SONOSの新世代スマートスピーカー「Era 300」(¥69,800、税込)を自宅リビングで使いこなしてみようという企画の最終回。前回はEra 300をリアスピーカーに加えたSONOSの3.1サラウンドシステムを組んで、地デジや動画配信サービスを再生してみた。
Disney+やNetflixで配信されているドルビーアトモスコンテンツでは、サウンドバーのBeam(Gen 2)だけでは包囲感が物足りない印象だったのだが、Era 300が加わったことで後方や高さの表現、空間のつながりが見事に再現され、3.1システムで鳴らしているとは思えないほどのイマーシブサラウンドを楽しめた。
ちなみに今回は、リビングの長手壁面に4K有機ELレグザ「55X9400S」を、そのテレビラック天面にサウンドバーのBeam(Gne 2)を置いている。リアスピーカーのEra 300はその反対側の壁面にひとつは電話台、もうひとつはダイニングテーブルの上に設置している(床からの高さはどちらも約75cm)。Sub Miniはテレビラックの正面左側に床置きした。視聴位置からの距離はサウンドバーまでが約1.5m、リアスピーカーまではそれぞれ1.3mだった。
今回はこの環境でパッケージソフトを再生してみる。なお前回紹介した通り、わが家ではBeam(Gen 2)は55X9400SとHDMIでつないで音声信号を伝送している。55X9400SがARC対応なので、パッケージソフトを再生した場合でも、ロスレス圧縮信号は伝送できない。つまり今回は、ドルビーTrue HDやDTS-HD MA収録のディスクを再生したらどんな風に再現されるかを検証してみたいという狙いもある。
まずはドルビーアトモスとDTS-DH MAの2種類の音声を収録したブルーレイ、ジョン・ウィリアムズ『ライヴ・イン・ベルリン デラックス盤』を使い、どんな風に再生されるかを確認する。55X9400Sには入力された映像・音声信号の詳細を表示する機能があるので、今回はそれを活用した。
ドルビーアトモス音声を選ぶと、55X9400Sには「ドルビーデジタル/サラウンド」という表示が出て(おそらく5.1ch信号だと思われる)、一方のDTS-HD MA 5.1ch音声はリニアPCM(おそらく2.0ch)で出力されている。どうやら55X9400Sのスペックに応じて再生機のパナソニック「DMR-BZT9300」で変換しているようだ。
試聴ではBeam(Gen 2)でサラウンド再生した音を聴いているが、ドルビーアトモス(ドルビーデジタルに変換)はベルリン・フィルホールの響きも感じられ、DTS-HD MA(リニアPCM変換)は包囲感こそ抑え気味だが、芯のある力強い音として再現された。この違いがわかるのは、SONOSスピーカーの能力の高さ故かもしれない。
最後に、音楽ストリーミングの空間オーディオをこのシステムで鳴らしてみる。SONOSアプリからAmazon Musicのテイラー・スゥイフト「All Of The Girls You Loved Before」やレディー・ガガ「ホールド・マイ・ハンド」を再生すると、思っていた以上にリアスピーカーにも音が割り振られており、低音の広がりもあって、移動感も豊かだ。
Era 300×2台使いでの空間オーディオ再生も音場空間が広くなったが、リアルスピーカーを使ったサラウンドシステムでは、広さだけでなく、その楽曲にどんなサウンドデザインがなされているかまで把握できるだけの再現力を備えている。
今回のシステムはBeam(Gen 2)とSub Mini+Era300×2で合計¥269,200(税込)とそれなりのお値段にはなるが、本体サイズも比較的コンパクトで、4台すべてワイヤレスで信号を伝送できること、さらに設定がアプリで完結するといったメリットを考えると、リビングでサラウンドを楽しみたいというユーザーには要注目の存在になるだろう。
今後の希望としては、システムの組み合わせにフレキシビリティがあるといいと思った。前回書いたようにEra 300をリアスピーカーに加えようとしたら、Era 300×2台のシステムとしては使えなくなる(リアスピーカーとしてしか機能しない)。
しかし特にEra 300など、搭載しているユニットの数やサイズはBerm(Gen2)より余裕があるわけで、BGM用途などで2ch音源を再生するなら、わざわざ3.1chシステムで鳴らす必要もないだろう。こういった場合はワンタッチでEra 300×2台のシステムに切り替えて使えるといった機能がアプリに加わると嬉しいと思う。
またEra 300にはアナログ接続アダプター(3.5mmをUSB Type-Cに変換)も準備されているが、このラインナップとしてHDMIアダプター(当然eARC対応)も発売して欲しい。そうすればEra 300(+サブウーファー)でサラウンドシステムを組めるわけで、よりまとまりのいい音場空間が実現できるのではないだろうか。(取材・文:泉 哲也)