れている感じを出そうとしたら、自然とあのポーズになっていました。
――初登場シーンであの姿ですから、きっと気が強いんだろうなと感じました。
あっ、それが伝わっていたら嬉しいです。花凛は、大学は東京に行きたいなど、しっかりと自分の意思を持っている子なので、ある意味肝っ玉が座っている雰囲気が伝わっていたのなら、よかったです。
――少しネタバレしますが、自分から●●するなど積極的でした。
そうですよね、自分からグイグイと動いていくタイプで、それは、台本を読んでいる時から感じました。
――少し戻りまして、今回の出演の経緯を教えてください。
もともと監督とは、福岡にいた時に別のお仕事でご一緒したことがありまして、これからはお芝居を頑張っていきたいです、とお話したことを覚えてくれていたようで、花凛役を探している時にふと私のことを思い出してくださって、そこからご縁があって、呼んで
いただいたという流れです。
――初めて台本を読んでの感想は?
読む前から、富山県を盛り上げる映画ですという話は伺っていましたけど、実際に読んでみたらもう、監督は本当に富山のことが好きなんだなっていうのがものすごく伝わってきました! なので、自分もこの作品に携われたらきっと楽しいだろうな、嬉しいだろう
なと、強く感じました。
花凛に関しては、さきほどもお話ししたように、意思が強くて、すごくしっかりしていて、高校2年生ながらにすでに将来の目標を持っている女の子だなと感じました。私自身も東京という場所にずっと憧れを抱いていたので、そこは通ずる部分というか、似ている
部分だなと感じたので、(花凛が)より魅力的に映るように演じたいと思いながら、撮影に臨みました。
――印象に残ったシーンはありますか?
トオルと二人で掛け合いをするところですね。“この街は嫌いっちゃね”というセリフがあるんですけど、台本を読んだ時からそこは大事にしないといけないと感じていましたし、監督からも“大事にしてほしい”と言われていましたから、特に間の取り方とか意外
性を大事にしながらお芝居をしました。
意外性ということでは、例えばセリフ一つを取ってみても、言い方やニュアンスの込め方で、受け取り方も変わってくると思うんです。そうしたパターンを感じてもらえるように頑張りました。
――ところで、男子はいつも 3人で集まっていますけど、花凛はいつも一人ですね。
そうなんですよ。わちゃわちゃしている3人を、何やってんのかな~という感じで、ちょっと大人な雰囲気を出しつつ、一歩引いて見ているのが花凛なのかなって思っていました。
実際の3人も、やはり日を重ねるごとに仲の良さが深まっていくように感じました。少しネタバレしますけど、後半、喧嘩して少し険悪な雰囲気になるところは、お互いに自分の気持ちを出し合って、やがて……という展開になっていて、私は現場で見ていましたけ
ど、いいな、よかったなって思えて、印象深いです。
――観客としては、トオルと花凛の微妙な関係については、やたら花凛の方が落ち着いているように見えました。
あの3人組の中で、特にトオルと話す時の仕草は、ほかの2人とは変えようと思っていました。トオルとは幼馴染で小さい頃から一緒でしたから、もう男友達みたいな感じで、なんでも話せる親友。だから落ち着いた雰囲気でいられる、というお芝居をしています。
――ところで、二人きりで話している時に、何を食べていたのですか?
ベビーカステラです(笑)。おいしかったんですけど、結構、口の中がパサパサになってしまって(笑)。食べながら話すのは、少したいへんでした。
――そのシーンでは、どっしりとした花凛に対して、トオルはモジモジしていました。
当初はもう少し落ち着いた感じだったのですが、監督が「もっとダサい感じに」「モジモジした感じをもっと出して」と仰っていて、結果、ああいう仕草になりました。完成した映像を見ると、こっち(花凛)を気にかけているという雰囲気がより伝わってきましたので、監督の意図がより明確になったと思います。
――一方で、そんな花凛にも乙女なシーンがありました。
花凛にしては珍しく、女の子らしい雰囲気を出していて、私も演じながら“青春だなぁ~”って思っていました。楽しかったですよ。
――ところで、撮影以外の思い出はありますか?
