日本に住んでいる限り「発砲」という事態に巻き込まれる確率は、ゼロではないにせよ米国よりは少ないはずだ。が、自分の家族が物騒な事件に巻き込まれていたら、無差別殺人の現場にいたら――そう思うと、決して他人事ではないはずだ。
エイミーは夫を交通事故で亡くし、シングルマザーとして高校生の息子と小学生の娘を育てている。娘はスクールバスに乗り、息子は「学校に行かない」とだだをこねた。エイミーは日課であろうジョギングに出たが、そのとき、スマホに緊急の電話がかかってくる。ここから、事態を把握するまでの数十分は彼女にとって何時間にも感じられたことだろう。行かないと言っていた息子が実は登校していて、暴漢の立てこもり事件に巻き込まれていた可能性が出てきたのだ。
ここから文明の利器としてのスマホがさらに大活躍し、エイミー役のナオミ・ワッツはあらゆる表情、あらゆる発声で、見る者を画面に引き付けていく。後半のあっと驚く展開まで、スクリーンに登場する人物は、ほぼ彼女だけ。見事に、画面を「もたせる」。実力派だからこそ、成しうる業だ。監督フィリップ・ノイス、脚本クリス・スパーリング。
映画『デスパレート・ラン』
5月12日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
■提供:カルチュア・エンタテインメント、イオンエンターテイメント
■配給:イオンエンターテイメント
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