IMAGICAエンタテインメントメディアサービス(Imagica EMS)は、同社のアニメ専用編集スタジオ「荻窪アニメーションハウス」を拡充、新編集室のお披露目を行った。

画像: 荻窪アニメーションハウス4Fのロビーには、打ち合わせスペースの他にリモート会議等にも使える個室風の空間も用意されている

荻窪アニメーションハウス4Fのロビーには、打ち合わせスペースの他にリモート会議等にも使える個室風の空間も用意されている

 これまで荻窪アニメーションハウスとして、駅前にあるビルの7Fフロアーと、そこから徒歩数分の位置にある「荻窪アニメーションハウス はなれ」の2拠点を構え、劇場作品からテレビ、配信(OTT)用まで、多くのアニメ作品の制作・サポートを行なってきた。

 そして今回、新たに同ビル4Fに3つのオンライン編集室を追加、これにより荻窪アニメーションハウスは、はなれを含めると、オンライン編集室×6、オフライン編集室×3、会議室×2を備えた施設に進化している。

 そもそも荻窪アニメーションハウスは、アニメ作品のオフライン編集からオンライン編集まで可能で、さらに最終の納品までサポートできるポストプロダクションとして2013年に設立された。アニメスタジオが多く存在する中央線沿線という立地もあり、スタジオは常に稼働中で作業が深夜に及ぶこともしばしばだったという。今回のスタジオ増床はそんな状況を踏まえ、より効率を上げるためという狙いもあるそうだ。

画像: 4K/HDRに対応した401スタジオ。映像モニターは「BVM-HX310」(写真右手前)が準備されている

4K/HDRに対応した401スタジオ。映像モニターは「BVM-HX310」(写真右手前)が準備されている

 新設された3つのオンライン編集室のうち、401スタジオは4K/HDRグレーディングに対応しており、さらに5.1chの検証もできる設備を備えている。Imagica EMSでは竹芝にあるスタジオに4K/HDRのモニター環境を準備しているが、中央線沿線のクライアントの中には竹芝までの移動時間がもったいないという声もあったそうで、より近い場所で4K/HDR映像を確認できる環境を準備したということだ。

 ちなみに最近のアニメーションでHDR制作されるのは劇場作品が中心で、作品数も限られているという。ただ同社では、配信コンテンツなどでも4K/HDRが増えていくことを期待して401スタジオに機材の導入を決めたようだ。

 作品づくりの流れとしては、あらかじめデジタル制作した素材をHDRが正しく制作できる環境で再生、監督を始めとする制作サイドとスタジオのカラリストの間でHDRの使い方、効果について共有するところから始めるそうだ。そのうえでシリーズを通した絵作りを仕上げていくのだろう。そのためにも401スタジオのような空間は重要というわけだ。

画像: 401スタジオ奥側にはブラビア「XRJ-55X90K」と5.1chサラウンドシステムもセットされ、制作中の作品をシアター環境で検証できる

401スタジオ奥側にはブラビア「XRJ-55X90K」と5.1chサラウンドシステムもセットされ、制作中の作品をシアター環境で検証できる

 その401スタジオの設備は、ワークステーションが「Mac Studio」で、編集ソフトはAvid Media Composer/Adobe Premium/BMD DaVinchi Resolveを準備。映像検証用にはソニーの業務用マスターモニター「BVM-HX310」に加えて、HDR再生にも対応した家庭用4K液晶ブラビア「XRJ-55X90K」も設置されている。5.1ch用スピーカーはジェネレックのアクティブ型「8330A」だ。

 402スタジオと403スタジオは、HD(2K)用の編集機材と2chサウンドシステムを備えたもので、ワークステーションや編集ソフトは401スタジオと同一、マスターモニターにはソニー「BVM-E251」が使われている。

 なお401〜403スタジオは各部屋で壁(吸音材)や作業用デスクの色を変えており、それぞれの差別化がしやすくなっている。

画像: 402スタジオ(写真)と403スタジオはHD映像の編集用で、ソニーの業務用モニター「BVM-E251」と家庭用ブラビア「XRJ-55X90K」を備える

402スタジオ(写真)と403スタジオはHD映像の編集用で、ソニーの業務用モニター「BVM-E251」と家庭用ブラビア「XRJ-55X90K」を備える

 また近年のコンテンツ制作ではネットワークで複数の拠点をつなぎ、データを共有することで効率化を図るという取り組みも進んでいる。Imagica EMSでは一昨年、竹芝に新しい拠点となる竹芝メディアスタジオをオープンした際に、厳重なセキュリティを備えたデータセンターを新設している。今回の荻窪アニメーションハウスもデータセンターとつながっており、フレキシブルな運用が可能になっているそうだ。

 もうひとつ、EIZOの「ColorEdge」と「ColorNavigator Network」を利用して、各制作現場のモニターの色味を一元管理できるリモートキャリブレーションサービスも準備している。このシステムは先に劇場公開された新海 誠監督の『すずめの戸締まり』でも使われたそうで、複数台のモニターや、物理的に距離の離れた関係各社間のモニターを一元管理できるものとして注目を集めているという。(取材・文:泉 哲也)

画像: 取材に対応いただいた皆さん。写真右からプロダクション営業部 部長の長澤和典さん、プロダクション営業部 アニメーション営業グループ 課長の鈴木基子さん、映像制作部 部長の越智武彦さん、プロダクション制作部 アニメーション制作グループ 課長の新居和弘さん

取材に対応いただいた皆さん。写真右からプロダクション営業部 部長の長澤和典さん、プロダクション営業部 アニメーション営業グループ 課長の鈴木基子さん、映像制作部 部長の越智武彦さん、プロダクション制作部 アニメーション制作グループ 課長の新居和弘さん

画像: Ogikubo Animation House for Animation Productions / 荻窪アニメーションハウス 紹介映像 youtu.be

Ogikubo Animation House for Animation Productions / 荻窪アニメーションハウス 紹介映像

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