基本、待ち時間はずっと男子 3人と一緒にいて、写真を撮ったり、話したりしていましたね。そうそう、一度、楽屋で風船を見つけた時には、めちゃくちゃはしゃぎました。4人だから2対2で別れて、ドッチボールみたいなことをしましたけど、途中からみんな段々と本気モードに入ってしまって(笑)。最後の方は上着を脱いでガチでやっていたら、汗だくになってしまったんです。
――映像には、現地の風景、名所も盛り込まれていました。
本当にいいところでした。富山へは、この撮影で初めて訪れましたけど、めちゃくちゃ魅力のあるところで、本編の中にもそれが収められていますから、富山の魅力がギュッと詰まった作品になったと思います。行ったことのない人も、きっと行きたくなる! 最近
はやりの聖地巡礼じゃないですけど、たくさんの人に来てほしいです。
――劇中では、名物の熱すぎる銭湯にも入っていました(残念ながら閉湯してしまった)。
いやもう、本当に熱かったです。足も浸けられないぐらいで、マジで火傷するかと思いました。
――お祭り(北生津曳山祭)にも参加されたのですか?
はい、実際のお祭りの日に合わせて撮影を組みましたので、私も参加させていただきました。間近で見るともう、迫力が違うんですよ。しかも、お祭り自体、コロナの影響もあって3年ほど開催できていなかったそうで、お客さんも、町の皆さんもものすごく気合い
が入っていて、より一層の盛り上がりを見せていました。本当にこの作品には、地元の魅力が溢れているので、少しでも富山(射水市)に行きたいと思ってもらったり、実際に足を運んでくれる人が増えたら嬉しいです。
――ところで話は飛びますが、芸能界に入ったきっかけについて教えていただけますか?
小学生の頃はよくテレビを見ていたので、多少は芸能の世界に興味はありましたけど、本格的に芸能界に入りたいと思ったのは、映画『ちはやふる』を観てからです。(登場人物が)とてもキラキラして見えたことが、とっても衝撃的で! 映画を観てからは、自分もこの世界へ行きたいと強く思うようになって、中学へ進学するのを機に、今の事務所へ履歴書を送って、入所しました。
はじめは、小学生の頃に新体操をしていたこともあって、女優というよりかはモデルの方に関心があって、モデルメインの活動をしていました。
――芝居との出会いは?
中学3年生の時に、音楽と映画の祭典「MOOSIC LAB 2018」の短編『デッドバケーション』で主演をやらせていただいたのが、お芝居との出会いになります。
そこで初めてお芝居っていうものにしっかりと触れて、「あっ、お芝居って面白いな」と感じたのが、お芝居により興味を持ったきっかけになります。もともと事務所が行なっていたお芝居レッスンには通っていたのですが、やっぱり現場で実際に経験してみると、その面白さは段違いで、それを経て、お芝居を中心にやりたいっていう気持ちが強くなって、今に至ります。
――今後やってみたいことは?
いつかアクションをやりたいと思っていて、週一でジム通っています。体を使う部分とか、柔軟性が必要というところは、新体操に通じるところがあって、(ジムの)先生にも褒められることもあるなど、今思えば新体操をしていてよかったな、その経験が今、芝居に活かせているなと感じています。
――女優としての目標は?
女優を目指すきっかけとなったのが、先ほどお話した『ちはやふる』で主演をされていた広瀬すずさんなんです。広瀬さんのように、いろいろな役を演じられる、いろいろな役を演じ分けられる女優になりたいです。もちろん、本作のような学生役も楽しいですし、アクション、コメディ、ミステリーなどいろいろなジャンルにも挑戦したいです。
――最後に、今年20歳を迎えます。抱負をお願いします。
映画とかドラマにたくさん出演して、より多くの人に見てもらえる、活躍の場を広げられるように、頑張りたいです。本作の公開が、それにつなげられたら嬉しいです。
映画『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』
9月23日(土)より、名古屋・シネマスコーレにて公開
<出演>
酒井大地 原愛音 宮川元和 長徳章司 金児憲史 澤武紀行 お姉ちゃん(雷鳥) 泉谷しげる 立川志の輔(友情出演) / 丘みつ子
<スタッフ>
製作総指揮:石橋冠 プロデューサー:大井紀子 脚本:西永貴文 監督:本多繁勝 撮影:山下悟 照明:木村明生 録音:瓜生公明 VE:守屋誠一 助監督:廣田啓 制作:飯塚昌夫、河内隆志 編集:日下部元孝 選曲:原田慎也 音響効果:茂野敦史 VFX:田中貴志 スタイリスト:棚橋公子 ヘアメイク:幸田恵 監督助手:保母海里風 ガンエフェクト:浅生マサヒロ、井上いちろう タイトル題字:立川志の輔 スチール応援:イナガキヤスト 配給:アークエンタテインメント 製作:AX-ON
2023/日本/カラー/110分/DCP/5.1ch/HD レイティング:G
(C)AX-ON